卵巣遺残症候群
今日手術をした犬さんは
去年の秋に他の動物病院さんで避妊手術をしたわんちゃんで
先週、陰部から出血があるとのことで来院されました。
膀胱炎などによって尿に血が混じることも考えられますが
身体検査、超音波検査などより
尿路からの出血ではなく
発情出血っぽいなってなりました。
というのも、明らかに陰部が腫大しており
出血の仕方も発情出血のそれっぽくって
何より、超音波検査にて右側の腎臓の尾側に卵巣っぽい構造物を認めました。
要するに、避妊手術の際に
卵巣を取り残してしまった可能性が高いということです。
ということで、前の動物病院さんにその旨を説明し
確認を取ってもらった方が良いという話にはなったのですが
手術をした病院の先生があまりにもお話にならない感じだったそうで
結局、当院で手術となりました。
その子は、一回目の避妊手術の際に
卵巣と子宮を切除されていたので
本来は卵巣を見つける上でのランドマークになるはずの子宮が存在せず
しかも、右側の卵巣は左よりも奥に存在し、取りにくさがあります。
そんなわけで、手術はそれなりに大掛かりなものになりましたが
無事に、卵巣と思われる組織を摘出できました。
念の為、摘出した組織は病理組織検査に提出しています。
その子は、元気に尻尾を振って先ほど家に帰りました。
卵巣遺残症候群には
色々とパターンがあるそうで
副卵巣や異所性卵巣という、生まれつきの構造異常みたいなこともあるみたいが
原因の多くは、『避妊手術における卵巣の取り残し』だそうです。
卵巣を摘出する際に、どうしても組織を引っ張らないといけないわけですが
この時に、強い痛みが生じます。
術者の外科的な技術はもちろん大事だとは思いますが
そこは僕自身があまりタッチできる点ではないので
僕の個人的な避妊手術におけるポイントは『痛みをいかに抑えるか』だと考えています。
卵巣を牽引する際に
痛みが大きければ、それだけ露出しにくく、摘出もしにくくなると思いますし
痛みを綺麗に抑えてあげることが、術者の手技のしやすさに繋がります。
手術をする外科医と
麻酔・疼痛管理を担当する麻酔科医が分かれて手術をすることで
より丁寧な手術を実現することができるんじゃないかなと。
当院の犬さんの避妊手術の費用は決して安くはありませんが
そういう点にこだわった結果が、値段に現れているのかなと思います。
前述の動物病院さんの避妊手術の費用がいくらかは存じ上げませんが
おそらく当院よりは安いんじゃないかなと思います。
モノの値段というものは
高いものには高いなりの、安いものには安いなりの理由があるんだろうなって
今回の件を経験して感じました。
卵巣遺残症候群というがあるという話は聞いておりましたが
実際の経験としては初めてだったので、半信半疑ではありましたが
色々と考えさせられる経験だったように思います。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。