IRISの慢性腎臓病ガイドライン
国際獣医腎臓病研究グループとも呼ばれるIRISが発表している
犬さん・猫さんの慢性腎臓病についてのガイドラインは
ご存知の方も多いかもしれません。
腎臓病のステージⅠとかⅡとかを決める基準が決められていたり
ステージ毎の検査内容だったり
推奨される治療内容だったりが記載されております。
前にもどこかでちょこっと触れたような気もしますが
今年2023年にこのIRISの慢性腎臓病ガイドラインが改訂されたんです。
こんな感じで発表されているんです↓
http://iris-kidney.com/guidelines/guidelines_updates_2023.html
(ご興味のある方は読んでみてください。)
で、この中で
前のガイドラインとの変更点、みたいなのが書かれてあってですね。
犬さん・猫さんの慢性腎臓病の管理においていくつか変更点があったんです。
こちらが猫さんの変更点↓
で、個人的には
ここの2番目のところに注目して欲しいわけなんですけれども
英語だと読む気にならないと思いますので
2番目のところだけ翻訳サイトに翻訳してもらいますと↓
『各ステージにおいて血清リン酸塩濃度がIRISの目標範囲内にある猫を評価する手段として
FGF23を導入し食事によるリン酸塩制限の必要性
(初期ステージングにおいてリン酸塩濃度が目標範囲内にあるステージ1およびステージ2)
または初期食事療法により血清リン酸塩濃度が目標範囲内に低下した場合の制限強化の必要性を判断する。
これは診断マーカーとしてのFGF23が2022年に米国で商業的に利用可能になり
2023年には世界の他の地域でも利用可能になると予想されることに続くものである。
これらの変更に伴い、FGF23に関する詳細な教育論文が書かれた。』
このFGF23がガイドラインでも推奨される検査として登場したのは
個人的には結構嬉しいことなんですね。
2020年に国内の検査会社で検査がリリースされて以降
このブログでも何度かFGF23について書いたりしていたと思いますが
他の先生に話しても積極的に測定している先生もあまり多くなくて
個人的には有用な検査と考えていたものの
やや自己満感は否めないような感じでした。
リン制限が必要かどうかの判断の検査としてはもちろん
慢性腎臓病の予後評価だったり、リン制限治療の効果判定であったりと
慢性腎臓病の内科管理の上では結構重要な検査じゃないかなあと考えていたところに
IRISのお墨付きが出たのはすごく嬉しいことなんですね。
おそらくこの嬉しさは全く共感が得られない類のものだとは思いますが
自分が信じてやっていたことが間違いじゃなかったんだなって思えた感じに近いと思います。
日本でも、IDEXXさんが新たにFGF23の検査が可能になったりして
間違いなく測定機会は増えてきてると思うんです。
診断アルゴリズムみたいなのも書いてくれていますし↓
https://www.idexx.co.jp/files/fgf-23-algorithm-jp-jp.pdf
とりあえず、これからも慢性腎臓病の診療において
FGF23を積極的に活用していきたいと思います。
将来的には院内で迅速に測定できたりするのが理想的ですかね。
腎臓病といえばSDMAの測定!みたいな感じで
患者様の間でもご存知の方はだいぶ増えてきている印象ですが
FGF23の存在ももう少し認知度が高まっていけば
院内測定を検査会社さんが実現してくれそうな気もしますが
こうやってブログに書くことがその一助になってくれないかなとか思うわけなんです。
この話題、書き続けると終わらなくなりそうなので
そろそろ終わりにしたいと思います。
とりあえず
FGF23は慢性腎臓病ステージ1や2の猫さんに
リン制限が必要かどうかをチェックするツールとして有用なんですよ、ということだけ
覚えといていただけると嬉しいです。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。