せん妄とα2作動薬
日本集中治療医学会によると
『せん妄とは
注意や理解、記憶などの機能が急性に低下し
その症状が変動することを特徴とする。
認知症と混合されがちであるが、認知症が慢性に変化するのに対し
せん妄は急性に生じる。
ICU においては、せん妄は 30-90%程度の患者に発症すると言われている 。
せん妄の発症は、原疾患の治療を行う上で大きな妨げになり
生命を脅かす重大な事態になることもある。』
と書かれています。
昨日までの学会の一番最後のテーマは
α2作動薬という鎮静・鎮痛に用いる薬剤だったのですが
その中で『せん妄』というのが一つの議題になりました。
人間の集中治療分野では、このせん妄がちょっとした問題になっており
患者さんの退院後の社会復帰などにも影響を与えるようです。
このせん妄が動物においても存在するのかどうなのかは正直わかりませんが
全身麻酔後になんとなくそんな感じかな?
痛みは抑えているのに不穏な感じを呈してしまう子は一定数いるような気もするので
そういう子はそれに当てはまるのかもしれません。
で、今回のテーマであったα2作動薬であるメデトミジンなんかは
プロポフォールやイソフルランといった一般的に用いられる麻酔薬なんかとは異なり
より自然な睡眠に近い形で鎮静をかけるとされております。
これによりせん妄を少しでも防げるのではないかということで
人間の集中治療分野では人工呼吸中の患者様などに
α2作動薬を用いる場面が増えているようです。
動物の麻酔の方でも昔からメデトミジンは使用されている薬剤ではあります。
昔の先生方は結構な高用量を使って
若い動物鎮静をかけることをメインに使用される印象です。
が、しかし
ここ数年でかなり使用方法は変わってきておりまして
重症例の麻酔なんかにもかなり低用量で使用することで
良好に血圧をコントロールできたり、鎮痛作用が得られたりできる薬剤という認識になりました。
人の医療における鎮静において、せん妄などを意識しての管理が必要なのであれば
動物でもきっと必要なのかなと思います。
昨日はそんなα2作動薬についての議論が3時間ぐらいあったわけですが
麻酔においても集中治療においても
すごく重要な役割を担ってくれる薬剤なんだということを再認識させてもらいました。
人医療が発展している部分は、動物医療も可能な限り同じくらいに近づけるように
情報をアップデートして、知識や経験を増やしていかなければなりませんね。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。