猫さんの慢性腎臓病をより良く管理する②
今日は先日のセミナーを聴きましたシリーズの第二弾です。
猫さんの慢性腎臓病の管理+αの二つ目ですね。
今日のテーマは『食欲&体重・筋肉維持』です。
文字にしてみるとすごく当たり前のテーマに感じてしまうかもしれませんが
体重や筋肉を維持する・減少させないというのは
どんな病気の管理に於いてもすごく重要な位置を占めると僕は思います。
実際に慢性腎臓病の猫さんについての報告で
体重が痩せている猫さんは生存期間が短いというデータがあります。
そりゃそうでしょ、と思われるかもしれませんが
とても大切なポイントです。
じゃあ、どうやって体重を維持しようか?となるわけですが
やっぱり食べて欲しいんですね。
猫さんの食欲を管理することが大事になってきます。
最近では、食欲増進剤の使用も推奨されております。
猫さんの食欲増進剤の代表格といえば
皆様ご存知のミルタザピンですね。
えっ?知らないですか?
初めて耳にした方はこれを機に覚えていただければと思います。
ミルタザピンというお薬は
もともとは人間の方でも抗鬱薬として使用される薬剤でして
猫さんに使用すると、食欲増進作用と制吐作用があるお薬になります。
以前はこのミルタザピンの錠剤を使用していたのですが
数年前に猫さん用の耳に塗る軟膏がアメリカで発売されまして
現在はそれを輸入して使用するのが主流になっていると思われます。
そもそも食欲を出して欲しいわけなので
食欲のない猫さんを相手に投薬しないといけないので
飲んでもらう薬よりは耳に塗って効果が出るお薬の方が
投薬コンプライアンスはかなり上がりますよね。
一応、このミルタザピンの軟膏について
2019年に177頭の猫さんで使用した報告がありまして
プラセボ群の体重増加率が0.4%だったのに対して
ミルタザピン群は3.9%の増加率であり
その効果がきちんと証明されている感じです。
実際の使用感としても、食欲が上がる猫さんが多いように思います。
比較的安全性の高いお薬なので
慢性腎臓病の猫さんの内科管理には欠かせないお薬かもしれません。
あと、ミルタザピン以外にも
カプロモレリンという薬剤があります。
こちらはグレリン受容体作動薬という薬剤に分類されておりまして
わんちゃんの方ではエンタイスというお薬があったんですが
それを猫さん用に内容を変更したエルーラという商品が
アメリカの方で、慢性腎臓病の猫さんの体重減少に対する薬剤としてFDAの承認を受けております。
個人的にはミルタザピンの耳への軟膏塗布の効果に結構満足しているのと
わんちゃんでのエンタイスの使用であまり良い思い出がなかったので
猫さんでの使用の経験はないのですが
機会があればこちらも使ってみたい薬剤ですね。
作用機序的にはミルタザピンとエルーラの併用もありだと思うので
今後は使用方法も色々と検討されるとは思います。
どちらも輸入薬であることと
少し高価なお薬である点が少しハードルがある感じでしょうか。。
とにかく、こういった食欲増進剤を上手く使用したり
あとは嘔吐などの消化器症状に対して、その都度治療してあげることで
体重を維持できるだけの食欲を維持していくことが大事だということです。
これは別に猫さんに限った話ではなく
わんちゃんの慢性腎臓病においても重要なポイントになりますので、参考にしていただければと思います。
が、ミルタザピンの耳用軟膏は猫さん用の薬剤です。
わんちゃんにはミルタザピンは錠剤で処方する形になるかと思いますし
エンタイスという海外薬が先ほどのグレリン受容体作動薬にあたります。
本当は、猫さんとアミノ酸と筋肉と・・・みたいな話まで
今日書いていくつもりでしたが
またもや少し長くなってしまったので次回に回そうかと思います。
それでは今日はこれくらいで失礼いたします。
慢性腎臓病についてのご相談はいつでもお待ちしております。
よろしくお願いいたします。