命への向き合い方
3日前の午前中に重症の猫さんが当院に来院されました。
緊急的に入院となり治療を開始。
水曜日・木曜日に来院された方は
診察の後ろで、ピコピコと音を鳴らす生体情報モニターが目に映ったかもしれません。
診察中にすぐに目に入るところに
重症な子を配置するのは本当は良くないのかもしれません。
そういう光景を見たくない患者様もいらっしゃるでしょう。
でも、当院はそういうことをしてしまっている動物病院です。
僕は音を聞くだけで、大体一分間にどのくらいの回数心拍が打っているのかというのがわかるので
できれば診察中もずっと音を聴いておきたい、というのがそもそもの目的でやっています。
早く異常に気付けなければ、入院している意味などないでしょう。
気づいたらケージの中で亡くなっていました、なんていう事態は言語道断です。
ただ、それには他の意味合いもありまして
今にも燃え尽きてしまいそうな状態から
懸命に病気と闘っている動物達の姿
そういう子がいるんだよ、っていうことを他の患者様にも知ってほしいという想いもあるのです。
もしかしたら、明日自分の家の子がそういう事態に急に陥るかもしれない。
今一緒に何事もなく平和に過ごせているのは奇跡的なことなんだよ、と
命の時間というものを貴重なものとして捉えてほしい、という想いも個人的にはあります。
結局、猫さんはその後1日半入院しました。
その間、ずっと心電図と血圧、SpO2、体温、意識レベルなどをモニタリングされながら
同時に一時間ごとぐらいにエコーをチェック。
一時間半から二時間ごとに血液検査で治療反応の確認。
本当にすごく頑張ってくれたと思います。
ですが、結果的に僕は負けました。
木曜日の朝までは順調にいっていたように思われたものの
そんなに甘くはなかったみたいです。
昼過ぎの時点で、脳内に不可逆的な変化が出てきたものと判断し
これ以上の予後はかなり厳しいため、ご家族と相談となりました。
猫さんのお顔を見ていただきながら、お話をさせていただき、夕方にご帰宅という形を取りました。
その後、その日のうちにご自宅で息を引き取られたとのことでした。
命を預けていただいたのに、助けることができず本当に申し訳ございません。
結果的に助けることができていないので、僕の力不足だと思います。
結局亡くなるんなら、僕が付き添った1日半はあんまり意味はなかったのかもしれません。
でも、それによってほんの少しでもご家族との時間が延びたり
一瞬でもご家族が猫さんの予後について希望を持つことができたのなら
この仕事にも意味があったのかもしれません。
答えはどっちなんでしょうね。
ただの自己満やん、と揶揄する人もいるんだろうと思います。
確かに助けることができなかったので、何の言い訳もできません。
でも、それは助けることができた時の喜びを知らないから
そういうことは言えるんじゃないかなとは思います。
いや、もう絶対無理でしょ、と誰しもが口にするような子が
元気になって尻尾を振ってくれたり、ご飯を嬉しそうに食べてくれたりする時って
何とも言葉にし難い嬉しさがあるもんなんです。
その嬉しい光景が見れる可能性が数%でもあるんだったら
全力でできる限りの治療をやればいいんじゃないか、というのが
当院の(僕個人の?)命に対する向き合い方です。
予後不良疾患に対して
安楽死を勧めるアメリカ的な獣医療を否定するような気持ちは全くありません。
確かに苦しむ延命なのであれば
安楽死というものは動物にのみ認められた選択肢の一つなのだと思います。
そこに異論は全くありません。
ただ助かる可能性があるんだったら僕は治療をしたいです、というそれだけの話です。
動物病院なんて世の中にたくさんありますし
病院によって考え方は様々だとは思います。
その方が患者様側も色々と選択肢が増えていいと思いますし
自分に合うところを探せる方がいいと思うんですよね。
何が正しくて何が間違っているとかではなくて
『命に対して真摯に向き合う』という意味が、人によって違うってことなんだと思います。
僕は、医療を齧っている人間である以上
やっぱりとことんできる限りのことはしてあげたいと思います。
こんなクラウドファンディングをやったりしている最中であったとしても
症例には真剣に向かい合っているつもりですし
知識のアップデートも心がけているつもりです。
助けられなかった子に対して、悔しいと言っているだけでは何も生まれません。
次に進むために色々と検討しなければいけないこともあると思います。
思ったことをただ書いていると、わけわかんなくなりますね。
みなとまちアニマルクリニックはそういう動物病院なんだなってわかってもらえれば大丈夫です。
応援よろしくお願いいたします。
それでは今日はこの辺で失礼いたします。
うちの子が夜中に呼吸が荒くなって夜間救急動物病院にかかって点滴や血液検査、レントゲンを撮って次の日にかかりつけ医であるみなとまちさんにかかる時すごく安心します。抗生剤を長く使わない療法やうちの子に負担をかけないように工夫してくれたり、何回質問しても優しく分かりやすく説明していただいて本当に不安なく預けられています。
小さな命と毎日向き合って頂いてありがとうございます。
犬は10数年の命と言いますが、最近は医療の進歩で長生きしてくれます。それは技術の進歩だったり機会の普及だったりしますが、みなとまちさんの大山先生や望月先生は犬さん猫さんの命に真っ直ぐに向かってくれて、うちの子と出会ってくれて、私たち飼い主と出会ってくれてありがとうございます!
本当に心から清水区にみなとまちアニマルクリニックが残るようできることや協力できることはさせて下さい!一緒に頑張らせてくださいねᵕ̈
>松永様
いつも暖かいお言葉をかけてくださり、ありがとうございます。
とわちゃんはいつも尻尾を振って喜んで診察に入ってくださり、自分から診察台に足をかけてくれて
すごく当院のことを気に入ってくださっている(と僕は感じています)ので
こちらも診察させていただく時は、すごく嬉しい気持ちにさせていただいております。
そうやってこちらが真剣に命と向き合うことができるのも、ご家族皆様のご協力があるからだと思っております。
こちらこそいつも当院を頼っていただいて逆に感謝してもしきれません。
これからも精一杯診察させていただければと思います。よろしくお願いいたします。