フィラリア症について思うこと
3月に入りまして
多くの動物病院さんが、フィラリア検査スタートのお知らせをされております。
当院もたまにはこういう流れに乗っとこうかなと思います。
ただ、フィラリア症はこういう病気です・・・
みたいなことをつらつら書いたところで
蚊が媒介することだったり
成虫が心臓に規制することだったり
わんちゃんの予防だけでなく
猫さんも予防されている方が増えてきたりしていることだったり
そういうことは皆様ご存知かと思いますので
ここで改めて書くことでもないのかなと思います。
とりあえず、当院もフィラリア検査を始めておりますとだけ伝えておきます。
今日は
ちょっと違う視点というか
僕が思うフィラリア症の予防について書いていこうかと思います。
フィラリア症という病気は発症するとかなりめんどくさい病気の一つです。
昔はわんちゃんの死因の上位に入っておりました。
臨床歴が20年以上の先生方はフィラリアに感染した症例を
たくさん診察する機会があったのだと思います。
僕の同世代の獣医さん達は
フィラリア検査で陽性となったわんちゃんを見たことない人もいるみたいで
昔に比べるとかなり数は減ったと思います。
僕は幸いにも?奈良で仕事をそれなりにしていた期間がありますので
症状が出ていないフィラリア陽性の子から
重度の肺高血圧症に至っていたり
大静脈症候群という緊急状態になっていたフィラリア症の子を診察する機会もありました。
今ではおそらく手に入れるのが難しくなっている
ヒ素製剤でフィラリアの成虫駆虫を行った経験も何度かあります。
何度も言いますが
フィラリア症って陽性となるとかなり厄介なんです。
無症状や軽症と言っても、少なからず血管にダメージはいっているでしょう。
そういう子が駆虫後した数年後に肺高血圧症に陥っている子を何度も見ました。
絶対になっちゃダメなんです。
そういう感染症なんですね。
こっからが本題ですが
フィラリア症っていうのは
予防薬をきちんと使用することで
ほぼ100%予防が可能になる感染症なんですね。
それって結構すごいことだと思うんです。
新型コロナウイルス感染症で考えていただくとわかりやすいかもしれませんが
コロナに感染するのを100%防ぐのって、多分無理ですよね。
世界中が躍起になってワクチン開発に乗り出して
いろいろな企業が必死で作り上げたワクチンですら
打ったからといって感染を100%防ぐことなんてできません。
いや、寄生虫疾患とウイルス疾患で全然違うし
感染経路も全然違うから当然でしょ、という意見も出るでしょう。
僕が言いたいのはそういうことではなくて
予防すれば100%に近い確率で予防できるんなら
予防しませんか?って話です。
人類史上、撲滅に成功した感染症は天然痘だけだと僕は記憶しております。
間違ってたらすみません。教えていただけると嬉しいです。
いずれにしろ、それぐらい感染症の撲滅って不可能に近いことだと思うんですね。
なので、おそらくこの先フィラリア症を撲滅することは難しいと思います。
蚊がいない地域に住むとかしない限り
わんちゃんがフィラリア症に感染するリスクはあると考えた方がいいと思います。
奈良に勤めていた頃は
年に平均3頭ぐらいはフィラリア陽性になっている子を見ましたが
静岡に来て、この3年間
フィラリア検査で陽性となったのは1人だけです。
なので、地域的にはおそらくフィラリア症の発生は少ない方なのかなと考えています。
その陽性だった子も、無事に翌年には陰転化しておりましたし
濃厚感染地域と比較すると、静岡市でのフィラリア感染は少ないのだと思います。
これはおそらく地域のわんちゃんのご家族の予防に対する意識が高いおかげだと思います。
ただ、『少ない』≠『ゼロ』なんですよね。
おそらくフィラリアはいるにはいるんです。
実際、フィラリア予防されていない方もかなり珍しいですがいらっしゃいますし
陽性だった子もいたわけですから
感染経路を考えれば、静岡市内で感染が起こっていてもおかしくはありません。
結局は自分の身は自分で守るしかないし
わんちゃん・ねこちゃんの身はそのご家族が守るしかないんだと思います。
フィラリア症の発生が少ない地域で言っても
あんまり説得力ないかもしれないですが
フィラリア症が原因で命を落とした子を見たことがあると
絶対にフィラリア症予防ってした方が良いなって誰もが思うと、僕は思います。
綺麗さっぱり完治に持っていけるような疾患だったらそんなことは言わないかもですし
予防薬を飲んだからって
予防できるかどうかわかりません、みたいな感じであっても言わないと思います。
でも、罹ったらかなり厄介な疾患ですし
予防薬を飲んだら予防できるんです。
それなら予防する方がいいんじゃないかと思うんです。
通算で考えた時に
フィラリア症が原因で亡くなったわんちゃんの数ってすごい数だと思うんです。
その子達の数多くの命と
イベルメクチンの開発等フィラリア感染症の予防につながる功績を残した先人達の功績を
無駄にしないためにも
フィラリア症の予防は個人的にはお勧めしております。
そんな感じで
今日のブログはこの辺でおしまいにします。
それでは!