抗菌薬の使い方
昨日はちゃんと麻酔外科学会の講演を2つ聴きました。
今日もすでに2個聴いているからノルマは達成できそうな感じです。
今回の麻酔外科学会、麻酔・疼痛管理部門の
後半のテーマが
『救急・集中治療分野における感染性疾患に対する抗菌薬の使用』でありました。
その中で、実際に今東京の夜間救急の第一線で活躍されている先生の講演がありまして
その先生が一次診療の動物病院で働いていらっしゃった10年前ぐらいの状況を
5・7・5で表現されておりました。
面白かったのでいくつか共有しておきますと↓
『CKD 日々の皮下補に アンピシリン』
『膿皮症 培養せずに ラリキシン』
という感じです。
特に解説する必要もないのかもしれませんが
今だったら考えられないような動物医療が10年前は当たり前のように行われていたという事実を
(今も同じようにされている動物病院さんは少ないかもしれませんが)
知っていただきたい思いもあるので
書いていきます。
一つ目は
慢性腎臓病の内科管理=皮下点滴みたいな時代には
本当に毎日のように何頭もの腎臓病の犬猫さんに皮下点滴を実施する機会があったのですが
その際に、感染を恐れて予防的にアンピシリンという抗菌薬を投与する、という意味になります。
これはやってた(る)動物病院さんと、やってない病院さんと
院長先生の方針によるところが多いかもしれません。
今では基本的に推奨されていない、予防的な抗菌薬投与、というものの一つの例ですね。
二つ目も、10年前の動物病院だったらあるあるな気がしますが
膿皮症症状のわんちゃんには基本的に何の疑いもなく
セファレキシンという抗菌薬を3週間とかで処方してました。
これも現在は否定されていますね。
今では、皮膚科診療で抗菌薬が登場する機会はかなり限られていると思います。
皮膚の痒みを主訴に犬猫さんが動物病院を訪れて
抗菌薬をファーストチョイスで処方されたとしたら
その動物病院さんの皮膚科は10年前から時が止まっていると考えていただいて問題ない気がします。
他にも消化器疾患に対する抗菌薬使用を揶揄した感じのものや
2週間効くコンベニアという抗菌薬の話だったりもあったのですが
今回はこの二つにしておきますね。
動物医療における抗菌薬の使用に対する考え方は
この10年で大きく変わっているとは思います。
が、その変化した考え方がどの動物病院にも浸透していますか?って聞かれたら
そこはたぶんNOだと思います。
先日、セカンドオピニオンでいらっしゃった犬さんも
皮膚の症状に対して年単位で抗菌薬を処方されていた結果なのか
培養検査の結果が、ほぼすべての抗菌薬に対して耐性になっていました。
そうすると、その子が本当に抗菌薬が必要になった時にどうしようもなくなりますし
ご家族の間でも耐性菌の保有率は上がると思います。
そんな事態にならないようにするための
抗菌薬の適正使用なわけなのですが
去勢手術や避妊手術の術後に抗菌薬を処方している動物病院さんが多いこと一つを取っても
静岡市の動物医療において
抗菌薬が適正に使用される未来というのはかなり先の話か
永遠に来ないかのどちらかな気がしています。
難しい問題ですね。
昨日聞いた講演の話では
抗菌薬に耐性を持つ耐性菌というものは
抗菌薬の使用期間1日から発生するリスクがあるそうです。
短期間だから大丈夫っしょ、というわけではないということですね。
当院においても
抗菌薬の適正使用が完璧に行えているか?と問われれば
一部疑問符が付く部分もあったり
緊急時だから仕方がないと言い訳にしてしまっている部分もあったり
そこらへんが現状かと思います。
ただ、5年前とかと比較すると抗菌薬使用は激減しました。
毎日40件ぐらいの犬猫さんの診察がされている中で
おそらく1週間で抗菌薬を処方されている犬猫さんは片手で数えられるぐらいか
下手したら1週間全く誰もいないことも少なくない、ぐらいにはなっています。
そうやって日々の非感染症症例の診察から
抗菌薬の使用を適正化することによって
真の感染症症例の救命率向上に繋がるのかなって思っています。
純粋に、病院で働いてくれるスタッフやその家族、患者様やそのご家庭内の環境のためにも
耐性菌が増えないに越したことはないですしね。
長くなりましたが
今日はこのくらいにしておこうと思います。
それでは。