三た(さんた)論法
ある症状があって病院を訪れました。
そこでとある薬が処方されました。
その薬を服用すると症状は改善され
病気は治りました。
よかったですね。じゃんじゃん。
という感じで話が終わるわけはもちろんなく
上記のようなケースにおいて
薬が本当に効いていたんでしょうか?というのが今日のお話です。
上記のような
薬を『使った』→病気が『治った』→薬が『効いた』という一連の流れのように
薬を使って症状が改善されたから、この薬は効くんだ!という考え方を
三つの『た』から取って、さんた(三た)論法と呼ぶそうで
医療業界では、注意が必要な考え方だと認識されているようです。
良くなった=薬が効いた、というわけではないということに注意が必要なんです。
もしかしたら、その薬を使用しなくたって
自然と良くなっていたかもしれません。
このサンタ論法の例として挙げられるのが『雨乞い』です。
雨が降らない期間が続き
雨乞いをしたら、その直後に雨が降った。
これは、雨乞いをしたから雨が降ったと認識して大丈夫だと思いますか?
雨乞いをするだけで雨が降るんだったら
干ばつとか問題にならないですし、アラバスタ王国だって戦争にはなりません。
雨乞いだけで雨が降るわけないことは誰だってわかることかと思います。
それと同じことが
薬の処方や効果の判定にも言えるわけですね。
小動物診療の現場で良くあるケースといえば、何でしょうか。
猫さんの膀胱炎なんかは典型例かもしれません。
2歳の健康な猫さんがある日突然、頻尿傾向になりました。
何度もトイレに行くようになって辛そうです、とのことで動物病院を受診しました。
『これは膀胱炎の症状ですね。』と膀胱炎の診断を受け
二週間効果のある抗菌薬(抗生物質)の注射をされます。
結果、症状は2、3日で改善し、その後トイレに行く回数は通常通りに戻りました。
良かったですね。じゃんじゃん。
この場合、抗菌薬の注射が効いたから膀胱炎の症状は良くなったのでしょうか?
一部の例外を除いて、多くの場合、この注射は何のメリットもありません。
敢えて上げるのなら、『病院で注射をしてもらえた』という満足感が得られるということぐらいでしょうか。
むしろ耐性菌をただ増やすというデメリットや、無駄な費用がかかるというデメリットはあると思います。
若齢の健康な猫さんで細菌感染によって膀胱炎になることはほとんどありません。
膀胱炎症状の多くが、特発性膀胱炎と呼ばれる、環境ストレスなどに起因する膀胱炎です。
特に治療を施さなくても自然に良くなるケースも少なくありません。
上記の例の場合ですと、抗菌薬の注射をしなくても勝手に症状が改善いた可能性は十分にあり得ます。
このサンタ論法という考え方。
薬を処方する側の獣医師もきちんと考えるべき内容かと思いますし
処方される患者様の方にも考えていただく機会があっても良いのかなと思います。
新薬が発売された場合などは特にそうかもしれませんが
その薬が本当にその症状に対してプラスの効果があるのかどうか?
そこは厳しい目で判断しなければならないと思います。
僕自身も『意味のある検査・治療』を心がけたいなと思います。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。