マズルコントロールによる非心原性肺水腫
わんちゃんのしつけの方法だったり
トレーニングの方法だったりは
ドッグトレーナーさんによってもやり方が違っていたり
今では危険や間違いと考えられている手法を未だにとっているトレーナーさんもいらっしゃいます。
昨日、患者様とのそういったお話から
マズルコントロールの話が出てきたので
マズルコントロールって結構危ないんだよってことを書こうかと思います。
目元から鼻先・口元の部分までをマズルと呼びますが
マズルコントロールというのは
そこをギュッと強く押させて
わんちゃんに対して上下関係を示すことで躾をしやすくするという手法で
昔はよく行われていたりしました。
現在では
わんちゃんに強い嫌悪感を抱かせてしまい口を触れなくなってしまったりする点や
死亡事故なども相次いで出ているため
一般的には推奨されない方法となっていると思います。
僕が入っている画像診断の勉強会の中でも
マズルコントロールによって死亡したと思われるわんちゃんの症例が報告されていました。
その子は生後3ヶ月のアメリカンコッカーさんで
洗濯物にいたずらして噛んでいたところを注意する目的で
マズルを強く掴んだとのことでした。
その後、マズルを離した時に、後ろにのけぞって
そのまま吐血、呼吸促迫の状態となり動物病院を訪れました。
動物病院で胸部のレントゲンを撮影すると
肺は真っ白になっており
非心原性肺水腫からの肺出血が疑われました。
その後、病院にて治療を実施するも残念ながら亡くなってしまったそうです。
こういったマズルコントロールによって起こる肺水腫の機序の
正確なところはわかっていないみたいですが
子犬さんは、急激な心拍出量の増加によって増えた血流が
肺動脈で受け切れないために肺水腫になることがあるらしいです。
その急性の肺血管の圧力の上昇によって
毛細血管が破綻し、大きい出血が起こることがあるみたいです。
この子犬さんのマズルコントロールによる肺水腫による死亡例は結構報告されており
救命のためには一週間ぐらい人工呼吸管理で粘るしかないみたいです。
ただ、一般的な動物病院で一週間の人工呼吸管理は
ほぼ不可能に近いと思いますので
なかなか救命が難しいのが現実なのかと思われます。
基本的には、そういった状況を作り出さない
つまりはマズルコントロールをしないことが大事なのかと思います。
子犬さんでなければ
命の危険とまではいかないのかもしれませんが
口元を押さえつけられて苦痛を与えられたことにより
口周囲を触らせてくれなくなることも多いですし
そうすると歯磨きだったり、病院での口の診察だったり
色々できないことが増えてしまいます。
マズルコントロールはほとんどの場合
ただただ苦痛や恐怖しか与えない行為ですので
可能であればやめてください。
マズルコントロールをめちゃくちゃ推奨するようなトレーナーさんの言うことも
信用に値しないと僕は思います。
そんな間違ったしつけ方法で
最悪の場合、命すら落としてしまうなんて悲し過ぎますしね。
本当にやめましょう。はい。
そんなわけで、今日はマズルコントロールのお話でした。
それでは。