猫さんの慢性腎臓病と腸内細菌
遅くなりましたが
先日より猫さんの慢性腎臓病の管理+α的なセミナーのまとめみたいな記事を
何回かにわけて書かせていただきましたが
遅くなりましたが、本日をその最終回とさせていただければと思います。
人の方では
慢性腎臓病と腸内細菌叢の関係性が指摘されておりまして
お互いがお互いの悪化因子になるとされています。
慢性腎臓病によって糸球体濾過量が低下すると
尿毒症物質というものが蓄積していき
尿毒症物質の蓄積によって
消化管運動に悪影響をもたらし
結果として、腸内細菌叢の異常をもたらします。
慢性腎臓病の猫さんに認められる便秘なんかもここから来ることもあります。
逆に腸内細菌から腎臓への影響を考えてみると
腸内細菌叢が破綻することによって
結腸細菌由来の尿毒症物質の産生増加を引き起こし
これらインドキシル硫酸に代表される尿毒症物質の増加は
腎障害を進行させるんじゃないかと人や猫さんでも指摘されております。
つまり、慢性腎臓病になっても腸内細菌叢が悪くなりますし
腸内細菌叢が悪くなっても腎臓病に悪影響を与えてしまいますし
一旦これに入ると悪循環が繰り返される可能性があるわけです。
また別の猫さんについての報告では
猫さんの慢性腎臓病と腸内細菌叢の関係性について以下のことが言われております。
・猫さんの慢性腎臓病では腸内細菌叢の多様性が低下していること
・血中インドキシル硫酸は慢性腎臓病のステージが進行するとともに増加すること
こんな感じです。
慢性腎臓病と腸内細菌叢は関係がありそうですよね。
じゃあ、結局どうしたら良いの?って話になるわけなんですが
いわゆるプロバイオティクスによって腸内細菌叢にアプローチしていくという話になります。
これらが尿毒症物質の産生を抑えたり
腸の蠕動運動を改善させることで便秘などを予防したり
そういうのを狙っていわゆる乳酸菌製剤を使っていきましょう、という感じです。
で、どんな乳酸菌製剤が良いのか?って話になるかと思います。
ここの結論はおそらくまだ出ていなくて
人間でも腸内細菌と様々な病気が関係していることや
腸内細菌叢を解析することの研究が盛んに行われておりますが
動物医療においては、まだそれを治療として実践できるレベルまではいっていない状態です。
おそらくもう少しできちんとした治療に繋がるデータが出てくるかと思います。
なので、今あるプロバイオティクス製剤を
いくつか試しながら合うものを探していく形になると思うのですが
最近また新しいものを当院も取り入れてみました。
こちらのサイボミックスというプロバイオティクスです。
詳しくはこちらに書いてあるので興味のある方は読んでみていただきたいのですが
こちらのサプリメントの特徴は
含まれる細菌の種類の数と菌数の多さになります。
単純に菌の種類が多い方が、菌数が多い方が本当に効果があるのか?というのはわかりませんが
可能性はあるんじゃないかと思います。
というわけで
腸内細菌叢が乱れがちな疾患関連には最近処方するようになりました。
感触は悪くなさそうなので
もう少し続けてみようかと思います。
特に便秘傾向のあるような慢性腎臓病の猫さんなんかにも
試す機会があればチャレンジしてみようかと思います。
また、何か新たな発見がありましたら報告させていただきます。
それでは今日はこのへんで失礼いたします。