猫さんの先端巨大症(高ソマトトロピン症)
『意外と多い猫の先端巨大症』という講演を聴きました。
今日はその話をネタに書いていこうかと思います。
先端巨大症は下垂体に腫瘍が発生することにより
成長ホルモンの分泌が過剰となり
結果としてIGF-1という物質が過剰に分泌された結果
臓器の肥大や骨の伸長や肥大が起こる病気です。
僕らが臨床現場で出会うことが多いとされるのは
糖尿病の猫さんの治療中に
インスリンで治療をやりましょう、ってなったは良いものの
なかなかインスリンの濃度を上げたり、製剤を変えたりしても
コントロールが上手くいかないなあと
いわゆるインスリン抵抗性という状態に悩まされた際などに
基礎疾患としてもしかしたら他に疾患が隠れているせいで
コントロールがし辛いのではないか、となった時です。
猫さんのインスリン抵抗性の原因としては
・重度の肥満
・慢性腎臓病
・慢性膵炎
・口腔内または尿路感染症
・クッシング症候群
・甲状腺機能亢進症
などが挙げられますが
この中の一つに、今回の先端巨大症が挙げられるわけですね。
先端巨大症とは文字通り
頭部や足先が肥大してくることからその名称がついたみたいですし
大学の授業とかでもそう習いました。
ただ、実際には
先端巨大症の猫さんの75%は見た目が普通だそうで
疾患名も高ソマトトロピン症の方が適切じゃないかってなってきているそうです。
あと、比較的珍しい病気みたいな感じで習った気もするのですが
実際にはそんなこともなく
2015年の報告では
1221頭の糖尿病の猫さんのIGF-1を測定されており
319頭(26.1%)でIGF-1が高値を示したそうです。
ただ、IGF-1高値だけじゃ先端巨大症とは診断できないでしょ?みたいなツッコミもあるかと思うので
この研究ではCT検査もきちんとされており
IGF-1が高かった猫さんの95%で下垂体腫大が確認されています。
その後の2025年の研究でも
糖尿病の猫さんの先端巨大症の罹患率はおよそ20-25%程度と報告されており
先端巨大症は決して稀な疾患ではないということがわかります。
実際、今、当院の阪口先生が診察している糖尿病の猫さんは
IGF-1が高く先端巨大症によるインスリン抵抗性が疑われており
カベルゴリンによる治療も並行して実施しております。
この先端巨大症という病気は
臓器腫大が見られることがわかっているのですが
具体的には
肝臓腫大が63%、副腎腫大が53%、膵臓腫大が88%という報告がありまして
副腎腫大はクッシング症候群やん!ってなりますし
膵臓腫大は膵炎があるのかな??ってなってしまいます。
クッシングも膵炎も上記の通りインスリン抵抗性の原因となる疾患でもあるため
鑑別が難しいところですね。
また、心筋症のセミナーのところでも登場しましたが
先端巨大症の猫さんには、左心室が肥大することがあることも知られており
肥大型心筋症かな?ってなった猫さんの一部には
先端巨大症の子もいるであろうことが想定されます。
心筋肥大を認めたら、IGF-1を測定することも考えないといけませんね。
あとは、診断をIGF-1だけに頼ることによる落とし穴みたいなものもありまして
先端巨大症以外の状況でもIGF-1濃度が上昇する可能性があることが報告されております。
それは以下の通り↓
・コントロール不良の糖尿病猫さん
・インスリンの長期投与
・肥満猫
・慢性腎臓病
といった具合なのですが
特に上の二つなんかは
もともとインスリン抵抗性の原因として先端巨大症を疑うって話だったにもかかわらず
インスリンを長期投与することでもIGF-1が上昇してしまうなら
結局、この疾患があるのかがわからないじゃないですか、となりそうですよね。
なので、やはりきちんとした診断には
CTやMRIなどによって下垂体の腫大を確認することが重要みたいです。
ただ、稀に下垂体腫大のない先端巨大症の子の報告もあるみたいなので
こちらも注意は必要とのこと。
で、肝心の治療になりますが
第一選択は、できるのであれば放射線治療が適応になるみたい。
施設によっては下垂体切除も実施しているみたいですが
こちらはかなり限られるかと。
放射線治療が難しい場合は
ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドによる治療が昔は行われていたみたいですが
こちらはどうやら微妙なようでして
最近では長時間作用型のソマトスタチンアナログであるパシレオチドという薬剤があるようで
こっちは効果が期待できるみたいです。
ただ、薬価が28万円となかなかに高価な薬剤なので実際は難しいのかもしれません。
そこで現実的な選択肢として出てきたのが
ドパミンD2受容体作動薬であるカベルゴリンですね。
こちらに関しては
効果があったよという報告と効果があまりなかったよという報告が混在しており
めちゃくちゃ効きますというお薬ではないものの
試してみる価値のある薬剤とはされております。
阪口先生の診ている猫さんも実際に血糖値のコントロールが良くなったみたいですし
一定の効果はありそうな感じです。
というわけで
あまり一般的には聞き慣れない病気かもしれませんが
今日は先端巨大症(高ソマトトロピン症)について書いてみました。
糖尿病のコントロールがなかなか上手くいかない猫さんについては
この病気が隠れているかもしれませんので
一度IGF-1の測定をお勧めいたします。
それでは。