慢性腎臓病の犬猫さんの鎮痛と全身麻酔
ひょんなことから獣医さん向けに腎泌尿器のセミナーをやることになりました。
自分なんかがやって良いのかなと今でも思っていますし
大丈夫なんかなという不安も大きいですが
せっかくなので頑張ってみようと思っています。
そのテーマが『新しい慢性腎臓病のガイドライン』ということでお題をいただいたので
IRISガイドラインの2026版と
猫さんは、先月でしたっけ?発表されたiCat Careの2026をまとめれば良いのかなって思ってます。
正直、不安は拭えないのでちゃんと準備しようと思いまして
どうせ勉強するなら、このブログにも書いていけば良いんじゃないかなってことで今に至ります。
iCat Careガイドライン2026年の中には『鎮痛と麻酔』について
詳細に述べられております。
まとめますと
1.慢性腎臓病の猫さんでも、痛みを見つけて治療をする。
→活動性や食欲の低下を、加齢や慢性腎臓病だけで説明せずに
関節痛や歯科疾患などの可能性も評価する。
2.慢性腎臓病があることだけを理由に、必要な麻酔や歯科治療を見送らない。
→痛みを取り除くメリットと麻酔リスクを比較し、全身状態に合わせて実施を検討する。
3.NSAIDsは、安定した慢性腎臓病の猫さんでの使用は禁忌ではなく慎重に検討する。
→IRISステージ1-2の子達が検討対象で、ステージ3以上には注意が必要であり
特に脱水や低血圧・増悪中の猫さんでは使用を避ける。
4.『安定しているかどうか』は、検査値の推移と生活状態で判断。
→NSAIDs処方の文脈の中では、少なくとも2ヶ月間の体重・クレアチニンの安定と
高血圧などの併発病態の管理が目安となる。
5.鎮痛薬の評価では、効果と副作用の両方を確認する。
→動作や生活の質改善を確認しながら、食欲・水和状態・血圧・腎機能・尿蛋白などを
追跡評価する。
6.NSAIDs以外の鎮痛薬も腎機能に合わせて選ぶ
→ガバペンチンなどは慢性腎臓病において血中濃度が高くなるため、投与量や間隔を調整する。
7.麻酔前に、脱水・電解質異常・貧血・血圧を確認
→慢性腎臓病の重症度を把握し、補正できる異常を整えることが大事です。
過度な絶食・絶水も避け、常用薬の当日投与についても症例に応じた計画が必要。
8.局所・領域麻酔を活用し、全身麻酔薬の必要量を減らす。
→神経ブロックなどを組み合わせ、十分な鎮痛と循環抑制の軽減を図る。
9.麻酔中は腎血流を保ち、低血圧と輸液過剰を防ぐ
→ガイドラインの目安はMAP70mmHg以上で、低血圧の原因を評価し
麻酔深度・輸液・昇圧剤を適宜調整する。
10.覚醒後も鎮痛・保温・飲食再開・腎機能を評価し続ける
→周術期のNSAIDsの使用は可能な限り避け、他の鎮痛方法を活用する。
痛みや悪心を管理し、自発的な飲食再開を支えることが重要。
とまあ、こんな感じ。
当たり前と言われれば当たり前の内容が多いかもしれません。
『慢性腎臓病があるからという理由だけで必要な手術を見送らない』という文言が書かれてありますが
実際には、『腎臓の数値が高いから手術はできないと言われました』とおっしゃる
セカンドオピニオンの患者様は非常に多いのが現状だと思います。
そうやって来院していただいたほぼ全ての症例において手術対応させていただく中で
腎臓病が悪化したケースは今のところ当院では経験がないのですが
ガイドラインにこう書かれてあるからといって
『腎臓病があっても全身麻酔・手術は問題がないですよー』と説明するのは違うとは思います。
他の項目に書かれてあるような対策を十分に取ることが必要なのと
手術のメリットが麻酔のリスクを上回る場合に、全身麻酔・手術適応となるのだと思います。
その辺は、慎重にお考えいただいた上で全身麻酔をご検討ください。
慢性腎臓病があるので、必要な手術ができないと言われた犬猫さん。
もし何でしたら、一度当院にご相談くださいませ。
それでは。