SFTS院内感染事例から考える動物病院選び
マダニによって媒介されるSFTSという感染症は
ご存知の方も増えてきていると思います。
参考までに、病気についての厚生労働省のページを載せておきます→https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html
人間が発症しても、犬さんが発症しても、猫さんが発症しても
こんな感じで、大変恐ろしい感染症なので、対策は必要だろうと考えています。
昨日、業者さんから教えていただきましたが
日本国内の動物病院でSFTSの院内感染事例が昨年報告されています。
今日はこの報告の概要を紹介し
皆様にもマダニ予防やSFTS対策について考えていただきたいなあ、っていうのと
マダニ予防率が低い動物病院
(野良猫さんとかマダニ予防をしていない犬さんとかが多かったり、TNR活動とかに積極的な動物病院)
へ自分の子を連れて行くリスクについても考える機会にしていただければと思います。
それでは、紹介していきます。
簡単に図で表すとこのような流れだったみたいです↓
⇧上記の論文より図を引用させていただいております。
はじめに、動物病院Aをとある犬さんが訪れます。
発熱とか元気消失が主訴だったみたいですが
翌日には下痢や神経症状まで出現したそうです。
で、改善を認めなかったため、症状が出てから三日後に別の動物病院Bに転院しています。
その動物病院Bでは、膵炎などの疾患を疑われ治療が実施されましたが
状態の改善なく、最後は人工呼吸管理なども実施したみたいですが
転院して1日半ぐらいで亡くなってしまっています。
この時の人工呼吸管理を手術台の上で実施していたようなのですが
この子が亡くなった日と同日に
同じ手術台で、二人の猫さんが全身麻酔下での手術を実施していました。
一人は、生後7ヶ月の猫さんで避妊手術(開腹手術)を実施し
もう一人は1歳10ヶ月の猫さんは内視鏡によって異物除去の手術を受けたそうです。
で、このお二人の猫さんが
手術からおよそ一週間後に発熱や消化器症状を呈して、入院治療となりました。
内視鏡手術を受けた猫さんは入院治療の末に一命は取り留めたみたいですが
7ヶ月の避妊手術を受けた猫さんは
発症して三日後に亡くなってしまったそうです。
同じ日に手術を実施した健康な猫さん二人が
同じようなタイミングで同様の症状を示したため
院内感染の可能性を疑われ
この二人の猫さんと、最初の犬さんの血清サンプルを用いて
宮崎大学にて遺伝子検査を実施したそうです。
結果
三つの検体のどれからもSFTSウイルスが分離され
どのウイルス遺伝子の塩基配列も100%相同性を示したことから
最初の犬さんを起点とする院内感染であるという可能性が考えられたとのことでした。
怖いのが
このわんちゃんと、猫さん達は
入院前にも、院内でも直接的な接触がなかったということです。
また、猫さんは二人とも完全室内飼育であり
マダニに噛まれたという既往歴もないことから
猫さん達が直接的にマダニからSFTSウイルスをもらう可能性はないと考えられています。
手術中はもちろん滅菌の環境で実施するため、衛生管理もしっかりされていたとのことですが
最初のわんちゃんの人工呼吸管理を同じ手術台で行っていたこともあり
パルスオキシメーター(サチュレーションを測るやつです)は
全て同じ症例に使用されていたので
このプローブが感染源となった可能性が疑われているみたいです。
要約すると
恐らくマダニに直接噛まれた犬さんがSFTSウイルスに感染。
SFTSウイルスに感染した犬さんが動物病院内にSFTSウイルスを持ち込む。
たまたま同じ日に手術をした猫さん二人がそのウイルスに感染。
そのうちの一人が残念ながら亡くなってしまう、といった流れです。
めちゃくちゃ怖くないですか?
極端な話かもしれませんが、実際に国内で起こった事例なので
静岡市内でもSFTSが発生している現状を考えると
あまり他人事では済まされないように、僕は思います。
極端な話
マダニの予防薬を飲んでいない犬さんの診察はできません、とか
野良猫さんの診察はできません、とか
そういう対策を動物病院側が実施していかないと
こういった院内感染を防ぐことは難しくなるのかもしれません。
ただで地球温暖化のせいもあってか、平均気温は上がっておりますし
それによってマダニの活動シーズンもどうやら長くなっているように思います。
それだけ、マダニに噛まれてしまうリスクも増えるということは
SFTSに感染する可能性も高まってきていると言い換えても
間違ってはいないのではないかと思います。
今回の猫さん達なんて
普段は外に出ないわけですから、マダニに噛まれる可能性はないわけで
このタイミングでこの動物病院さんで手術しなければ
おそらくSFTSに罹患してなかったと思うんですよね。
そう考えると
猫さんを外に出さないで、きちんと室内飼育されていたり
犬さんでもきちんとノミ・マダニ予防されていたり
そういう方が損してしまう可能性だってあるわけなんですよね。
野良猫さんのTNR活動ってあるじゃないですか?
捕獲して、去勢・避妊手術して、リリースする活動です。
僕個人的にはTNR活動に対しては、あまり快く思っていないですし
病院としても協力しておりません。
なので野良猫さんの去勢・避妊手術をする機会なんてほとんどありません。
でも、静岡市獣医師会が推奨していることもあってか
野良猫さんの手術を毎日のようにされている動物病院さんも多いわけなんですよね。
そうなると、今回のようなSFTSウイルスを院内に持ち込んでしまうリスクも高いわけで
院内感染の危険性が高いのかなあと考えてしまいます。
野良猫さんの保護活動とかって
動物愛護的な側面からすると立派な活動なのかもしれませんが
誰かにとって良いことって
一方では誰かにとっての悪いことになっている可能性だってあると思うんですね。
誰目線で物事を考えるかによって
行動の善悪は大きく変わるわけなんですが
少なくとも、僕個人的には
当院の患者様だったり、院内で働いてくれるスタッフだったりの命を
最優先に守りたいって考えておりますし
守るためには
わんちゃんはお散歩に行くならマダニ予防は絶対やってください、だったり
お家と外を行き来する猫さんや野良猫さんは診察できません、だったり
そういう方針へシフトしていく必要があるのかなあ、と思っています。
現時点では
完全な野良猫さんの診察費用は
通常の診察費用にプラスして追加費用を頂いていたりするだけで
診察不可能ということにはしていません。
わんちゃんについても
8割以上の方はノミ・マダニ予防をされてはおりますが
基本的に予防関連はご家族様の自主性に委ねている状態です。
今後はここら辺を変えていくべきなんでしょうか。
こういうことを言うと、一定数の反発を食らうんでしょうけどね。
皆さんはどう思われますか?
野良猫さんの手術を喜んで受け入れる動物病院か
野良猫さんお断りの動物病院か
どっちを選びますか?
ご意見などございましたら、ご気軽にコメントしていただければと思います。
今日書いたのは、僕個人的な意見なので
批判や反論、非難していただいても一向に構いません。
もしコメントしていただけるようでしたら
忌憚のない意見をお願いいたします。
それでは、長くなりましたが、これにて失礼いたします。