抗生物質・抗菌薬の猫さんへの影響
僕が個人的に参加している消化器疾患の勉強会があるのですが
そこの主催者である日本の中でも著名な消化器専門の先生から
昨年の9月にバルセロナで行われたヨーロッパ獣医大学内科学学会(ECVIM)の要旨集が公表されたこと
その中でも気になるものをいくつかピックアップしてくださいました。
今日はそれらのうちで
僕が一番『マジか!?』ってなった発表を紹介します。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10800207/
↑ここのページに書いてあるのですが
この発表の消化器の11番目の演題ですね。
タイトルは
『Early‐life antibiotic exposure and susceptibility to chronic diarrhea during adulthood in cats』
『若齢期の猫さんへの抗菌薬・抗生物質の曝露と成猫さんの慢性下痢への影響』って感じでしょうか。
ここに書かれてあるデータは結構衝撃的でして
『1歳未満の子猫の時期に抗菌薬・抗生物質を投与された猫さんは
成猫になってからの慢性下痢の発生リスクが19.9倍になる』
というデータです。
『マジか!?』ってなりませんか?
個人的には昨日読んだ学歴によって死亡率に差が出ることがわかりました
ってニュースよりもびっくりする感じのニュースです。
このデータは104頭の猫さんを調査した感じで
規模感としては小さめなので
調査する猫さんの頭数が増えてこれば、○○倍の細かな数値は変化するのかもしれません。
ただ、若齢な時期の猫さんへの抗菌薬・抗生物質の投与は
将来のことを考えると、より慎重に検討すべきだとは思います。
本当に抗菌薬・抗生物質を使用しないといけないのか?
きっちり吟味した上で、使用を考えないといけません。
人間の方は、この猫さんのデータと同様のことがすでにわかっているみたいですが
やっぱり猫さんも同じってことですね。
抗菌薬・抗生物質の腸内細菌にもたらす影響というものは
一時的なものではなく、数年にわたり悪影響を及ぼす可能性はあるってことかと思います。
こういうデータがもっときちんと拡散されて
動物病院での抗菌薬の使用が変わっていけばいいんですけどね。
なかなか難しいのが現実なんです。
昨日別のところで見た獣医さん向けのアンケートで
『急性下痢に対して抗菌薬を使用しますか?』って質問に
20%以上の獣医さんは使用しますって答えていて
その使用する獣医さんのうちの40%の人が、『なんとなく』という理由で処方しているらしいです。
このアンケート結果もある意味で『マジか?』って感じですよね。
これをそっくりそのまま当てはめて考えるなら
獣医さんの10%ぐらいは、なんとなくで急性下痢に対して抗菌薬を使用している、ということになります。
なんとなくで使用しないでもらいたいなって思いますが
その先生からしたら、今までこうやって診察してきたからという自負があるのかもしれません。
こういう風潮が変わるのって時間がかかると思うんですね。
なので、動物病院の先生の言うことを100%信用するってよりは
ご家族の方にも処方されたお薬のことについては一緒に考えていただくのも大事なことなのかなって思います。
子猫さんでよく見かける猫風邪症状に対して
抗生物質を処方されている場面をよく目にしますが
そういうところから何とか変えていかないといけないんでしょうね。
それでは、今日はこれくらいで失礼いたします。
いつもお世話になります。病院より帰り歩いておしっことうんちをした後、少し呼吸がくるしそうになり寝ているうちにますます呼吸状態が悪くなり、12時過ぎに永眠しました。本当あっというまでした。先生方看護師さんたちがとても愛してくれて本当に感謝しております。本当にお世話になりました。家にまだ2匹猫がいますので引き続きよろしくお願いします。
>榊原様
最後はお力になれず申し訳ありませんでした。
りんたろうさんもご家族の皆様も本当に最後まで一生懸命治療をしてくださいました。
こちらこ最後の最後まで診察をさせていただいてありがとうございました。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。