11月15日月曜日の診察時間です。腎臓病の治療薬について(続き)。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
11月15日月曜日の診察時間です。
午前中は 9時30分 から 12時 まで
午後は 17時 から 20時 まで(受付は診察終了30分前まで)となります。
よろしくお願いいたします。
昨日のブログには
先日のわんちゃんの腎臓病治療薬についてのセミナーを受けた感想みたいなのを書かせていただきました。
ただ、書いているうちに内容が当初書かせてただこうと考えていたこととは
別の方向へ向いてしまったので
今日は昨日+αで書かせていただこうと思います。
(昨日の記事を読んでらっしゃらない方はもしよろしければこちらからお願いいたします↓)
本日のテーマはベラプロストナトリウムについてです。
商品名ラプロスというお薬は、腎臓病について調べたことのある方なら
特に猫さんの飼い主様はご存知の方が多いかもしれません。
ラプロスは2017年に発売され
発売当初は、猫の慢性腎臓病の治療薬ができた!とニュースになったぐらい期待されていたお薬です。
現在も多くの動物病院で処方されている薬になります。
ただ、このお薬、使用する派の先生方と使用しない派の先生方がいらっしゃいまして
腎臓病を専門に診ている先生の間でも意見が分かれているようなお薬です。
先日受講したセミナーの講師である日獣大の宮川先生は完全な否定派であるように思います。
犬さんにも猫さんにも使用しないとおっしゃっていたので。
その否定される理由はいくつかありまして
まず、このラプロスが認可されたきっかけとなっている治験自体のデータが
ラプロス投与群と非投与群で、そもそもの数値に差があったり
半年間しか追跡調査していなかったりと、きちんとしたデータとは言いにくいということが挙げられます。
投薬も何もなしで、半年間慢性腎臓病の悪化が認められないことなんてよくあることなので
別に投薬しなくても変わらなかったんじゃないか、ということですね。
また、このラプロスの成分名、ベラプロストナトリウムというものが腎臓病に効果があると
推奨している医師・獣医師の先生は、東レさんと仲が良いそうです。
そうではない先生方で、ベラプロストナトリウムを推奨している先生方は見たことないとおっしゃっていました。
ラプロスを製造しているのが東レさんなので、怪しさは募るばかりという感じです。
このような感じで宮川先生はラプロスを使用しない派だということでしたが
先日の獣医学フォーラムではラプロス推奨派の先生のセミナーもありました。
ただ、内容が稚拙すぎると言いますか
データがきちんと揃っていなかったり
薬の適応基準を明確にしていなかったりと
かなり曖昧な発表に終わっていました。
実際にベラプロストナトリウムの投薬によって予後が改善したかどうかも甚だ疑問な発表でありました。
もう少しきちんとしたデータを収集してくれて
きちんとモニタリングしてくれれば、ちゃんとした結論が出せるのですが
今のところ何とも言えないなと感じました。
僕自身に関しましては
もちろんラプロスの使用経験もあります。
が、そこまでの良い結果というものに出会えたことがありません。
まだまだ数が少ないだけなのかもしれませんし
症例によっては良くなったという話も耳にはしますので
全く効果のない薬ではないのかもしれません。
ですが、推奨派の先生方がおっしゃるほどの効果はおそらくないと考えています。
なので、自分の中でのラプロスの適応というのは
慢性腎臓病の猫ちゃんだけに限りますが
蛋白尿や高血圧、リン・カルシウム代謝異常など
治療介入ができそうなことが、現時点ではないけれども
何か腎臓病に効果のある可能性のあることができないか?と言われた時の選択肢かなと考えています。
もちろん投薬後に逆に腎機能を落とす可能性もゼロではないので
きちんとしたモニタリングをするとした前提で投薬は開始しますし
途中で、脱水や腎数値の悪化などが起こった場合には、投薬は中止するほうが良いと個人的には考えます。
高価な薬ではありますし
慢性腎臓病の猫ちゃん全員に出しましょう、と言えるような薬では決してないのかなと考えています。
もっと他にやるべきことはたくさんあるんじゃないかなと。
あと、わんちゃんに関しても
ラプロスを出される先生がいるみたいですが
僕自身、腎臓病のわんちゃんに処方した経験がありません。
というよりも怖くて使えません。
ベラプロストナトリウムは犬さんの肺高血圧症の治療薬として使われることもあるお薬です。
その時に使用する用量と
猫ちゃんの慢性腎臓病の用量が
あまりにもかけ離れているため
そんな量でわんちゃんに使ったらどうなるのか、と想像すると怖くて使えないという感じです。
もともと、猫ちゃんで認可を得ている薬ですし、危険なのでやめた方が良いんじゃないかなという意見です。
ラプロスに関してはこのくらいになりますでしょうか。
今日のブログに関しては、私見で書いている部分もありますが
ラプロスを現在投薬中の飼い主様には、その薬の立ち位置を知っといていただきたいな、という思いで書きました。
慢性腎臓病の猫ちゃん全員に推奨できるような薬かと問われれば、疑問符は取れないと思います。
昨日書いたACE阻害薬やARB製剤もそうですし
腎臓病療法食も同様ですが
きちんと使用すれば効果をはっきするお薬や食事であっても
適応を間違ってしまうと、逆にその子の命を縮めてしまうことになりかねません。
大切なのは、その子の状態をきちんと把握すること
それに加えて、その状態にあった治療選択肢を選ぶことだと思います。
繰り返しになりますが
血液検査だけで、腎臓病の治療薬を選択することはできません。
画像検査、尿検査、血圧測定を合わせて行うことで初めて
薬を使うかどうかというお話になります。
犬さん・猫さんの慢性腎臓病のことで何かご質問などある方は
ご気軽に当院までお越しください。
それでは、今日はこのへんで。