6月8日水曜日の診察時間です。心臓病・循環器疾患についてのセカンドオピニオンも受け付けております。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
6月8日 水曜日の診察時間です。
午前中は 9時30分 から 12時 まで
午後は 17時 から 20時 まで(受付は診察終了30分前まで)となります。
よろしくお願いいたします。
今月号の雑誌SA Medicineの特集は
『抗てんかん発作薬』についてなのですが
それとは別の連載の中で、内科と外科のボーダーラインはどこか?みたいなものがあります。
その連載の今回のテーマが、わんちゃんの僧帽弁閉鎖不全症でして
どこまで内科治療をして、どこから外科治療を薦めるのか?みたいなことが議論されています。
そこに書かれてある内容の一つに
実際に肺水腫を発症した症例の生存期間中央値は214日や267日という記述があったり
内科的治療が奏功した場合でも一年程度が余命と思われる、と書かれてあります。
あくまで中央値なので
この数字よりも長く生きられる子が半分いるということになるわけですが
逆に言えば、半数の子が7〜8ヶ月以内に亡くなってしまうわけです。
なので、この雑誌の中では
そういった肺水腫を経験したわんちゃんに関しては、外科手術を提示することを推奨しています。
が、なかなか実際にはそう話は簡単ではありません。
僧帽弁閉鎖不全症の対する手術を当院から紹介するとした場合
新横浜もしくは名古屋の動物病院さんへのご紹介となります。
実際に当院の患者様の中でも、外科手術を経験されている方も数人いらっしゃいますが
皆様、新横浜の動物病院で手術をされております。
そういった距離的な問題が解決できて
かつ心臓外科手術に対しては、それなりの費用がかかってきますので
その問題点を解決できる場合はオススメするようにはしております。
実際には、手術の話を提示しても
多くの患者様は内科療法を希望されます。
なので、僕個人の戦いとしては
先ほども申し上げました生存期間一年という壁を越えらえるかどうかが
まず一つの勝負となります。
では、当院の場合どういう成績かと申しますと
確かに、一度、心原性肺水腫を経験した犬さんが
一年足らずで亡くなってしまうケースもあります。
が、多くの場合は、1年以上経過している子が多い印象ではあります。
なにぶん、まだ静岡で診察を始めて2年ちょっとしか経過していないので
症例数はそんなに多くはないですが
長い子だともうすぐ丸2年が経過する子もいらっしゃいます。
前の病院に勤務していた時は、もっと長い経過の子もたくさん経験していたので
正直7〜8ヶ月ってことはないんではないかとは感じています。
ただ、2年以上生存している子の中には
何度も肺水腫になっていたり
消化器症状を度々呈していたりすることが多いです。
そういった症状に対して、より迅速に適切な対応をしなければ
そこで命を落としてしまう場面も多いと感じております。
そのような兆候をいかに早く発見できるか?
症状を示した時にいかに早く病院に連れて来ていただけるか?
病院に来たわんちゃんにどういった対応ができるか?
これらが予後を大きく変える原因になっていると思われます。
ご自宅での普段のモニタリングが一つのポイントだということですね。
ちょっと下痢しているけど
ちょっといつもより食べる量が少ないけど
ちょっといつもより呼吸が速い気がするけど・・・
2、3日様子を見ておこう。
それが心臓病の進行したわんちゃんにとっては命取りになることも少なくありません。
健康な若いわんちゃんであれば、上記のような症状でも様子を見ていいことも多いかもしれません。
ですが、一度肺水腫を経験していて
現在も結構な量の内服薬を飲んでいるわんちゃんに関しては
一度の様子見が運命を決めると言っても過言ではないと感じています。
その点をきちんとご家族の方にご理解いただける説明ができるか?
そこも内科医としての腕の見せ所の一つだと僕は思います。
もちろん、限られた循環器薬をいかにうまく使いこなすか?
どういった検査項目を基準にどういった治療を行うか?というのも大事ではあるのですが
心臓病を抱えるわんちゃんとの過ごし方を伝えること、も同じぐらい大事だと思います。
僕の理想は
僧帽弁閉鎖不全症によって肺水腫を経験したわんちゃんであったとしても
投薬やご自宅でのモニタリングなどのご家族の協力のもと
なんとか寿命を全うさせてあげることです。
寿命というのは何ですか?と聞かれれば
また違う議題について論じなければならなくなるので、ここでは割愛させていただきますが
心臓病が原因で亡くならないようにする、ということです。
僧帽弁閉鎖不全症はわんちゃんで最も一般的な心臓病ですし
臨床獣医師でこの病気を診たことのない先生は絶対にいないと断言できるぐらい多い病気です。
だからこそ、診る先生によってわんちゃんの予後は大きく変動するように感じています。
循環器疾患を専門で診ている獣医師の先生方は
同じ薬剤を使用するにしても、一般的な獣医師とは使い方が全然違います。
そういう違いをあまり考慮することなく
全部ごちゃ混ぜで考えた時
先ほどのデータのような数字になるのかなとは思います。
そう考えると、僕自身もまだまだ頑張らねばなりません。
もっともっと病態に応じた薬剤の処方方法を検討できるように努力したいと思います。
新しいエコーもほしいですね。
誰か買ってくれないかなあ笑
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。