明日の保証
瀬戸内寂聴さんはおっしゃいました。
『人は眠りにつくとき
明日の朝、必ず生きて目覚めるという保証は何もありません。
それでも人は眠るとき
たぶん明日も生きているのだろうと
のんきな気分で眠るのです。』
この仕事をしているとそう感じる時が少なくありませんが
本当に明日という日が今日と同じように来るかどうかなんて誰にもわかりません。
望月がアメブロの方で
当院がフィラリア予防薬のまとめ買いセール的なのをやらない理由を書いておりました。
その理由というものを
別の視点から考えた時
僕の中での、まとめ買いを勧めない理由は冒頭の文章が大きく関わります。
(*まとめ買いを否定するわけではありません。
もちろん当院でも数ヶ月分まとめて購入される方もいらっしゃいます。
ただ、病院としてキャンペーンとかセール品みたいに推奨することはしていない、ということです。)
そもそも当院は
犬さん・猫さんの生命に直結する分野に力を入れております、と公言しています。
1ヶ月なんとか無事に生きることができたら
また次の1ヶ月を目指しましょう、という子も少なくありません。
統計的には生存中央期間が残り3ヶ月の子にとって
1ヶ月ってめちゃめちゃ貴重な時間です。
その子が半年生きることができた。
なんとか1年後を迎えることができた。
場合によってはそれらは奇跡に近いです。
そういった奇跡の時間とは言うものの
別に健康な子だろうと病気の子だろうと
1ヶ月は1ヶ月です。
ただ、捉える側がどう考えるか?という違いです。
犬さん・猫さんの生命の期間は
人間のそれと比較するとやはり短いです。
そこはどうしようもない事実です。
およそ4倍ぐらいのスピードで歳を重ねていくわけですから、仕方ないのだと思います。
だからこそ、僕は犬さん・猫さんとの日々の1日1日を大切にしてほしいと思います。
今日この子の元気な姿を見れるってことは奇跡的なことなんだよって
すごく貴重な時間なんだよってことを
皆様にわかってほしいんです。
本日、心筋症の猫さんが息を引き取りました。
その子を初めて診させていただいたのが1年と10ヶ月前。
二年前のゴールデンウイークでした。
その時すでにうっ血性心不全による胸水貯留を認め、呼吸困難な状態でした。
隣の市から距離のあるところを頻繁に通院してくださり
ご自宅での投薬なども熱心に頑張ってくださいました。
そのおかげで
何度か危ない橋を渡りつつも
統計的な生存期間である3ヶ月〜1年というところを大幅に更新してくれました。
最初の頃から、状態が悪いこと、予後が良くないことはお話ししておりましたので
ご家族にとって1ヶ月、3ヶ月、半年、一年という期間は
とても貴重だったんじゃないかなと思います。
最後は僕の力及ばずで、もっと時間を延ばしてあげることはできませんでした。
そこは本当に申し訳ありません。
もっと精進いたします。
こういう子たちと日々接している中で
他の通院していただいている方にまで
考え方を押し付けるのは良くないのかもしれませんが
生きていることってすごいことなんだよ、っていうことを知っていただけると嬉しいなと思います。
あくまでも個人的な意見ですので
非難轟々かもしれませんが
フィラリアの予防薬を8ヶ月分とか1年分とか
まとめて買うことを推奨するということは
人間に当てはめた場合、単純に4倍としても
32ヶ月分とか48ヶ月分とか一気に薬を処方するということと同じなのかなと
個人的には考えています。
4年分まとめてお薬もらえるならラッキーと思える人には良いのかもしれません。
ですが
前回のW杯の時に何をしていたかをすぐに思い出せない僕にとっては
その間に何が起こるかわからないですし
次のW杯の時までの薬を出してもらうということは
個人的には希望しないです。
もちろん、人間の生活があった上での動物たちの生活だとも思っていますので
毎月取りに来るのはなかなか難しいというような状況もあるのは理解しておりますし
そういう方が3ヶ月分とか半年分とか
まとめて持って帰りたいとおっしゃるのは、そりゃあそうですよね、となります。はい。
ただ、病院として是が非でもまとめて購入してくださいと煽るような
まとめたら一回分とか二回分サービスしますということはやりません、ということです。
望月が言っていたように、そこで10%引くぐらいなら
引かずに患者様のために新しい医療機器を入れます。
たぶんうちはそういう動物病院です。
というよりも、僕がやるとすれば
まとめて買ったら10%オフとかにするのなら
最初から1ヶ月単位から10%オフにしますかね。うん。
1ヶ月単位で購入する方と、3ヶ月単位で購入する方と、半年単位で購入する方と
まとめて8ヶ月〜9ヶ月購入する方と
そこの線引きをするのは、あんまり平等ではないなと感じるので
それなら全員安くするか、全員値引きしないか、どっちかにしたいなと思います。
ここは個人的な考え方なので、望月とは意見が違うかもです。すみません。
まあ、動物病院の経営事情とかを考えれば
春にまとめて購入していただける方が売り上げも計算しやすいですし
シーズン途中でフィラリア予防をやめてしまう、という事態も避けやすいという考えもあるのだと思います。
そこらへんは考え方の違いですかね。
当院はどちらかというと
患者様の動物医療への意識の高さに依存している部分がありまして
そんなことしなくてもフィラリア予防をシーズン途中で離脱する人は見かけないですし
ワクチン接種のDMとか作っていないのに
皆様ご自身で把握されていて、きちんと接種されています。
いや、ちゃんとDM送れよとか言われそうですが
そこに割くことのできる人手もお金もないですし
そこに費やすなら動物医療の質向上にお金も人材も投資します。はい。
やっぱりそういう動物病院なんですね。
長々とまとまりのない文章ですが
生命の時間というものへの向かい合い方から考える
フィラリア薬まとめ買い割引を行わない理由について書いてみました。
安い=良いではなく
なぜその値段設定になっているのか?という点を考えていただけると幸いです。
今日はこのくらいで失礼いたします。