高齢動物の麻酔・疼痛管理
今月のVETERINARY BOARDという雑誌の特集は
『高齢動物の麻酔・疼痛管理』です。
大学病院や二次診療施設などで
日々、色々な症例の全身麻酔を担当していらっしゃる先生方が
それぞれの自身の経験をケースレポートみたいに記してくれています。
当院にも
他の病院さんで年齢を理由に全身麻酔を断られてしまったわんちゃん・ねこちゃんが
相談に来られる場面は少なくありませんが
雑誌にこうやって特集されるということは
それなりに需要はあるのかなと思います。
動物も一昔前と比較して
平均寿命がかなり伸びました。
動物の高齢化に伴って
高齢動物に全身麻酔下で手術をしないといけない場面も
自然に増えてきているのだと思います。
なので、今回はこの雑誌の特集から
総論の概要だけをさらに簡潔に書いておこうかと思います。
高齢動物の麻酔
こんなことを注意して動物病院では手術に臨んでいるんだよ
ということが少しでも伝われば
ちょっとした安心材料になったりしないですかね。
総論のところにはこんな感じで書かれてあります↓
①
『高齢は病気ではないけど
各器官の予備能力は低下しているから
術前・術中・術後と絶え間なくモニタリングは必要だし
健康な若い子のデータをそのまま外挿できない。』
高齢動物に関わらず麻酔時のモニタリングというものは非常に大事だと思いますが
健康な子と同様には考えてはいけないという点から
より重要だということなんだと思います。
②
『高齢動物では呼吸器系機能・循環器系機能・腎泌尿器系機能が
それぞれ低下しているので
低酸素に注意し
アドレナリン受容体作動薬の事前準備が必要で
麻酔中の血圧管理を精緻に行うべき。』
健康な若い子でも上記の点には注意しないといけないと思いますし
薬剤の事前準備も麻酔時にはどの子でも行っておりますが
より気合を入れて臨まないといけません、という感じでしょうか。
③
『高齢動物は麻酔薬に対する感受性が増すことがあったり
薬剤の吸収遅延や代謝能力の低下によって
効果が持続してしまう可能性がある。』
全身麻酔に使用する薬剤の過度な使用には十分注意しないと
深麻酔という状況になってしまったり
麻酔からの覚醒が大幅に遅れてしまったりと
色々と問題が生じてしまいます。
慎重な投与量の調節が重要になってきますね。
ほんとざっくりしていますが、こんな感じです。
全身麻酔をかける以上、若いから絶対安全!というわけではないとは思いますが
高齢の犬さん・猫さんに麻酔をかけるときは
こんな感じでより綿密に麻酔計画を練って臨む必要があるかと思われます。
上にもありましたが
高齢は病気ではありません。
その子にとって手術が必要なものなのであれば
年齢を理由に手術を諦めてしまうよりも
全身麻酔をかけて手術に臨むことの方が望ましいケースは多々あると思います。
何かお悩みのことなどございましたら
一度、ご相談に来ていただければと思います。
よろしくお願いいたします。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。