7月9日土曜日の診察時間です。犬さんのクッシング症候群について。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
7月9日土曜日の診察時間です。
午前中 9時30分 から 12時 まで(受付は診察終了30分前まで)となります。
よろしくお願いいたします。
今日からWJVFがスタートしました。
元々は関西地域が中心となった学会でしたが
最近はプログラムの内容がすごく充実してきています。
プログラム一覧を眺めているだけで
ワクワク感が止まらなくなるわけであります。
オンラインになってから毎度思いますが
絶対に全部のセミナーを視よう決意するのです。
ですが、なぜか学会が始まると緊急的な症例も多く来院する機会に恵まれ
結果的に、視聴期間ギリギリに追い込むかのようにセミナーを見まくらないといけなくなります。
今回こそは計画的に視聴していきたいと思います。
本日は犬さんのクッシング症候群についてのセミナーを受講しました。
おそらく日本の獣医内分泌学の第一人者的な存在であろう松木先生の講義です。
犬さんのクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)についてはご存知の方も多いかもしれません。
副腎という臓器からステロイドホルモンが過剰分泌されることによる症候群で
多飲多尿・多食・筋肉量の低下・皮膚症状・血栓症・肝酵素の上昇などを引き起こします。
クッシング症候群は治療しなくてもいいのでは?みたいな都市伝説が
数年前にも話題になった症候群でありますが
愛知県を中心とする動物病院の先生方が集めたデータによって
治療する方が生存期間が伸びることが判明しました。
結論、治療したほうが良いとされております。
ですが、クッシング症候群自体は誤診が非常に多い病気の一つでもあります。
クッシング症候群ではないのに治療薬を飲んでいるというケースが後を断ちません。
今回のセミナーでもありましたが
クッシング症候群の原則として
1.症状がある犬さんに対して慎重に治療をする。(定期的なモニタリングは必須事項です。)
2.症状がない犬さんには治療をしてはいけない。(何のために治療するかはわかりません。)
3.治療すべきでない犬さんには治療しない。(慢性腎臓病のある犬さんには治療は推奨できません。)
これらの3つが今回のセミナーの結論にもなっております。
それらを踏まえて
きちんと検査をし診断をつけ
臨床症状に着目しながら、薬の投与を始めていきます。
犬さんの内分泌疾患の中では最も多いとされる疾患であるため
遭遇確率も高く、きちんと診療を進めていかねばなりません。
今回のセミナーで個人的に目新しい情報として映ったものとして
副腎腫瘍によるクッシング症候群に対する内科的治療の情報がありました。
一般的に副腎腫瘍性のクッシング症候群の治療第一選択は外科治療になります。
ですが、色々な理由で手術ができない(orしない)場合もあります。
そうなった時に、内科的に治療をどうやって進めていくのか?というのがテーマです。
現在、クッシング症候群に対する治療薬として
トリロスタンという治療薬が最も一般的に使用されております。
このトリロスタンは、下垂体性クッシング症候群と比較すると
副腎腫瘍性クッシング症候群の方が低用量でも効果があるそうなんです。
また、副腎腫瘍のある子は血栓症による突然死の発生が怖いところではありますので
この血栓症に対する予防・治療も考慮した方が良いように感じます。
今回の講義の中でも
9歳の時に副腎腫瘍性のクッシング症候群と診断されたダックスさんが
結果的にその後8年近く長期生存したという例も挙げられておりました。
適切に内服薬を使用することで
臨床症状も抑えることができ、かつ良好な予後を得られる場合もあるということです。
というわけで、今回はクッシング症候群について少し書いてみましたが。
8月まで行われる本大会の中で新たにインプットした内容を
このブログでもどんどんアップしていきたいと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
とても勉強になりました! !
以前の病院では、クッシング症候群は外科手術ができないシニアの子は治療をしても
内服薬はリスクがある、シニアだから
見守って行きましょと言われました。
慢性腎臓病の子は治療できなくて、
副腎腫瘍は血栓症の予防と治療していくんですね!!
検査結果で治療できるなら、今より症状が悪化しない為にも治療して行きたいと思います。
大山先生よろしくお願いします。( •̀֊•́ )
>komomo様
ブログを読んでいただきありがとうございます。
僕自身も副腎腫瘍性のクッシング症候群に対する内科治療について
今回の講演はすごく勉強になりました。
今度の検査結果次第で今後の治療をどうしていくか、ぜひ相談させていただきたいと思います。
こちらこそよろしくお願いいたします。
クッシング症候群ではないのに誤診されて薬を飲み続けた場合、どのような症状が現れますか?
