2月10日木曜日の診察時間です。犬と猫の膵炎について。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
2月10日 木曜日の診察時間です。
午前中は 9時30分 から 12時 まで
午後は 17時 から 20時 まで(受付は診察終了30分前まで)となります。
よろしくお願いいたします。
今月号の学術雑誌 CLINIC NOTEの特集は
『膵疾患を極める〜病態から理解して適切な治療につなげる〜』です。
今日は、この中でも特にここ数年、過剰診断が問題になっている
犬さん・猫さんの膵炎について、本雑誌を元に書いていきたいと思います。
今現在の日本全国において
『院内のリパーゼの値が高値だったので膵炎と診断し、低脂肪食の給餌をスタートしました!』
みたいな診断・治療をなされているわんちゃんが非常に多いと、筆者の先生は書かれております。
実際に当院にいらっしゃる患者様の中にも
過去に他の動物病院で膵炎と診断されました
なので今も低脂肪食をずっと続けております、という患者様の数はかなり多いです。
ただ、実際にその中で本当に膵炎だったであろう症例というのは
お話をお伺いする限り、ほとんどいらっしゃらないのが現実です。
というわけで、今回は膵炎の診断についてフォーカスして書いていきたいと思います。
歴史的な背景として
Spec cPLやSpec fPLなどの膵リパーゼの測定系が多くの動物病院で実施されるようになりました。
それによって実際に膵炎を診断できる確率は大幅に上昇したものと思われます。
ただ、その一方で検査系の普及によって膵炎じゃないのに膵炎だと診断されてしまう機会が大幅に増えてしまったのが今現在です。
この雑誌にも書いておりますが
わんちゃん・ねこちゃんの膵炎の診断というものは血液検査だけで行うものではありません。
その点を皆様も知っといていただきたいなと思います。
じゃあ、実際は膵炎の診断ってどうするの?という話になるかと思いますが
現在、わんちゃんの膵炎の診断は世界的に認められたゴールドスタンダードな検査というものが欠如しております。
つまり、『この数値が高ければ膵炎です』とか『この所見があれば膵炎です』とか言える絶対的なものがないということです。
では、どうやって膵炎を診断していくのか?
現実的な膵炎の診断方法が今回の雑誌にも記載されております。
血液検査にて膵リパーゼの数値が高いからそれで膵炎です、は先ほど申し上げました通り間違いです。
ここ数年の膵炎に関して報告をしている学術論文の中では
以下の臨床診断基準を満たしているものを膵炎とする傾向にあります。
⒈少なくとも二つ以上の消化器症状(食欲不振、嘔吐、下痢など)があること
⒉Spec cPLの上昇
⒊超音波検査で膵炎に好発する所見が存在すること
特に1番の消化器症状が存在することは必須の要件でありまして
冒頭で述べた、過剰診断の原因となっている
臨床兆候を伴わないSpec cPLやv-LIPの上昇は、膵炎の臨床診断基準を満たしていない
ということになります。
血液検査の数値を追うのではなく
一番大事なのは消化器症状ということです。
こうやって書いていると、当たり前じゃん!と言われてしまうかもしれませんが
それが当たり前じゃないのが、問題なんです。
急性膵炎は、特にわんちゃんにおいてそれほど珍しい病気ではないとは思います。
ただ、静岡市の動物病院の来院件数から考えれば
一週間に一回は膵炎の子が来るよー、みたいな状況には普通に考えてならないと思います。
本当の急性膵炎はもっと怖い病気です。
重症症例では、高度な集中治療管理が必要となる疾患です。
適当に低脂肪食を与えてたら治りました、みたいなのはかなり軽症な部類に入るか、膵炎ではなかったのだと思います。
こうやって書いても、今現在、血液検査だけで膵炎を診断している獣医師の先生がここを読んでくれるとは思いませんので
どちらかというと飼い主様への周知のためのブログということになるのですが
とりあえず、言いたいのは
膵炎を血液検査だけで診断している動物病院よりは
問診・身体検査・血液検査・腹部超音波検査などを組み合わせて
系統的に診断してくださる動物病院を選ぶ方が良いと思います
ということです。
後者の病院の方がたくさん検査をされてお金を取られた、みたいなことになってしまうのかもしれませんが
結果的に、膵炎じゃないのにずっと低脂肪食を与えられる方がお金はかかるように感じます。
その点をご理解いただいた上で、病院を選んでいただけると
少しは地域の動物医療のレベルも上がっていくのかな、と思います。
それでは、今日はこのへんでおしまいにしたいと思います。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。