10月8日金曜日。通常診察はお休みとなります。腎臓病の診療に力を入れています。静岡市清水区の動物病院、みなとまちアニマルクリニックです。
こんばんは。大山です。
10月8日 金曜日は 通常診察がお休みとなります。
よろしくお願いいたします。
僕が静岡に来てここの動物病院で仕事をするようになってから
今まで自分がやってきた治療方法と違う点は色々とあるのですが
その中でも、大きく違うものの一つに輸液療法があります。
いわゆる点滴での治療です。
特に慢性腎臓病の猫ちゃんに対する、輸液療法に関しては
獣医師になりたての頃から臨床5年目ぐらいまでと
今とでは大きく考え方が違っています。
IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ分類では
ステージ4のCre(クレアチニン)の数値は5.0mg/dl以上とされております。
ですので、クレアチニンが7とか8とかまで上昇している子は
慢性腎臓病の中でもステージがかなり進行しており末期的であることも多いかと思われます。
以前の僕だと、そういう子達には
乳酸リンゲル液の静脈輸液や皮下輸液を行い水分を入れることで
腎臓の数値を下げる治療を行い
数値の低下とともに
皮下点滴の通院頻度を少なくしていくという治療方針を取ることが多かったように思います。
それはそれで現在も同じようにされている病院さんも数多くあると思いますし
脱水がある子に対して、皮下点滴を行うのは適切なように思います。
ですが、『脱水』という言葉にも細かくは細胞外脱水と細胞内脱水というものがありまして
一般的に皮下点滴に使用される乳酸リンゲル液や生理食塩水などは
このうちの細胞外脱水しか解消できません。
この点が自分の中では引っかかるところでして
皮下点滴をすると動物達は飲水量が減ってしまいますし
細胞内はどんどん脱水していってしまいます。
そこで、ここ1年ぐらいの間に
慢性腎臓病ステージ3、4以上の猫ちゃんで
食欲があまりないけど、連日の皮下点滴で細胞外脱水は解消されているような症例に対して
静脈から細胞内補充液(点滴に糖が含まれている液体になります)を点滴するという
治療をやってみた子達が数例います。
細胞内補充液は糖分が含まれるので一般的には皮下点滴としては使用することができず
血管の中から入れないといけないので
病院で朝から晩まで預かって半日かけてゆっくりと点滴を流します。
皮下点滴なら5分ぐらいで済むところが
治療に半日かかるわけなので
その分、時間も費用もかかるわけなので
猫ちゃんや飼い主様には負担のかかる側面もあるのかもしれませんが
それに見合うだけの効果はあるように感じています。
実際、BUNが140over 、Creが7とか8とかある食欲が数日全くなかったような20歳を超える猫ちゃんが
以前のようにご飯を食べてくれるようになる様子は
乳酸リンゲル液の皮下点滴による治療だけでは見られなかったように思います。
やはり細胞内脱水を補正することも大事ということですね。
昔は、腎臓の数値が高くなったら
皮下点滴に通うか、自宅で皮下点滴をするしかないよ、みたいなことを言われることが多かったように思います。
もちろん、完全な間違いではないのだと思いますし
皮下点滴が必要な子達も多いです。
が、旧態依然とした治療を延々と続けるよりも
何か他にできることは本当にないのか?
と、少し穿った見方で物事を観察し続け
思考を繰り返し続けることが
医学の進歩につながり
結果として患者様の利益に繋がるのだな、と感じました。
どんだけ歳を取ったとしても
そういう姿勢だけは持ち続けたいなと思います。
それでは、今日はこのへんで。