強いホルモンの薬を飲んでいますが、毛並みも悪くなり左右対称の脱毛、明らかに筋力も落ち、お腹だけぽっこりです。これはクッシングの症状に当てはまるみたいですが、治療しているのにどんどんクッシングの症状といわれるものに近付いていっています。治療前は多飲多尿だけでした。
多飲多尿で原因不明とされていたところ、セカンド・オピニオンでクッシングと診断され、現在治療を続けています。多飲多尿は治まっていて、元気は元気ですが、明らかに体力筋力がなくなり、毛も薄く、換毛も長らくしていません。爪も薄くなり反り返ってきたりと様々な不安要素があります。
これは治療が間違っているんでしょうか。
よろしくお願いします
>しおり様
ブログを読んでいただきありがとうございます。
みなとまちアニマルクリニックの大山です。
以下、コメントいただいた内容からのあくまでの推察とした上でお読みいただけると幸いです。
・クッシング症候群でないのに薬を飲み続けた場合
→クッシング症候群に対する薬物治療は、体内のステロイドホルモンの分泌を抑える方向に働きますので
副腎皮質低下症(いわゆるアジソン病)のような症状が発現する可能性はあるかもしれません。
具体的には、嘔吐・下痢などの消化器症状、元気消失、食欲不振、血液検査上での電解質異常などが挙げられます。
・強いホルモン剤を飲んでいます。
→どのような薬剤をどのくらいの用量・投与回数で飲まれているのかの詳細がわからないのでコメントしづらいのですが
治療開始後、多飲多尿が治まっているのであればクッシング症候群に対する治療効果はあるのでは?と推察されます。
確かに、左右対称性の脱毛や筋力低下、腹囲膨満などはクッシング症候群の典型的な症状です。
クッシング症候群以外にそれらの症状を引き起こすような原因がないのであれば
コルチゾール濃度などをモニタリングしながら、今投薬中の薬剤の用量や投与回数を再検討する必要があるかもしれません。
クッシング症候群の子達の中には、投薬を続けていても筋力低下が続く子もいらっしゃいますし
クッシング症候群による筋肉の硬化には決定的な治療方法がなく難しい場合もあります。
お話をお伺いする範囲での推察にはなりますが
他疾患の併発がないかどうかの検索と
クッシング症候群による症状を抑えるために薬剤の用量の見直しが必要かと考えました。
現在のかかりつけの病院の先生との相談の上、治療方針を決定していただければと思います。
よろしくお願い申し上げます。
見ておられないかもしれませんが
日にちがたっているブログにコメント大変失礼します。
クッシング症候群で色々検索しこちらにたどり着きました。
私もしおりさんと似ています。
元々元気なぽっこりお腹の犬で病院を受診したのですがACTH刺激検査でクッシング症候群と診断されましたが何回検査しても平均値にならなく、薬を投与してから段々元気がなくなり足越し立たない状態です。アドレスタンの量も検査の度に増量している状態です。何回も検査して今は8kgのイヌでアドレスタン30mmです。
本当にクッシング症候群なのか疑ってますし、また副腎からくるクッシング症であれば量は減らした方がよいのでしょうか??
私の県は田舎なので内分泌科の得意な先生がいなく
ある方に言わせると最悪な県とまで言われました。(知識、経験が足りないと)
先生の所に伺いたいのですが飛行機の距離で遠く犬の負担になります…
私は九州住みです。
福岡で内分泌科を得意とされる方を知ってらしたら教えて頂けたら幸いです。薬で苦しむ姿をもう見たくなくて。大変迷惑な相談かと思いますがよろしくお願いします。
>ぽかり様
コメントありがとうございます。
わんちゃんのクッシング症候群の診断は、臨床症状・血液検査所見・腹部超音波検査所見・ACTH刺激試験などの結果を
総合的に判断し、行っていくのが一般的かと思います。
また、これらの検査だけでは診断できないこともあり
補助として尿中コルチゾール・クレアチニン比の検査や低用量デキサメタゾン負荷試験などを実施することもございます。
ACTH刺激試験に用いるACTH製剤の投与により副腎に壊死をもたらす可能性などが指摘されており
アドレスタンの用量の決定には、最近ではACTH負荷試験を複数実施するのではなく
アドレスタン投与後一定時間を空けてのコルチゾール値より適切な用量を模索していく方法が取られるようになっております。
下垂体性のクッシング症候群なのであれば
体重が8kgで30mgの投与量ですと一日一回か二回かにもよりますが
効果が不十分なのであれば、投与量をもっと上げることもある用量だとは思います。
足腰が立たなくなっている症状がクッシング症候群による症状なのであれば
アドレスタンを使用し続けた方が良いようには思いますが
副腎腫瘍によるクッシング症候群なのであれば、低用量でのコントロールが可能なことが多いとは言われております。
ブログ上のコメントへの返信であり、個人情報な部分もあるかと思いますので
あまり詳しく返信することが難しいのですが
もしご相談していただける時間的余裕があるのであれば
こちらのメールアドレスに⇩直接メールを頂けると、もう少し詳しくお答えが可能になるかと思います。
minatomati.animalclinic@gmail.com
ご検討くださいませ。
minatomatiaht様
まさか対応して下さるとは思わずありがとございます。メールを送らせて頂きました。
多分私が何件も行った病院は先生程詳しくなく
