甲状腺機能低下症の発生頻度
先日参加した獣医内科学アカデミーの
動画配信が始まりました。
今日は日曜日にしては全然人が来なかったので
診察の合間で動画を診ておりました。
犬さんの甲状腺機能低下症やクッシング症候群、アジソン病
猫さんの甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患を
2023年のAAHAガイドラインに沿って復習しましょう、みたいなものを診ておりました。
そこで紹介されていたこちらの論文↓
英国の動物病院における犬さんの甲状腺機能低下症と診断される割合と
そのリスク因子の疫学調査をしたものです。
犬さんの甲状腺機能低下症って
過剰診断が結構問題になっている疾患でありまして
今回のガイドラインでもそのことが述べられているみたいです。
日本でも御多分に洩れず、過剰診断がなされているんじゃないかなと感じる場面は多々あって
皮膚病だったり、健康診断で血液検査を受けた犬さんだったりに
甲状腺ホルモンが低いという理由だけで、甲状腺機能低下症と診断され
甲状腺ホルモン製剤を処方されているケースが多いです。
ただ、何でもかんでも誤診だと決めつけるのは良くないとは思います。
実際に真の甲状腺機能低下症のわんちゃんもその中にはいるのだと思います。
じゃあ、実際どのくらいの頻度で甲状腺機能低下症のわんちゃんにであるのかと言いますと
こちらの英国の調査では90万頭というかなりの数を調査されているんですが
年間発症率が0.04%という結果になっておりました。
つまりは今まで甲状腺機能低下症の既往がないわんちゃんを診察した際に
甲状腺機能低下症のわんちゃんに出会う確率は
2500頭に1頭ってことになります。
静岡県全体で登録されている犬さんの頭数は20万頭ぐらいなので
県全体でも80頭しかいないことになりますね。
静岡県全体の動物病院の数が350軒ぐらいなので
単純に考えたら4、5軒の動物病院につき一頭しか甲状腺機能低下症の犬さんはいないわけです。
これはあくまで英国のデータを元にしているので
日本の事情とは異なるのかもしれません。
それでも結構レアな疾患だという認識で良いのかなあと思います。
10年以上前の大学の授業では
犬の甲状腺機能低下症はクッシング症候群に次いで
二番目に多い内分泌疾患ですよ、って習いました。
ただ、実際は糖尿病とかアジソン病とかの方が多いのかもしれません。
その頃から甲状腺機能低下症は過剰診断されてしまう傾向にあったんでしょうね。
実際、当院の場合に当てはめてみると
当院にカルテ登録しているわんちゃんの数もちょうど2500ぐらいかと思われまして
確かに今現在、甲状腺機能低下症の薬を飲んでらっしゃるわんちゃんはお一人だけなので
確率的にはあながち間違ってないのかなと思います。
逆に年間の初診の件数が500件ちょっとなわけなので
ここから5年間の期間では、お一人増えるかどうかって感じなんでしょう。
確率ばかりに囚われてもいけないとは思いますが
誤診にはくれぐれも注意しながら診察したいと思います。
それでは今日はこの辺で失礼いたします。