犬さん・猫さんの慢性腎臓病について⑦〜治療編その6『チューブの設置と点滴治療』〜
長々と書いてきました慢性腎臓病シリーズも
今日で最後にしたいと思います。
本当はもう少し書きたいこともありますが
いつまでも慢性腎臓病のことばかり書いていてもキリないですし
他に書きたいこともたくさんあるので、一旦今回は今日でおしまいにして
またどこかで書こうかと思います。
最後のテーマはチューブの設置と点滴治療。
チューブとは食道瘻チューブや胃瘻チューブのことで
簡単に言うと
食道瘻の場合は首から、胃瘻の場合はお腹から
食事や水分、投薬を行うための太めのチューブが出ている状態にすることです。
これによって、自力での飲食が難しくなってきたとしても
チューブから食事や薬を入れることができるという優れものです。
難点は、設置をするのに全身麻酔が必要になることと
体からチューブが出ているということが、どうしても日本人の心情として受け入れにくい
そういった点でしょうか。
全身麻酔に関しては、きちんと術前と術後の管理を行えば
短時間であるためそこまで大きなリスクにはならないかと思います。
むしろ食事が取れるようになるというメリットの方が大きいように感じます。
見た目の問題に関しては
最近は猫さん用の可愛らしいお洋服などもたくさんあるので
その中に収納してしまえば、さほど邪魔にもならずに問題なく管理できることも多いです。
現時点での日本の獣医療ですと
腎臓病(腎不全と表現されたりします)=皮下点滴みたいな構図がどうしても生まれてしまいます。
本当に脱水している子に関しては皮下点滴は有用だと思いますが
皮下点滴がないと脱水してしまい
食欲が落ちてしまうような子は週に2、3回は点滴が必要となることが多いように感じます。
一週間以上間隔の空けての皮下点滴に本当に意味があるのか?という点は
慢性腎臓病の管理という観点からすれば、意味は無いと僕は考えています。
皮下点滴が定期的に必要な子についても
本当ならきちんと水和した上で
全身麻酔下でのチューブの設置を行うことができれば
食事も水も取れて、慢性腎臓病の管理もしやすくなると思いますし
皮下点滴の必要性もなくなります。
生涯にわたり、皮膚に針を何度も刺すのと
チューブが体から出ている状態の
どちらが良いか?と問われれば、考え方は人それぞれだと思いますので
そこは強要はできません。
ですが、慢性腎臓病という病気のことであったり
皮下点滴の水分がどのように代謝されるのか、を考えれば
動物にとって負担にならないのは、食道瘻チューブや胃瘻チューブの設置だと思います。
アメリカの獣医療では
慢性腎臓病のステージが2や3に進行し
まだ自分でなんとか食事は取れるけど、そろそろ体重減少や脱水が心配だなというタイミングで
チューブフィーディングを勧める場面も多いみたいです。
国民性の違いなどもあり
なかなか浸透しにくい点などもあるのかもしれませんが
こういった獣医療が少しずつでも国内で広まっていけば
慢性腎臓病の犬さん、猫さんの生存期間中央値を伸ばすことはもちろん
動物とご家族にとってのQOL向上に繋がるのではないかなと思います。
本日の手術は
慢性腎臓病ステージ4、貧血もある猫さんの重度歯周病治療のための歯の手術と
同時に食道瘻チューブの設置でした。
詳しい経過などもし書けるタイミングなどあれば、ここでも紹介したいと思います。
ご本人は今とても元気そうにしております。
今年はこういう症例をどんどん増やしていきたいですね。
長々と書きましたが
慢性腎臓病シリーズは一旦おしまいにしたいと思います。
また、機会があれば書きたいと思いますし
ご質問などある方はいつでも聞いてください。
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それでは、失礼いたします。