避妊手術の後に抗生物質はいらない
定期的に病院のウリみたいなのも書いておかないと
googleの検索に引っかからないみたいなので
たまには当院の宣伝でも。
昔の動物医療においては
去勢手術や避妊手術の後は
術後の抗生物質(抗菌薬ではなく敢えてこう表記しますね。)を処方されるのが当たり前でした。
去勢手術後は三日間。
避妊手術後は五日間、みたいなそんな感じです。
ただ、現在のガイドライン上
適切に術野を消毒し、滅菌環境下で手術を行う場合
健康動物に対する開腹手術である避妊手術に対しては
術後の抗生物質の投与は推奨されておりません。
そこに則って
当院におきましても
術後に抗生物質の処方をさせていただくことは無くなりました。
多分使わなくなって4年ぐらい経ちますが
術後に感染した例がいないので
今のところ問題ないように感じています。
別に抗生物質ぐらい使えばいいんじゃないですか?
ってなるかもしれません。
ただ、必要のない薬を使うのってどうなの?って話ですし
抗生物質を使用することにもデメリットはあります。
ここ数年で人間の方でも話題となっている腸内細菌叢。
腸内環境を整えることは色んな病気の治療としても大事になってきますが
その腸内細菌叢の破綻をディスバイオーシスと呼びます。
抗生物質の使用はディスバイオーシスを引き起こすんですね。
腸内の良い細菌たちを殺滅してしまうわけです。
抗生物質を飲んで下痢をしてしまう子なんかは
こういうのが関係しているんじゃないかと思います。
後は、抗生物質を使用することは
抗生物質に対して耐性を持つ細菌を増やすことにもつながってしまいます。
環境中においても、動物の体においても
人間の体においても
耐性菌が増えてしまうこと自体は
本当に抗生物質による治療が必要となった時に使えなくなっちゃうわけで
耐性菌まみれになって救命できなくなってしまうことだって
最悪の場合ありうるわけですね。
そういったデメリット・リスクを気にされない方にとっては
当院がやっていること自体、あんまり響かないのかもしれません。
引き算の医療とか言って
最小限の薬剤で最大限の結果を出す、みたいなのを一つの信条としておりますが
まあ響かない人にとってはどうでも良いことなんですよね。
なので、そういうのこだわってますよっていうのは
伝わる人に伝われば良いのかなって思っています。
麻酔とか疼痛管理に関しても同じで
手術した後はめちゃくちゃ痛がるもんでしょ、って思っている人に
いくら力を入れて痛みゼロを目指してます、って言ったところで
たぶん響かないですし
それだったら痛くても安いとこで手術してほしい人っていうのは
一定数いると思います。
考え方は人それぞれですしね。
でも、2ヶ月先の手術の予約が入るようになってきたことは
少しずつですが、当院の考え方を受け入れてくださる方々が
増えてきたのかなあ、とは思っておりまして。
そこは純粋に嬉しいですよね。
あそこの動物病院の先生たちの考え方ってちょっと変わってるんだよね
って言われるよりは
あそこが地域でのスタンダードなんだよ、って言われる方が
うちで働いてくれているスタッフにとっても良いと思いますし
こちらとしては良いと思って真剣にやっていることを
受け入れてくださる人々が増えるということは
社会的にも役に立っているのかなって実感が湧きますし。
せっかく動物病院やるなら誰かの役に立ちたいですもんね。
そんなわけで
今日は避妊手術後の抗生物質の使用について書いてみました。
超絶特殊な理由がない限り
避妊手術後に抗生物質を処方するような動物病院が
糾弾されるぐらいの世の中になれば良いなって
僕は結構本気で思っていますが
そんなことを書くから過激派とか言われるんでしょうか。
難しいです。
それでは。