鎮静をかけて抗がん剤投与
動物病院で抗がん剤による治療といえば
リンパ腫に対するCHOPプロトコルが代表格として挙げられます。
CHOP(チョップと読みます)プロトコルという方法が一般的に行われます。
CHOPとは四つの薬剤の名前から取っておりまして
シクロホスファミド(C)
ビンクリスチン(O)
プレドニゾロン(P)
ドキソルビシン(H)
の四つの薬剤を組み合わせて行う抗がん剤投与方法になります。
いや、ビンクリスチンにOなくない?ドキソルビシンにHなくない?
って思う人が出てくる名前なんですけど
ビンクリスチンの商品名がオンコビンなのでその頭文字のOを取っているのと
ドキソルビシンの別名がHydroxydaunorubicinなので
その頭文字でHを取っているという
なかなか無理やり名前なんです。
けど、皆んな『チョップ』と親しみを込めて呼んでいるのがこの方法です。
CHOP療法のやり方にも色々と細かなところが違う方法がいくつかありまして
その中でも最も使用されることが多いのが
UW-25というウィスコンシン大学の方法から派生した方法かと思われます。
当院もこの方法でリンパ腫と闘っているわけでありますが
論文や症例報告なんかに書いてある抗がん剤のプロトコルというものは
大体が薬剤の種類や投与量・投与方法などに触れているだけであって
本当に細かい部分は動物病院毎に全然違うんじゃないかと思います。
そういった違いも患者様側に伝わる方法とかあればいいんですが
病院の外からはなかなかわからないのが現状ですね。
そんなにやり方が違うの?と思われるかもしれないんですが
例えば、ドキソルビシンは血管の外に漏れてしまうと
組織が壊死してしまう結構危険な薬剤です。
それなのにも関わらず
投与する際は30分〜60分かけて投与しないと抗腫瘍効果を最大限に生かすことができません。
点滴して投与していくわけでありますが
『点滴しているからじっとしていてね』と注意したところで
犬さん・猫さんには伝わらないので
激しく動いてしまうことだってあります。
その際に、点滴のラインがずれて血管の外に薬剤が漏れてしまったりしたら一大事です。
最悪の場合、数ヶ月後には断脚をせざるを得ない状況になることもあるみたいです。
そういった状況にならないように
当院でドキソルビシンを投与する際は、基本的に犬さんも猫さんも鎮静をかけて実施しております。
30分ちょっと寝ておいてもらうわけですね。
抗がん剤をやるような状態の悪い子に鎮静をかけて大丈夫なの?とか思われるかもしれませんが
もちろんそこは全身状態をきちんと把握した上で
使用する薬剤を選択し、本人に負担のないようにやっていますし
鎮静中に何かあってもすぐに対応ができるような準備を行った上で実施しております。
抗がん剤についての書籍・雑誌には
鎮静を行う際にどういった薬剤を選択した方が良いか?なんかは書いていないわけで
こういったところで動物病院毎の違いというものが発揮されるのかなとは思っております。
もちろん、全頭鎮静をかけてドキソルビシンを投与するのが絶対的に良いですと言っているわけではなくて
鎮静をかけないで安全にできる方法があるのならそれで全然良いと思います。
僕はこれがやりやすいですし慣れているので行っているという感じです。
考え方は色々ですしね。
鎮静とか麻酔とか絶対に嫌だ!という方は
当院での抗がん剤治療にはあんまり向いていないのだと思うので
他の動物病院さんでの治療を行われた方が良いのだと思います。
要は自分の考え方とマッチしているかどうか
それが外から見てわかる方が、理想的な動物病院選びに繋がるのだろうなと思うわけです。
病気や治療に対する考え方・向き合い方
何が得意で何に力を入れているのか?
全ての動物病院のそういう情報が広がれば
動物たちにとってもご家族にとっても、より良い選択を取れる機会が増えるのかもしれませんね。
今日はこのへんで失礼いたします。
脈絡のない文章で申し訳ありません。
では。