最期の処置
とある動物病院様の口コミに印象に残るものがありました。
そこには
悪性腫瘍を抱える猫さんのご家族様が
苦痛から解放させてあげたいということで安楽死を選択した旨が書かれてありました。
苦渋の選択であったが、過去の別の猫さんでのご経験から
これ以上苦しい思いをこの子にさせたくない、という想いで選択されたようでした。
ですが、最後の最後の安楽死処置の時の注射の際に
その猫さんが痛みを訴え叫んだそうです。
その後、ご家族様は診察室から出され
奥で処置の続きをやっている最中にまた悲鳴が聞こえてきたと書かれてありました。
その方は
『お別れの瞬間はその後も生きていく飼い主のメンタルにはかなり響きます。
とても辛い記憶になりました』とも書かれてありました。
この文章を読んで
改めて、最期の時をどのように過ごすかということは
とても重要なことだなと思いました。
詳細はわかりませんが
安楽死をお願いするということは
ご家族様と動物病院や先生との信頼関係はしっかりとあったと思うんです。
それでも結果的にこのようなことになってしまったことで
猫さんやご家族はもちろん
処置にあたった先生や病院スタッフにとっても
あまり良い経験とはならなかったと思います。
何だか辛いですよね。
認定医の試験の参考図書となっている
獣医臨床麻酔学の本の第9章のテーマが
安楽死についてなのですが
そこには
『安楽死法は、疼痛・ストレス・不安及び懸念を伴わずに
意識消失および死をもたらす方法でなくてはならない』と書かれてあります。
僕の自身の経験としては
ガンの終末期などにご家族と相談した上での安楽死というものは
3件しか経験がありません。
ここまで頑張ってくれたんだから最期はとても安らかに逝けるように
細心の注意を払いながら処置にあたりました。
動物への苦痛を与えない処置はもちろんですが
ご家族様への心のケアも同じくらい大事なものだと考えていますので
安楽死処置の質の良さは、動物だけでなくご家族様を救うことにもなるのだと思います。
獣医師として可能であれば避けたい処置ではあるものの
自分がずっと診ていた子なら
他の違う先生にやってもらうぐらいなら、自身でやってあげたいと僕は思ってしまいます。
より質の高い、倫理的な安楽死方法を理解するという意味でも
今回の認定医試験の勉強は無駄ではなかったのかもしれません。
色々と考える機会をくれたように思います。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。