7月25日 月曜日の診察時間です。薬剤耐性菌について。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
7月25日 月曜日の診察時間です。
午前中は 9時30分 から 12時 まで
午後は 17時 から 20時 まで(受付は診察終了30分前まで)となります。
よろしくお願いいたします。
先日、子宮蓄膿症のわんちゃんが来院されました。
子宮蓄膿症は避妊手術を実施していないわんちゃんに起こる
文字通り子宮の中に膿が溜まってしまい全身の感染症となり死に至る疾患です。
朝一番に来院されたので
検査の後、すぐに緊急入院となり、全身管理の後
午後15時頃に開腹手術となりました。
そのまま入院治療となり、3日後退院となったわけです。
子宮蓄膿症は、細菌感染によって引き起こされる疾患になるので
基本的には感染症の治療である
感染源の除去と抗菌薬による治療が主体となります。
今回の場合、子宮の摘出により主な感染源を除去することができ
除去しきれない細菌に対して、生体が打ち勝てるようになるまで
抗菌薬の投与により、感染症による臓器障害(いわゆる敗血症)への発展を防ぐというようなイメージの治療となります。
ここで、抗菌薬を投与する際に何を選択するか?は非常に大事な判断となります。
一歩間違えれば、効果のない薬を選択してしまう可能性もあり
そうすると手術をしたとしても、術後に臓器障害が起こる可能性もあるかもしれません。
今回のわんちゃんは、当院に来るのは初めてであり
今までの投薬歴が不明であったので
比較的、治療範囲の広く、かつ耐性菌が少ないであろう薬剤を選択しました。
数日前の望月のアメブロでも挙げてありました、アンピシリン・スルバクタムという薬剤です。
そもそものアンピシリンという抗菌薬にβラクタマーゼ阻害薬という薬剤が配合された薬になります。
もちろん、薬剤を使用する前に
陰部から排泄されている膿汁を検体として細菌培養検査と薬剤感受性試験は提出しておりますし
採取した検体を染色し顕微鏡で確認し、原因菌は大腸菌が疑わしいという判断をした上で投薬を開始しております。
ここで、一つ面倒なのが
培養検査や薬剤感受性試験の結果が出るまでに数日どうしても必要な点です。
その結果が出るまで抗菌薬を使用しないわけにはいかないので
ある程度、原因菌を推測して薬剤を選択し、それが合っていたかどうかは後日わかるわけです。
で、今回はどうだったかというと
大腸菌は大腸菌でも、ESBLという拡張型βラクタマーゼを産生するやっかいな大腸菌でした。
βラクタマーゼというのは、ペニシリンなどに代表される抗菌薬を分解してしまう酵素です。
それの拡張型を持っている大腸菌なので
当然、色々な薬剤が効きません(耐性ががあります。)
この写真にあるRの抗菌薬は耐性、Sが感受性のあることを示しているわけですが
一般的に?子宮蓄膿症に使用されることの多い薬剤であろう
アンピシリン(ABPC) やエンロフロキサシン(ERFX)はRなんです。
今回使用したアンピシリン・スルバクタムは表で言う所のCVA/AMPCと同等のものを指すので
無事に感受性のある薬剤を選択できていたわけです。
が、薬剤の選択を間違えていれば危なかったかもしれません。
このような薬剤耐性菌が発生してしまう一つの原因が、抗菌薬の乱用です。
不必要な時に不適切な薬剤を使用することが、こういった事態を招いてしまいます。
薬剤耐性菌の発生は、わんちゃん・ねこちゃんだけでなく、人間にも悪影響を及ぼします。
このような事態は極力避けねばなりません。
今回は、薬剤耐性菌の発生という問題を身近に感じた一件でした。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。