犬さんの多中心型リンパ腫の治療
昨日の夜のセミナーは
わんちゃんの多中心型リンパ腫の化学療法がテーマでありました。
多中心型リンパ腫の化学療法といえば
このブログでも何度か紹介しております
いわゆるCHOP療法と呼ばれるUW-25というプロトコルが最も一般的に実施されています。
これ自体はかなり前から行われているもので
今もなお、多中心型リンパ腫に対しての第一選択となる
化学療法プロトコルとして地位を維持しているので、すごいプロトコルです。
昨日のセミナーでは先月発表された論文も紹介されておりまして
その中にこういうものがありました。
ちなみにUW25の25は、25週間で終わるプロトコルですよ、という意味です。
こちらの論文は
25週間のCHOPプロトコルと、19週間のCHOPプロトコルの
どっちの成績がいいの?というのを比較したものでした。
簡単に流れを説明しますと
(詳細はやや異なるのでざっくりとしたイメージだと捉えてください。)
25週間で実施する方は
一週間に一回の抗がん剤を計8回実施した後に
二週間に一回の抗がん剤を計8回実施する方法で
19週間で実施する方法は
ずっと一週間に一回の抗がん剤を続けるって感じのプロトコルです。
抗がん剤というものは
複数回、複数種類の薬剤を投与することにより
腫瘍細胞の増殖を抑えていくことを目的としていますので
1回目の投与から次の投与までの間隔が
長くなればなるほど、その間は腫瘍細胞が増えてきちゃう可能性があるわけですね。
なので、一見、CHOP-19の方が良さそうにも見えるんですが
結果的に、ほとんど変わらない治療成績となっています。
ここから導き出される考察としましては
リンパ腫の治療は最初が肝心ってことみたいです。
プロトコル前半の薬剤強度をいかに落とさないで実施できるかが
化学療法剤の成績を左右するんじゃないかってことでした。
実際
初めて抗がん剤をやるってなった際に
副作用が強く出てしまったりすると
その後の治療の継続が難しくなったりする可能性もありますので
初手をやや弱めにしておいて
徐々に薬剤強度を上げていく先生もいらっしゃるということを聞いたことがあります。
そうなると、薬剤強度を落とした分
副作用の発生率だったり、副作用の症状の重症度は下げられるかもしれませんが
結果的に、リンパ腫に対する奏効期間であったり
予後を短くしている可能性があるということになります。
ただ、ここら辺はすごく難しいところでありまして。
ご家族様の性格であったり、ご自宅でできる対応であったり・・・
リンパ腫を倒す、という観点だけで物事を考えると
薬剤強度は強いに越したことがないわけなので
副作用で重篤化しないギリギリを責める抗がん剤療法が最も良いのだとは思います。
ですが、自宅で体温測定を実施することが難しかったり
副作用と思われる症状が出た際に、すぐに動物病院に連れて行くことができなかったりと
ご家庭ごとに事情は違います。
なので、実際には
ご家庭ごとに許容できる抗がん剤の薬剤強度は違うんじゃないかなと思います。
そこら辺は、投与後のわんちゃんの反応もそうですが
ご家族と獣医師がしっかり相談し合って決めて行く必要性があるんでしょうね。
昨日のセミナーは久しぶりに濃い内容のことが聴けたなって感じのものでして
色々とアップデートできそうなので
活かせる機会があれば、どんどん活用していきたいと思います。
わんちゃんがリンパ腫になっちゃうのは悲しいことではありますので
そうなった時に対応できる準備をしておくのが仕事なんていうのは
何だか他人の不幸を待ち望んでいるみたいで嫌ですが・・・
誰かがやってあげないとその子が死んじゃって
みんなが悲しむぐらいなんだったら
自分が嫌な役をやってあげたいなって思っています。
よくわかんないですね。
それでは、今日はこのくらいで。長々と失礼しました。