考えることを放棄しない
血液検査でアルブミンの数値が下がると
それによって腹水が出現することがあります。
腹水が出現する目安となるアルブミンの数値はおおよそ1.5g/dlとされています。
先日、蛋白漏出性腸症と他院で診断されたわんちゃんがセカンドオピニオン目的で来院されました。
その子は
血液検査で低アルブミン血症が見つかり、蛋白漏出性腸症と診断を受け
そこからステロイドの投薬が始まったとのことでした。
ステロイドの服用により数値は0.9から2.6g/dlまで改善したものの
その後、ステロイドを減らすと数値はまた下がってしまい
それだけではコントロールが難しいとのことで、免疫抑制剤を追加処方されたとのことでした。
その後もアルブミンは2.0g/dlの数値にとどまり
上昇の兆しが見られなかったため、当院を受診されました。
当院受診の日もアルブミンの数値は2.0g/dlでした。
確かに蛋白漏出性腸症があるのかあ、という感じでしたが
お腹の張りが気になったので、腹部のエコーも確認させてもらいました。
そうすると、まあまあな量の腹水が溜まっておりました。
ここで、腹水の貯留している原因はなんだろう?ってなります。
確かに、アルブミンは低いです。
ただ低いと言っても2.0はあるし、これで腹水たまるか?ってなります。
右心不全もないし、腹腔内に明らかな腫瘍性病変もない。
腹水の性状的に、もしや門脈血栓からの門脈圧亢進症??ってなりました。
ですが、僕のエコーの技術では門脈血栓を見つけることができません。
(できる先生も世の中には存在するのだとは思いますが、僕にはできません。すみません。)
門脈血栓をエコーで確認はできませんが
蛋白漏出性腸症には血栓症のリスクがあること
すでに血栓傾向を引き起こすステロイドを長期間服用していること
腹水が出現する原因が他に見当たらないこと
などの状況証拠は揃っていることを患者様に説明し
試しにと言っては言葉が悪いですが
抗血小板薬であるクロピドグレルを処方させていただくことになりました。
そうすると、およそ三日ぐらいでお腹はスッキリしたそうで
エコーでも腹水が完全に消失したことを確認しました。
その後、食事を低脂肪食にしてもらい、ステロイドは減らしましたが
アルブミンは2.7g/dlまで上昇しました。
抗血小板療法がアルブミンの上昇に関与しているのかどうなのかは分かりませんが
結果的に、本人の状態はかなり良くなっています。
腹水があって、低アルブミンがあってってなると
どうしてもすぐに分かりやすい答えに飛びついてしまいがちになるのは
仕方がないとは思いますが
きちんと考えることも大事だなって改めて思いました。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。