サイトハウンドの麻酔
サイトハウンドというのは狩猟犬であるハウンド種のうち
視覚に優れ、足が速い犬種さんたちのことを指します。
具体的には、イタリアングレーハウンドさん、サルーキさん、ボルゾイさんなんかが代表格です。
手足がスラーっとして、胸が深い犬種さんたちですね。
で、このサイトハウンドの子達に麻酔をかけることは結構恐れられておりました。
サイトハウンド種に麻酔をかけるのは注意が必要だよ、とか
全身麻酔をかけるのが怖いから手術を選択しないという場面も少なからずあったみたいです。
これらの原因は
この子達は脂肪の量が極端に少ないこと
薬物を代謝する酵素が少ない可能性が遺伝子的にあること
なんかが挙げられるのですが
結果として、麻酔薬が効き過ぎてしまったりということが以前から言われておりました。
ですが、実際は脂肪の少ない症例はこれらの犬種に限ったことではなく
ガリガリに痩せてしまった状態で麻酔をかける時も同じような場面は想定されますし
遺伝子的な問題に関しても、他の犬種さんにおいても確率は下がりますが、存在することがわかっております。
別にサイトハウンド種に限った問題ではないわけですね。
大事なのは
その子その子に応じたテーラーメイドな全身麻酔を行うことができるかどうか。
予め想定されるリスクに対する準備をきちんと行い、安全に麻酔を終えられるかどうか。
そういうことだと思います。
医療行為である以上、どんなこともそうなのかもしれませんが
100%の備えで臨んでも、100%安全にはなり得ないのが全身麻酔なのかなと思いますが
より100%に近づける努力は怠ってはいけません。
確かに、怖いからやらないという選択もありなのだとは思います。
ですが、全身麻酔下での手術をすれば完治が見込める病気などの
全身麻酔をかけるメリットが大きいのであれば
きちんと準備をした上で全身麻酔・手術に臨むのもありなのではないかと思います。
そんなこんなで
今日は、ボルゾイさんの抜歯の処置でした。
ものすごい大きな歯を切っては抜いて
抜いては縫ってという時間のかかる手術でありましたが
処置後30分後にはスタスタと歩き回ってくれておりました。
無事に終えられた感じです。
全身麻酔なんて
絶対に安全に処置すべきものなので
無事に終わって安心したりするのは少し違うのかもしれませんが
手術後に元気そうな様子で帰る姿は、何度見ても嬉しく思います。
当然じゃん、と言われればそれまでですが
どんなに簡単な手術でも、毎日の麻酔がそれなりに真剣勝負でやっているつもりではあるので
手術した子が帰る時はやっぱり少し気が抜けてしまいます。
明日の麻酔も頑張ろうと思います。
それでは今日はこのへんで失礼いたします。