尿細管障害マーカーに対する考察
『腎臓マーカーの効果的な使いどころ』的な講演を聴いておりました。
それを聴いて思ったこと
こういう使い方もありなんじゃなかろうかと思ったことをダラダラと書いていきたいと思います。
今日の話のメインは
尿中シスタチンBと尿中NAG・クレアチニン比という二つの検査です。
いずれも尿細管障害マーカーとしての検査項目になりますが
尿中シスタチンBは去年か一昨年か新しくリリースされた検査で
一年前ぐらいのブログにも書きましたね。
慢性腎臓病の進行予測にも有用かも?という報告も確かあったかと思います。
その時は、尿細管障害がわかったからと言って
具体的に何ができるのか?みたいな話も書いておりました通り
すぐさま院内で測れないことが少し足枷になっており
あまり測定機会に恵まれておりませんでした。
尿中NAG・クレアチニン比についても同じような感じで
犬さんでは以前から測定項目としてあったのですが
猫さんが測定できるようになったのは去年からでして
これに関しても測定している先生の話をあんまり聞いたことがなくて・・・
人間の方だと尿細管障害マーカーとして有用みたいなのですが
同じ慢性腎臓病と言っても
糸球体疾患の多いわんちゃんでしか測定できず
尿細管疾患の多い猫さんで測定できるようになったのが去年からということで
動物医療の方ではあまり用いられていなかったのでしょうか。。。
いや、僕が知らないだけかもしれないです。
ただ、『尿中NAGクレアチニン比 犬』とか『尿中NAGクレアチニン比 猫』とかで検索しても
動物病院さんのホームページとかがあまり出てこないので
そこまで一般的には実施されていないのかなあという印象の検査です。
で、今回の講演の中で
続発性尿細管障害というお話がありました。
簡単にいうと
犬猫さんで尿蛋白が大量に腎臓から漏出する病態が存在しますが
その大量の尿蛋白によって腎臓の尿細管が障害されてしまうんですよ、っていうお話ですね。
通常、尿蛋白に対しての治療としては
免疫介在性の糸球体疾患を除いては
テルミサルタンなどのARB製剤やACE阻害薬などの薬物治療と
腎臓病療法食などの食事療法が用いられるのが一般的かと思います。
その治療モニタリングの中で、上記の二つの尿細管障害マーカーを使えないだろうかという
僕の個人的な興味のお話が今回のテーマです。(前置きが長かったですね。すみません。)
つまり
糸球体疾患→タンパク尿が出る→尿細管障害が起こる(尿細管障害マーカーが上昇)→慢性腎臓病が悪化
の流れがあるのであれば
タンパク尿を下げるような治療を実施することで
尿細管障害マーカーも下がるんじゃないかな、とか
尿細管障害が激しいと慢性腎臓病の病態が悪化するわけなので
もっとタンパク尿に対する治療を強めた方が良いんじゃない?という指標にならないか、とか
そういうお話です。
というのもですね。
わんちゃんの蛋白漏出性腎症の治療において
通常はUPC(場合によってはUACも?)を指標として治療を実施するわけなんですが
一昨年?のIRISのガイドラインの改訂の中でもありました通り
なかなかUPCを正常値まで下げるのって難しいんですよ。
なので、IRISガイドラインの中でも
治療の目標は、最初のUPC の半分以下の数値になることを目指しましょうってなってると思います。
なので、最初の数値の半分を治療目標としてテルミサルタンとかを使っていくわけなのですが
このブログでもたびたびテルミサルタンの使用についての注意は書いております通り
テルミサルタンなどの薬剤は糸球体に対する血流量を下げることでタンパク尿を減らすわけなので
同時に腎機能を悪化させるリスクも孕んでいる薬剤なわけなのです。
簡単にいうと
テルミサルタンを増量させればタンパク尿は下げられますが、腎数値が上がるかもしれない。
減量すれば、腎数値の上がるリスクは下がりますが、タンパク尿は増加するかもしれない。
そういうバランスを見ながら使用しないといけない薬剤になっています。
で、同じタンパク尿の数値がUPC2.0とかだった場合に
これが実際にどのくらい尿細管にダメージを与えているかってわからないじゃないですか?
僕の個人の経験でも
UPCが高いせいか、どんどん腎障害が進むこと
同じくらい数値が高くても腎臓の数値はなかなか上がらない子がいるように感じています。
そこの差は、タンパク尿が与える尿細管へのダメージの差なのかな、と考えたわけですね。
つまりは、タンパク尿に対する治療を続けている犬猫さんの中で
尿細管障害マーカーの上昇が軽度であれば、そこまで治療を強化する必要はないけど
尿中シスタチンBや尿中NAGクレアチニン比の数値が大幅に上昇している子に関しては
もう少しタンパク尿を下げられるような策を考えないと
腎障害が進んでしまうんじゃないかなあって考えたわけです。
あ、僕が勝手に考えたって話なので一般論ではないですよ。
単なる個人的な意見です。
なので
UPCがなかなか下がらないなあ
けど、テルミサルタンの用量をこれ以上上げる?どうする?
みたいな時に
尿細管障害マーカーを測定するのは一つの参考になるんではないかなと。
ただ
同じ尿の検査にはなるので
タンパク尿の存在自体がシスタチンBやNAGの測定結果に影響する、とかだと
単純に尿細管障害だけを反映している指標とはならないかもしれないですが
テルミサルタンを使用することによって
UPCの低下だけでなく、尿細管障害マーカーが下がるような結果になるのであれば
腎保護として役に立っていると目に見えて言える気がしますし
逆にUPCは下がったけど、尿細管障害マーカーが上昇しているよ、的な状況の際には
薬剤性の腎障害に注意すべき状況と言えるのかもしれません。
なので、いずれにしろ
尿蛋白に対する治療として薬物治療を実施する際には
薬の投与前と投与後の経過を見るモニタリング指標として
UPCと合わせて尿細管障害マーカーを測定することは有用なんではないかと。
あくまでも補助的な役割にはなるでしょうが
尿中シスタチンBや尿中NAGクレアチニン比といった尿細管障害マーカーの検査は
より安全に、より意味のある薬物治療を実施する上では有用なマーカーになるかも
というお話でした。
あ、あくまでも個人的な考察なので、話半分で捉えてくださいね。
一応、AIと壁打ちもしましたが、理論上は筋が通るみたいですが
そんなにエビデンスがあるわけでもないので、その点だけご注意ください。
もう少し色々なデータや報告が増えれば、これらも変わってくると思います。
長くなってしまいました。
思いついたことをそのまま書いていて
半分ぐらいメモみたいに使用しているので、申し訳ありません。
それでは今日はこのへんで失礼いたします。