Mirataz・ミラタズ軟膏
2月に参加した内科学アカデミーの中に
がんセンターの小林先生がやってくださった
猫のリンパ腫2024というタイトルのセミナーがありまして
テーマが
『この10年間で何が変わったか?トップ10』という感じのものでした。
10位から5位か4位ぐらいまでは
あんまり優劣はなく、順位はテキトーにつけたとおっしゃられていましたが
ベスト3の情報に関しては不動の位置付けみたいでした。
3位が、限局性の消化管型リンパ腫に対する外科手術という選択、で
2位が高用量シクロホスファミドによる治療でした。
確かにこれら二つは昔とはだいぶ考え方が変わったところかもしれません。
シクロホスファミドなんてリンパ腫治療の中では
犬さんでも猫さんでも、どっちかというと脇役中の脇役みたいな位置付けでしたが
ここにきて
猫さんのリンパ腫については、主役級に躍り出た感じですし
実際やってみる機会も最近多いですが
確かに効果的な場面が多いような気がします。
特に、一般的な多剤併用のプロトコルでダメかな・・・となったリンパ腫の猫さんでも
高用量シクロホスファミドだけは効いてくれる、ということも珍しくありません。
で、一位はなんだったかというと
『化学療法とミルタザピンとの相性は抜群』というお話でした。
こんな感じで論文が出ておりまして
化学療法中にミルタザピン軟膏(耳に塗るMirataz軟膏)を使ってみたら
リンパ腫を対象に化学療法で治療しているにもかかわらず
症例の60%に体重増加が認められた、という報告になっています。
ミルタザピン自体は、元は人間のうつ病に対するお薬であることもあり
副作用としてボーカライゼーションという呼ばれる
ミャーミャーと猫さんが興奮して鳴いてしまう、ということが報告されておりますが
逆に言うと、動物病院への通院における不安解消にも繋がるのではないかと
先生はおっしゃられておりました。
ミルタザピンについては、制吐作用も認められておりますし
化学療法における嘔吐に対しても、相性は良いのではないかと考えられています。
なんせ口からの投薬が大変な猫さんの耳に塗るだけのこんな感じのお薬なので
投薬自体が非常に楽というのがめちゃくちゃ良いですし
慢性腎臓病のガイドラインの中にも登場するぐらい安全性も担保されておりますし
リンパ腫の化学療法中とかに限らず
食欲不振に悩む猫さんや闘病中のどんな猫さんに関しても
非常に使い勝手の良いお薬だと思います。
ただ、現状、輸入しないといけないというのが一番の問題点でありまして
先ほども輸入の手続きをしておりましたが
円安の進行に伴い
ミラタズ軟膏を揃えるのにかかる費用もまあまあ値上がりしております。
こればっかりは現時点では仕方がないんでしょうが
輸入の手間だったり、価格の問題だったりが
もう少し何とかなれば
慢性疾患を抱える猫さんのQOL向上にはかなり役になってくれそうなお薬だと思います。
闇雲に使用するというわけではなく
きちんとした診断をつけた上で
治療方針などを決定した後にはなるとは思いますが
1人一本持っておいてもらうだけでも
終末期のケアや緩和ケアとして
猫さんの生活の質をあげてくれるんじゃないかなと思います。
今日はそんなお薬、ミラタズ軟膏の紹介でした。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。