身近な存在
診察の際によく耳にする言葉として
『ペットショップの店員さんに○○と言われたから』
『ブリーダーさんに○○が良いと薦められたから』
という類のものがあります。
他の動物病院で診断された内容に関するセカンドオピニオンを目的に
当院を来院される場合でも
『ブリーダーさんからそれはおかしいから他の病院に行った方がいいと思う』という
アドバイス的なものを聞いた上で来られることもあったりします。
そういったアドバイスが適切なのであれば
何の問題もないわけですけれども。
子犬さんは低血糖になりやすいから砂糖水を飲ませてください、とか
体格を大きくしないように子犬さんの時期から食事を制限されていたり、とか
明らかな先天性疾患だと診断しているにも関わらず認めようとしなかったり、とか
結構問題のあるケースも多いように思います。
でも、動物と生活を共にするご家族にとって
なぜか動物病院の獣医師の言葉よりも
ブリーダーさんとかペットショップの店員さんの言葉を
信用に値するとされてしまう場合が少なくありません。
何でなんだろう?って考えた時に
動物をお家に迎え入れるにあたって生じる色々な不安に対して
一番最初に解決してくれたり
一番最初に相談に乗ってくれたり
そういった身近な心強い存在だったりするからなんかなあ、と。
めちゃくちゃ冷静に考えてみてもらえれば
彼・彼女らは動物医療においては全くの素人であって
ご家族との相談内容によって生じる結果に対して
何の責任も負わないわけなんですね。
それでも、国家資格である獣医師の言葉よりも重く捉えられるわけですから
論理よりも感情が優先されてしまうんだと思います。
そうやって感情を優先してしまう状態の方にも
きちんと医療を提供するためには
そういった方々よりも身近な心強い存在に動物病院がなっていくしかないのかなと思うんです。
ただ
薬は絶対に使いたくないから気功だけ打ってください!みたいな人に
動物医療を提供しないといけないのかどうかは疑問ではありますよね。
動物病院を訪れる全員を相手にしないといけないのかな?と思うかもしれません。
でも、やっぱ自分たちも多少なりとも動物が好きでこの仕事に就いているわけでして
手術をすれば治って元気になる可能性が高い重篤な動物を目の前にして
息を吹きかけて気功を打っときました、とか
手をかざして波動を送りました、とか
そういう変なことは精神的に無理なわけです。
そうなると
やっぱりこっちを心から信頼してもらうためにも
何となく距離感の近い今の当院のスタイルみたいなんは
これからもずっと続けていきたいと思いますし
それが結果的には動物たちの予後の向上にも繋がるのではないかなと
ふと考えることがありました。
心の距離感が近い動物病院でありたいですね。
それでは、今日はこれくらいで失礼いたします。