犬さんのヒキガエル中毒
今月号のCLINIC NOTEの特集は
猫さんの低悪性度リンパ腫と腸炎がテーマだったのですが

そんなに目新しい情報と言いますか
ここで書くようなこともなかったので
この雑誌の中の中毒のスタンダード診療という連載の中に
『ヒキガエル中毒』のことが書いてあったので
今日はそれについてでも書いておきます。
カエルは危ないよ、とご存知の方も多いかもしれませんが
ヒキガエル中毒自体、僕は遭遇したことがないですし
一般的にも遭遇頻度は高くない中毒とされていますが
初期対応をミスると重篤になりうる中毒でもありますので
ここで紹介しておきます。
ヒキガエルは後頭部にある耳下腺から毒素である分泌物を産生するとされています。
犬さんがヒキガエルを口で咥えてしまった時などに
その毒素が口の粘膜に付着することで、中毒を引き起こすとされています。
中毒物質は、ブフォトキシンやブファゲニン、ブフォテニンというものらしいです。
ちょっと覚えられない名前ですね。
最も重篤なケースだと
この毒素に暴露されてから30分から60分で死に至ることもあるとされており
結構怖い中毒の部類です。
カエルとの接触直後は
口の中で局所的な炎症が起こることで
ヨダレを垂らしたり、頭を振ったりする症状が見られます。
その後、軽症の場合は、口を気にする仕草であったり
吐き気や嘔吐などが見られるぐらいで済むとされておりますが
中毒症状が重度の場合
不整脈や見当識障害、虚脱やチアノーゼ、頻呼吸、痙攣発作などを呈するとされ
最悪の場合死亡します。
ヒキガエル中毒の報告では
94頭の89頭は完全に回復したが4頭は死亡、1頭が安楽死になったとされており
生存率は90%以上となっていますが
適切な治療が重要となる中毒です。
ヒキガエル中毒の初期対応としては
ご家族の方が、わんちゃんがヒキガエルとの接触を確認できた場合は
誤嚥には注意しながら、口の中をゆっくり洗い流すか、もしくは拭ってもらい
できるだけ毒液を除去することが重要となります。
その際に、人間側も毒液に暴露しないよう
手袋を着用してもらう方が良さそうです。
ヒキガエル中毒に対する有効な拮抗薬や解毒薬はないので
動物病院においても
いわゆるABCDEの安定化(酸素投与や気管挿管、不整脈治療や痙攣発作の予防・治療など)を考えつつ
口腔内の洗浄を実施する形となります。
あとは、支持療法として口腔内の炎症抑制のためのステロイド投与を実施したり
徐脈の子にはアトロピンを投与したりすることもあるみたいですが
基本は、やはり口の中の洗浄が重要で
起こってしまった中毒症状にはその都度対応するみたいな流れですね。
そう考えると
ヒキガエルの毒液に暴露されてから
如何に迅速に、口腔内の毒液を洗浄するかが重要となってくるわけでありまして
そこら辺は、ご家族様にも知っておいていただいて損はないような気がします。
もし、洗浄するってなったら、くれぐれも誤嚥には注意しましょう。
難しければ、口腔内を拭うだけでも効果はあると思われます。
というわけで
今日は犬さんのヒキガエル中毒のお話でした。
もうシーズン的にはヒキガエルさんと接触する機会もあんまりなさそうですが
犬さんのお散歩時のカエルさんには注意した方が良さそうです。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。
この子は
ただ可愛かったから写真を撮っただけで
カエルとは全く関係ありません。
