チギラノール・チグラート
タイトルは
犬さんの肥満細胞種に対する比較的新しいお薬の名前です。
海外ではすでに結構使われているみたいで
その使用感についての報告が新しく出たみたいです。
腫瘍に対して局所注射するためのお薬です。
肥満細胞種というものは
基本的には外科的切除の適応になる悪性腫瘍ですが
中には顔の周りや足先など
十分に広範囲を切除することが難しい場合もあったりします。
そのような場合に
今回の薬剤は活躍してくれるかもしれません。
今回の海外からの報告では
腫瘍専門医たちの多くも
肥満細胞種に対してチギラノール・チグラートの使用を推奨している内容で
初回投与後の完全奏効率68%
2回投与も含めると78%という高確率でありまして
これらのうち67%の犬さんが一年後も再発せずに完全奏功を維持したそうです。
結構素晴らしい薬の可能性がありますし
肥満細胞種のグレードや種類、発生部位によっては
第一選択がこの薬剤になる場合も出てくるように感じられます。
現状、日本での発売がないため輸入せざるを得ない状況であることと
薬剤の価格がかなり高価であるという点がネックなところではありますが
日本でもそう遠くない未来に発売されるはずですし
手術をしなくても済むことを考えれば、手が出せない金額ではないように感じます。
適応になる犬さんがいらっしゃれば
ぜひ試してみたい治療だなと感じました。
昨日・今日とがん学会のお話をしています。
こうやって新しい情報を得て
普段の診療にできるだけ導入を試みることで
日々の診察業務の中で救える命を増やしたいとは考えています。
でも、どう頑張っても難しい子は実際にいます。
医学は万能ではないんだなという事実を突きつけられて心は折れそうになるわけですが
そういう現実は僕らよりもご家族の方が絶対に辛いはず。
僕らにできることは
一緒にその子のために何ができるのか、何が最善なのかを考えること
ご家族の話を聞いてできる限り動物とご家族に寄り添うこと
それぐらいしかできないのだと思います。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますが
せめて頑張って病院を続けて、少しずつでも大きくして人を増やしていけば
ご家族に寄り添うことのできる時間帯は増えていくんじゃないかと思います。
自分達の無力さが嫌になりますが
できることを一つでも増やしていこうと思います。
今日はこの辺で失礼いたします。
それでは。