胆泥症は病気はですか?
昨日は夜21時からセミナーの予定がありました。
当初は輸液のセミナーを聴くつもり満々でありまして
久しぶりに輸液のセミナー聴けるやん!みたいな感じで喜んで自転車を漕ぎながら自宅に向かったわけです。
で、20時半に突然メールが来たんですね↓
はい。まさかの別のセミナーのお知らせですね。
しかも同じ21時スタートなわけです。
オンラインセミナーが主流になったこの時代に
まさかの時間が被るとは、って感じですよね。
輸液 vs 胆嚢
どちらに興味がありますか?と問われれば
圧倒的に輸液になるわけですが
残念ながら胆嚢の方の消化器セミナーシリーズは、見逃し配信みたいなものがなくてですね。
その場で聴き逃してしまったらもう聴く機会がなくなってしまうんです。
というわけで、結局昨日は胆嚢セミナーを拝聴したわけであります。
で、今日のタイトルへと繋がります。
先に述べておきますが、今日の胆泥症の話は全て犬さんについてのお話です。
猫さんはまた考え方が変わってきますので、それは別の機会にでも。
タイトルにある『胆泥症は病気ですか?』という質問に関して
皆様はどう思われますか?
胆泥症は胆嚢という臓器に文字通り泥みたいなものが溜まってしまう状態を指します。
もしかしたら、胆泥症と診断を受けて薬を飲み続けている犬さんも少なくないかもしれません。
あくまで個人的な意見なので、なんのエビデンスもありませんが
僕が考える、動物病院業界に横行している
患者様からお金を巻き上げることのできるシステムの第1位がもしかしたらこの胆泥症かもしれません。
健康診断で胆泥症が見つかったので、ずっとウルソを飲んでいます、みたいな感じのやつですね。
『膵臓の数値が高いから膵炎です、食事を変えましょう、薬を飲みましょう』診断や
『甲状腺ホルモンが低いから甲状腺機能低下症です、薬を飲みましょう』診断に並ぶイメージですね。
それなりに腹の立つことも多いので、たまにこうやって毒を吐きますが
批判ばかり書いていても建設的ではないので、ちゃんと本題に入ります。
1998年の少し古い報告の中で
胆泥保持率というのが調べられているデータがあります。
その中では、健常犬の53%、肝胆道系疾患の犬さんの62%、他疾患犬の48%で
胆泥症が見つかったとされております。
健康な子でも半分ぐらいで胆泥症が見つかるのであれば、病気ではなさそうですよね。
というわけで、この報告の中では胆泥症というのはたまたま見つかった偶発所見と考えるのが妥当、という結論になっています。
また、よくある間違いとして
血液検査で肝臓の数値が高い→超音波検査で胆泥症が見つかる→胆泥症によって肝臓の数値が高くなっている!
という考え方ですね。
基本的に胆泥症によって肝臓の数値は上がらないとされています。
つまり胆泥症単独では肝酵素上昇の原因にはならないので
肝臓の数値が高いのであれば他に原因があるよ、ってことですね。
ここまで書いていると、胆泥症はなんだか病気として認識するのはどうなの?って感じになってきたかもしれません。
ところが、ここ10年ぐらいで少し胆泥症に対する考え方も変化がありまして
胆泥症と一言で言っても、少し注意した方が良い胆泥症あるのではないか?という知見が出てきています。
それが、非可動性の胆泥症というやつです。
非可動性、つまり胆嚢の中の泥が動かないってことですね。
胆泥症が見つかる際に、大体の胆泥は犬さんの体位を変換したりすることで
超音波検査上、胆泥の動きを確認することができます。
そういった動きがなく、胆嚢の中を胆泥が充満していたり
胆嚢の壁に胆泥がへばりついていたりするやつがそれにあたります。
こういった非可動性の胆泥症は
胆嚢炎や胆管炎を引き起こしている可能性があったり
胆嚢粘液嚢腫という疾患に発展する可能性があるのではないか、と言われています。
というわけで、まとめますが
健康診断なんかで見つかることも多い、体位変換で動く胆泥症に関しては
特に薬を飲んだりする必要はなく、定期的な経過観察だけで良いとされています。
(基礎疾患がある場合はそちらの治療はしないといけないかもしれません。)
一方、非可動性の胆泥症に関しては
臨床症状を認める場合や肝酵素上昇を認める場合には、治療を必要とする場合もあったり
可動性の胆泥症と比較して、より慎重な経過観察が必要とされております。
経過観察はどのくらいの期間で必要ですか?という疑問が浮かんでくるかと思いますが
一応、普通の胆泥症は1年後も胆嚢粘液嚢腫にならなかった、というデータがありますので
可動性のある胆泥症に関しては1年ごととかで良いのではないかな、と考えます。
ただ、胆泥が今まで動いていたのに途中で非可動性になったりした時は、経過観察の間隔を狭める必要はあるのかなと思います。
そんな感じが、犬さんに胆泥症が見つかった時の大まかな流れになるかと思います。
犬さんの胆嚢疾患について何かご質問などある方は
ぜひ一度病院まで直接お越しいただき聞いていただければと思います。
それでは今日はこのへんで失礼いたします。