心拡大と心肥大
「健康診断時のレントゲン検査で心肥大があると言われました。」
というお話を伺う機会が多いので
今日はそのことについてでも書こうかと。
この表現、厳密には間違っておりまして
胸部レントゲン写真により評価できるのは
心肥大ではなく心拡大です。
心肥大という言葉がないわけではありません。
肥大型心筋症という病気がある通り
心肥大という病態は確かに存在します。
心臓というものをゴム風船みたいに例えるならば
心肥大というのはゴム風船のゴム自体が分厚くなるような状態を指します。
それに対して、拡張という言葉もありまして
これは風船でいうところの、中の空気が増えて風船がさらに膨らみ
場合によってはゴムは薄くなる状態を指します。
この肥大した心臓と拡張した心臓をレントゲンで撮るとどうなるでしょうか。
心臓という臓器は血液で満たされているため
レントゲンで撮ると心臓の輪郭しかわかりません。
中の空間が広いのか狭いのかはわからないということですね。
つまり、同じように心臓が大きくなっているように見えたとしても
血液が入っている心臓の部屋が広くなった(拡張した)のか
心臓の筋肉自体が分厚くなった(肥大した)のか
レントゲン検査ではわからないということです。
ですので、胸部レントゲン検査で心肥大がわかりました、という言葉は適切ではなく
正しくは、レントゲン検査で心拡大がわかりました、が正しい表現となります。
そんなん揚げ足取ってるだけじゃないですか、となるのかもしれませんが
一応医学用語なので、言葉は適切に使用せねばなりません。
あとは、健康診断で心拡大を指摘されているのであれば
さらに心臓の超音波検査をするべきかとは思います。
もしかしたら投薬などの治療は不要な段階なのかもしれませんが
治療の必要性の判断は基本的にレントゲン検査のみでできるものではありません。
症状が何もないのであれば尚のこと
詳しい検査をした上で、経過観察のみで良いのか
それとも何かしらの治療が必要なのかは判断していく方が
将来的な予後改善に繋がるのではないかなと思います。
心臓に関して、本当に病気があるのかどうなのか判断するための健康診断や
心臓の投薬内容の決める上での検査として
レントゲン検査だけでは不十分なことがほとんどかと思われますので
心臓病に関して、詳しい検査をご希望の場合は
心臓超音波検査を受けられるべきかと思われます。
犬さんの僧帽弁閉鎖不全症や猫さんの心筋症など
循環器疾患に関して、何かご質問などある方は
ぜひ当院までお越しいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
それでは今日はこの辺で失礼いたします。