7月8日金曜日は休診日となります。認知エラーと陰性感情。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
7月8日 金曜日は休診日となります。
よろしくお願いいたします。
先日、診断エラー学についてのセミナーがありました。
診断エラー学とは
簡単に言うと
なぜ診断エラーがその時に起きてしまったのか?
どうすれば避けることができたのか?を
追求していく学問みたいです。
診断エラーを追求していくことは
医療行為を行う上で非常に大事なことだと思いますので
自分たちの苦い思い出から目を背けるのではなく、きちんと向き合わねばならないのだと思います。
なので、今回は先日のセミナーの内容をいくつかご紹介したいと思います。
人間の医学領域で調査されているらしいのですが
診断エラーの原因を解析した時に
一番多い原因って何だと思いますか?
実際セミナー時にアンケートをとった結果もそうだったのですが
どうしても医療従事者側は
自分たちの知識や技術の不足が原因だったと捉えることが多いみたいなんです。
ですが、実際の解析結果は違っておりまして
診断エラーのうち技術・知識不足は全体の1.8%だったことがわかっています。
獣医療にもそのままそれが当てはまるのかはわかりませんが
原因の半分以上を占めたのが、『認知エラー』とされています。
認知エラーというのは
簡単に言うと
なんらかの情報に対して、勘違いや間違った思い込みをしてしまうことによって起こるエラーです。
例えば
以前から咳を主訴に動物病院を訪れる機会が年に何回かあるわんちゃんがいたとしまして
今まで、気管支炎の治療をすれば良くなっていた過去があるとします。
そうした時に、今回の診察でも、どうせまた気管支炎だろうという思い込みなどを生じてしまうパターンなどがこれです。
心理学的には認知バイアスと言ったりしますね。
認知バイアスとは
物事の判断が、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象を指すと書いてありますが
『今までずっとこうだったから今回も一緒だろう』と考えてしまう感じです。
麻酔事故などでも同じことかもしれませんが
今まで何十年と大丈夫だったからといって、今日大丈夫という保証にはなりません。
思い込みや勘違いというものは時に命を奪う存在になりえます。
気をつけなければいけませんね。
あと、印象に残ったワードに『陰性感情』という言葉です。
この本には
『陰性感情とは
マイナス方向の感情、わかりやすくいうとほぼ嫌悪感に相当します。
患者診療の際に、何となく「いやだな」「難しそう」「関わりたくない」という思いを抱くこと
〜中略〜
医師が患者に対して陰性感情を覚えると、その場は硬直化し、診療の流れにも滞りが生じてしまいます。
我々は医師として患者に接していますが、当然のことながらひとりの人間としてもさまざまな感情を抱きながら生活しています。
診療中に患者に対して陰性感情を抱くことは「ある」と考えるのが自然です。
むしろ陰性感情を感じないように無理に抑え込もうとする方が不自然です。
大事なのは、そうした感情に巻き込まれることなく自分の姿を俯瞰すること、つまり自身が抱いている感情に自覚的であることです。』
と書かれてあります。
こんなこと書いたら怒られるかもしれませんが
獣医師も動物看護師も一人の人間です。
上記に書かれてあるような陰性感情というものは全くありません、と言えば嘘になると思います。
今日の昼
診察時間外に電話対応ができない、ということに関して
望月が説教を食らう場面がありました。
申し訳ないですが、僕にはなぜ怒られないといけないのかが理解できません。
動物病院は24時間常に対応しないといけないと考えられているのであれば
24時間対応してくださる病院さんに電話すればいいのにな、と素直に感じてしまいます。
百歩譲って、当院に足繁く通っていただいている闘病中の方であれば
こちらが対応できなかったことに関して、申し訳ない気持ちでいっぱいになるわけですが
ほとんど病院に来たこともない方に、怒られる筋合いはないように思います。
そうした患者様に対して陰性感情というものを抱くなと言われると
僕はそんなに人間できていないので、無理ですと答えます。
というより、そんなクレームを受けたのが今日初めてでありまして
当院に来ていただいている大多数の患者様は
僕からすると人間的に素晴らしい方ばかりなのでございます。
そうした方々の検査や手術を行っている時間帯に
わざわざクレームを言うために電話してくるような人の電話対応などできるわけがありません。
真面目に来てくださっている方々に失礼だと思います。
はい、ごめんなさい。
もう遅いかもしれませんが、これ以上書くと本当に怒られそうなのでもうやめときます。
話が少々脱線しておりましたが
こういう感情が診断エラーを生むという話でした。
気をつけなければいけませんね。
幸いにも僕たち動物医療従事者は
仮に上記のような変わった飼い主様だったとしても
犬さん・猫さんは悪くないし関係ない、というスタンスで治療にあたることができます。
その点、重罪人だろうと命を救うために懸命に闘わなければならない医療従事者の方々とは少し違うのかもしれません。
でも、やっぱりまだまだ僕も大人になりきれていないようです。
陰性感情というものに対する向き合い方をきちんと考えなければなりません。
そうした対策が診断エラーを防ぐことに繋がるのだと思います。
今日は動物病院のブログの内容としては少々倫理的に良くない点もあるかもしれませんが
本日はモッチーの結婚記念日なんです。
そんな日に理不尽な内容で説教される友人の代わりに
この場を借りて、少し反論させていただいたということでご容赦いただけないでしょうか。
すみませんが、このぐらいで本日は失礼いたします。
動物病院に勤務している獣医師です。「陰性感情」というワードで検索したら、貴院のブログが出てきました。
すごく共感します。おっしゃっていることはもっともだと思います。
しかし、悲しいことにそのことを理解してくださる飼い主様はほんの一握りです。こちらがどんなに頑張っても、少しのことでクレームになってしまうのは残念でなりません。
今はSNSや口コミサイトに、あること無いことを書かれてしまう時代なので、動物病院に限らず、開業している職業は厳しいですね。
一歩間違えば炎上しそうなことを、ブログに公開して頂き、有難うございます。
この記事を沢山の飼い主様に見て欲しい…
>マンパワーが欲しい先生
コメントありがとうございます。
先生のおっしゃる通り、少しのことがクレームへとつながりそれをこちらが恐れてしまい
動物病院側からは何も言えないという事態になっているように思います。
動物病院は医療行為を行うサービス業であるということがその原因の一つになっているような気もしますが
少しずつ理解していただける方の割合を増やしていくしかないかなと感じています。
こうやって発信していくことが動物病院を取り巻く先生方と患者様方のより良い関係作りにつながれば幸いです。
この度はコメントありがとうございました。