この子に全身麻酔をかけることはできますか?
先日いらしたセカンドオピニオンの患者様。
もともと、僧帽弁閉鎖不全症の既往があり
現在も投薬中。
危ない状態で緊急的な対応をしてもらったとのこと。
で、今回当院にいらしたのはその心臓のお話ではなくて
別の症状に対して、どうすれば良いか?のご相談でした。
僕の結論としては
今の症状に対して確定診断をつけていくことを目指すのであれば
全身麻酔をかけて画像診断が必要じゃないかな、というものでした。
が、現在のかかりつけの先生的には
今の心臓の状態だと全身麻酔はちょっと難しいかな、というご意見みたいでした。
こういう時にどのようにしていったら良いのか
非常に難しいなって感じます。
僕としては、あくまで身体検査上と現在の内服の内容だけで考えるなら
心臓の状態自体はそこまでめちゃくちゃ悪いって感じじゃないんじゃないかなって思いますし
別に僧帽弁閉鎖不全症なんだったら
肺高血圧症とかになっているケースとかでなければ
そんなに全身麻酔自体を恐れなくても良いんじゃないかなと思うわけです。
ただ
心臓が悪い=全身麻酔はできない
みたいな思考になってしまう動物病院さんや獣医さんが多いのは事実です。
確かにリスクを取らないという点では
やらなければ何も起こらないわけなので
無駄に挑戦するより良いのかもしれません。
ですが
『この状態だと、どこの動物病院でも誰がやっても全身麻酔はできない』っていうのと
『うちの動物病院では全身麻酔はできない』っていうのは
全然意味が違うように思います。
特に侵襲的な手術をするわけではなく
画像検査のための全身麻酔なので
僕だったら
上記の子の場合、心臓の検査を実施して、内服を少し変更させてもらって
それから全身麻酔に臨むかな、と思うわけなんですが
別にかかりつけの先生に不満があったとかではなくて
ただ単に意見を聞きに来院された場合とかですと
あまり自分の意見ばかりを押し通し過ぎるのも良くないわけで。
そこら辺はすごく難しいなって思います。
当院が整形外科とか眼科とかが得意ではないように
動物病院や獣医師ごとに得手不得手は色々あるわけです。
よく遭遇するような内科疾患であったとしても
その診療技術については、動物病院ごとにかなりの差があります。
人間の医療現場のように
研修医制度がきちんと整っているわけでもないですし
コアカリキュラムなどが始まる前は
大学で教えていた内容についても差があると思われます。
卒後、どこの動物病院に就職し、どのくらいの期間修行をしたかにもかなり影響されると思います。
上記の例のわんちゃんの処方内容なんかを聞いても感じることですが
循環器とか麻酔とかの分野に至っては
その差がすごく大きいなあって思います。
去年、新しい犬さん用の利尿剤が発売された時にも
その薬の営業の方は、他の病院さんで
そんなの今ある薬で事足りてるから必要ないよー、と一蹴されたそうですが
そういう出来事が、そういう差を裏付けているように思います。
とは言うものの
消費者である動物のご家族にはその差が見えてはこないわけです。
こっちの先生は麻酔レベルはLv.4だけど、そっちの先生はLv.2だからこっちで手術する方が良いよ
みたいな感じで、ゲームの中みたいにスキルの熟練度が可視化されれば良いわけですが
そんなシステムはありません。
得意不得意なんて、病院側が言ったもん勝ちな部分もありますし
本当にその先生がすごいのかどうかなんかわからんわけです。
いやいや、そんなこと言ってたらどうしようもないじゃないですかあ、ってなりますが
実際どうしようもないんです。
結局は、自称〇〇が得意な獣医師みたいなのに結果が伴うかどうか、なのかなと思うので
自分自身もただの自称野郎にならないように
結果を出すことができて、結果にコミットできる
そういう獣医師であれるように頑張りたいとは思って勉強しています。
本当は、セカンドオピニオンの際の説明の仕方・言葉の選び方について
今日は書こうかと思っていましたが
何か違う方向に話が進んだので
それはまた明日にでもしようかと思います。
それでは、今日はこの辺で失礼致します。