またこちらから伝えると聞いた事ないと言う先生が多いです。
最初の投与の時もmm数が多く犬は下痢をしたので最初の投与は少なく始めるみたいですよと言った程です…これでも県内では1、2を争う病院なんです…先生みたいに勉強熱心な先生がいれば、疑問に思ってくだされば
助かる子も多いのにと思います。
副腎の件も伝えたいのですがソースは?となってしまうので病院を変えようと思います。
お忙しい中回答頂きありがとうございました 泣
>ぽかり様
メールにてご対応させていただいておりますが
こちらにも返信させていただければと思います。
クッシング症候群はわんちゃんで一番多い内分泌疾患でもあり
昔から知られている疾患です。
そのため臨床経験の長い先生方の方が自然と診察機会も多いのかなとは思いますし
ずっと同じ治療方針で上手くいっていたという自負も強くなるのかなと思います。
僕自身、内分泌専門でもなければ臨床経験が何十年もあるわけではありません。
なのでそんなに偉そうなことは言えませんが
自分自身が勉強する中で知り得た比較的新しめの知識をこうやってブログで書くことぐらいはできるのかなと思います。
ただの地方の1次診療の動物病院のブログではありますが
何かしら誰かのお役に立てば幸いです。
突然のコメント申し訳ございません。
メールも送らせていただいているのですが、不慣れでしっかり送れているのか不安な為こちらにもコメントさせていただきました。
愛犬(パグ×フレンチブルドッグのミックス12歳)に関してなのですが、7月ごろから多飲多尿があり本日8/30にACTH刺激検査を実施したところ数値が22となり、更に副腎をエコーで診察すると肥大も認められた為クッシング症候群との診断を受けました。
その際の血液検査に関して。
ALP : 241(1ヶ月前は170でしたので、徐々に上昇はしております) TCHO : 340 WBC : 5900 CRE : 0.50
ACTH刺激検査に関して。
pre コルチゾール 1.8
Post コルチゾール 22.4
上記のことや数値からも下垂体腫瘍性のクッシング症候群(PDH)である可能性が高いと思うのですが、そこで先生にお聞きしたい事があります。
8/5に予約をしているMRIもしくはCT検査で下垂体腫瘍の存在の有無、もしくは腫瘍のサイズの確定が下ると思うのですが、その結果として腫瘍が見つかり加えて腫瘍が比較的小さいものであった場合、どのような処置をするのが最適だと思われますでしょうか?
私的には外科手術かアドレスタン服用による内科治療かで迷っております。外科手術はあまり一般的ではないといった情報が散見されるのですが、一部(岐阜大学動物病院など)では外科手術をPDHに行い内科治療よりも良い予後が得られているといった文献も見受けられる為です。加えてアドレスタンの長期服用はあくまで分泌をコントロールするだけであって脳下垂体にできた腫瘍が大きくなるリスクなどもあるらしく、知見のない素人の私には判断しかねています。ですが、正直私としては大切な家族なのでやはり糖尿病などなってしまうリスクなどは排除したいですし、手術による根治治療を目指した方がいいのではないか…という思いが拭えません。
長くなってしまいましたが、先生の独断で構いませんので、先生としては
1.アドレスタンによる内科治療
2.脳下垂体の腫瘍を外科手術による切除を行う
のどちらがいいと判断しますでしょうか?
突然の長文でのコメントを送ってしまい重ねてお詫び申し上げます。
先生のご意見をお聞かせください。よろしくお願い致します。
メールかこちらどちらか先生のご都合のよろしい方にご返答頂けたらと思います。
>雅康様
コメントありがとうございます。
メールの方に返信させていただきました。
少しでもお役に立つことができれば幸いです。
クッシング症候群は犬さんで最も多い内分泌疾患であり
様々な併発疾患とともに悩ませてくることの多い病態です。
また、何かご質問などありましたらご気軽にお問い合わせくださいませ。
よろしくお願いいたします。
はじめまして。
クッシング症候群で検索して辿り着きました。
17歳の小型犬で僧帽弁閉鎖不全症と気管虚脱があり服薬中です。
腎臓のBUNの数値もここ半年位は63-79の間でちょっと高く、血圧もやや高めなのですが先日クッシングの疑いがあると言われました。
色んな合併症が出てくる恐れがあるが、唯一の利点は今食べてくれることで、
投薬治療を開始すると食欲不振になる事もあり、今困ってないのであれば無理に治療しなくても良いとは思うが、気管の強度も下げてくるので咳がもっと出やすくなるのがそこが難しいという説明も受けてきました。
シニア犬なので、治療した方が良いかどうかとても悩んで答えを出せずにいたのですが、
慢性腎臓病の子には治療は推奨しない、お薬が腎臓病を悪化させる恐れがあるということを知り、
このまま治療はしない(というよりできないですね)と決断する事ができました。
ただ一つ疑問に思った事として、そのお薬が腎臓に悪影響を及ぼすという事を知らない獣医さんもいるのかなと…。
そしたらちょっと怖いなとも思ってしまいました…。
悩んでる中こちらのブログに辿り着いて本当に良かったで。
他の記事も読みましたが大変勉強になる事が多いので定期的に読ませていただきます。
とても勉強熱心な先生で患者さんに寄り添って下さってるのがブログからも伝わってきており、近くなら絶対に診察していただきたかったです。
有益な情報、本当にありがとうございました!!