Quality of Death
生活の質や人生の質などを意味する言葉として
Quality of Life いわゆるQOLという言葉がありますが
その生の先にある死についても
理想的な最期の迎え方という意味合いでQODという言葉があるそうです。
最期の瞬間の迎え方、どんな形が良いかは人それぞれあると思います。
が、それぞれの理想に近づけるようなお手伝いをするのも動物病院の仕事だと思います。
亡くなる最期の日までご飯を口にしてくれたり
食事を取ることはできないけれどご家族に甘える様子があったり
家族みんなで過ごした場所で最期の暖かい時間が流れてくれることが僕的な理想です。
最期の瞬間までずっと呼吸が苦しかったり
ずっと痛みが酷かったり
そういう感じの最期の時間にはできるだけしたくないと考えています。
そうならないためにできる限りのことはやってあげたいですよね。
ちょっと話は変わりますが
悪性腫瘍に対する治療の選択肢として化学療法、いわゆる抗がん剤による治療があります。
どうしても日本だと医療ドラマの影響なんかがあってか
ネガティブな治療と受け取られがちな抗がん剤です。
僕の個人的な意見ではありますが
確かに副作用のことがあったり、通院が大変だったり
色々とネガティブな要素がないわけではないですが
それを上回るQODの良さがあるんじゃないかなと思っているんですね。
多中心型のリンパ腫と診断されました。
抗がん剤治療をやりますか?やりませんか?ってなった時に
抗がん剤はちょっと・・・、ステロイドだけにしておきます、で2ヶ月後に亡くなった犬さんと
できる限りの治療をやってください、となって半年に及ぶ抗がん剤治療をやった結果
一年半後に亡くなった犬さんとを比較した時に
抗がん剤治療をやったわんちゃんの方が最期の瞬間、穏やかなケースが多いように感じるんですね。
これは完全な私見なので
実際はそんなことないのかもしれませんが
最期の瞬間を迎えた時のご家族の心境は
抗がん剤治療をされた方々の方が穏やかな気がしています。
もちろんそれは
できる限りのことをやってあげられた、というところから来ているのかもしれませんし
単純に生存期間が延びたおかげで心の準備ができたというのもあるのかもしれません。
ただ、動物医療というのは
動物だけを相手にするのではなく、そのご家族様も一緒にケアしないといけない仕事である以上
犬さん・猫さんの死を迎えるにあたり
本人の痛みや苦しみの軽減はすごく重要な要素ですが
ご家族が動物の死を迎える上でのご家族の心のケアも同じくらい重要だと思っています。
つまりは動物医療におけるQODという言葉は
動物を主体にして考えると同時に
ご家族にとっての動物の死の質というものも指すんじゃないかなということです。
ちょっとわかりにくいですかね。すみません。
あくまで僕の個人的な意見ですので
賛否両論あると思いますし、何が正解とかない気がしておりますが
当院は、諦めない動物医療を掲げております。
徹底的にできる限りの動物医療を動物に施してあげること自体
動物にとって本当に良いことなのか、どうなのかということは
実際に本人に聞くことができないので正直わからないこともあります。
それでも、ご家族様には良かったと言っていただけることがほとんどなので
少なくともご家族様にとっての動物のQOD向上には繋がっているんじゃないかと考えています。
別に全人類の支持を得ようとは考えてはいないので
誰かに良いと言っていただけるのであれば
そういった姿勢はとりあえずこれからも続けていきたいと思います。
何か色々と話が脱線しましたが
本日はこれぐらいでおしまいにしたいと思います。
それでは失礼致します。