AIMタンパクについての新しい論文
今月出たものになりますかね。
猫さんの慢性腎臓病に関心のある方にとっては
待ちに待ったというものかもしれません。
AIMタンパクの臨床研究が論文として発表されました。

最近、chatGPTをパワーアップできるぜ、みたいなプロンプトを教えてもらったので
本当かどうかはわかりませんが
天才学者になりきってもらったAI様にまとめてもらいました↓
(*あくまで参考程度に留めておいてください)
ちょっと長いので、興味のない方は読み飛ばしてもらう方が良いかと思います。
1. この論文は何を主張しているか(結論の骨子)
- 猫はAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophages / CD5L)の“活性化不全”という遺伝的背景を持ち、それがCKDの進行・死亡に寄与している可能性があるという仮説に立つ。
- IRIS stage 3(Cre 2.9–5.0 mg/dL)の中でも、血清インドキシル硫酸(IS)≥5 µg/mLの個体(本論文の“stage 3b”)は予後が悪い。
- その“stage 3b”に対して、rAIM(組換えAIM)を2 mg/頭、2週間ごとに静注すると、
- 360日生存率が大幅に改善(対照20%に対し、mouse rAIM 83%、feline rAIM 80%)
- Cre/SDMA/ISの悪化を抑制
- 尿毒素系メタボロームの悪化を抑え、低下していたアミノ酸などの一部を“戻す方向”
- スフィンゴミエリン(抗炎症・抗線維化に関与し得る)の低下を回復方向に動かす
というデータを提示している。
2. 背景:AIMとは何で、なぜ猫CKDに効く理屈なのか
2.1 AIMの基本機能(論文の整理)
- AIMは血中に比較的高濃度で存在し、老廃物・DAMPs・細胞残骸などの“有機ゴミ”を貪食細胞に片付けさせる方向に働く。
- 通常はIgM(五量体)と結合していて機能が抑えられているが、病態時にIgMから解離し、ゴミに結合→貪食促進、というストーリー。
- 腎障害(AKIモデルなど)ではAIMが尿細管内デブリの除去・閉塞軽減・無菌性炎症軽減に寄与し、rAIM投与で修復が促進される、という既報を土台にしている。
2.2 猫の特殊性(この研究の“出発点”)
- 既報として著者らは、猫はAIMがIgMに“強く結合しすぎて”病態時に活性化(解離)しづらい遺伝的欠陥があると報告している(猫がCKDに弱い理由の一部という仮説)。
- よって、「外から機能するAIM(rAIM)を入れてやれば、腎臓内の有害廃棄物の片付けが進み、炎症・線維化のドライブが落ちて、進行が遅れるのでは?」という発想。
3. 研究デザインを“正確に”読む(ここが一番重要)
この論文は探索的・非ピボタル(non-pivotal)、つまり「可能性を示す」段階の臨床研究です。
ただし、読み方を間違えると過大評価も過小評価も起こるので、設計を丁寧に分解します。
3.1 スクリーニングと組み入れ
- 2019/12〜2024/6、13の民間病院に通院する猫を対象にスクリーニング。
- 216頭をスクリーニングし、条件で絞り込み。
3.2 主要な組み入れ基準
- CKDで、血清Cre 2.9–5.0 mg/dL(IRIS stage 3相当)。
3.3 除外基準(重要)
- IP > 6.8 mg/dL(予後悪化と関連があるため)
- IgE > 100 µg/mL(蛋白製剤でアナフィラキシー懸念)
- 腎死以外で死にそうな併存疾患
- 腎毒性薬剤投与中
※この除外基準は、「安全性」だけでなく、“腎臓以外で死ぬ”ノイズを減らす意味がある一方、実臨床の雑多なCKD症例への外挿性は落ちます。
3.4 “stage 3a / 3b”という独自分類
- IRIS stage 3を、ISで2分割している点がこの論文のキモ。
- IS < 5 µg/mL:stage 3a(軽めのstage 3という扱い)
- IS ≥ 5 µg/mL:stage 3b(stage 4に近い“危険なstage 3”という扱い)
3.5 割り付け方法(“ランダム化”ではない)
- stage 3bに該当した猫は、組み入れ順に「交互に」対照群 or 治療群へ割り付け。
- さらに、製剤の都合で
- 2021までの治療群:mouse rAIM
- 2022以降の治療群:feline rAIM
となっている(=時系列の影響が混ざる)。
これは統計的に見ると、RCTの強度ではない一方で、完全な恣意割り付けよりはマシ、という位置付けです。
4. “ISが予後予測に使える”パートを精読する
著者らはまず、IRIS stage 3の中で、3か月以内にCreがstage 4へ進行(または0.5 mg/dL以上上昇)するかをアウトカムとして、ROC解析を行っています。
4.1 ROC結果(Table 1)
- SDMA:AUC 0.778(p=0.007)
- IS:AUC 0.750(p=0.040)
- Cre:AUC 0.681(p=0.15)
- IP:AUC 0.593(p=0.47)
著者の解釈はこう:
- SDMAはAUCがやや高いが、最適カットオフが15 µg/dLで
- stage 3の一般的レンジより低く、stage 3内の層別には使いにくい。
- ISは最適カットオフが5.42 µg/mLで、stage 3の中で「危ない群」を切り出すのに実用的。
- 特異度 0.75(SDMAより高い)
- OR 24(CIが広いがインパクトは大きい)
ここで彼らは
測定誤差(CV)も考えて**“5 µg/mL”で区切る**という実務的な線引きを採用しています。
5. 主要アウトカム:生存(Kaplan–Meier)を丁寧に読む
5.1 追跡した群と頭数
- stage 3b
- 対照:15
- mouse rAIM:6
- feline rAIM:5
- stage 3a(観察コホート):9 AIM蛋白 論文
5.2 stage 3a vs 3b(まず自然経過の差)
- stage 3bはstage 3aより生存が明らかに悪い(Fig.3A)。
- stage 3bの中央値生存 167日(95%CI 116–213)。
5.3 stage 3bに対するrAIMの効果(ここが本題)
- 180日まで:治療群は100%生存、対照は46%(ログランクで有意/準有意の記載)。
- 360日:
- 対照:生存率0.20(95%CI 0–0.40)
- mouse rAIM:0.83(0.53–1.0)
- feline rAIM:0.80(0.44–1.0)
- p=0.012、0.022(Fig.3B)
5.4 AIM遺伝子型(3/3 vs 3/4 vs 4/4)で差は?
- 生存差は見かけ上なし(Fig.3C)。
- ただし、4/4-SRCRのstage 3bがほぼおらず、治療も試せていないため、結論は弱い。
6. “腎機能バイオマーカーが悪化しない”の中身(Fig.4)
採血タイミングが群で少し違う点に注意:
- 対照:day0とday70
- mouse rAIM:day0とday70(6回投与後2日)
- feline rAIM:day70–112(6〜9回投与の間)
結果として、
- 対照ではCre/SDMA/ISがday70で有意に上昇
- rAIM群ではその上昇が抑えられた(増悪を“止めた/鈍らせた”)
臨床的には「延命した」だけでなく、“尿毒症へ落ちていく勢い”自体が止まった可能性を示唆するパートです。
7. メタボロームと蛋白・脂質(“機序っぽい”が強みでも弱みでもある)
7.1 GC-MS(小分子:尿毒素・関連代謝物)
- stage 3b対照は、健康対照(Cre<1.6)より尿毒素系が上がっている。
- その上でday0→day70の変化を見ると、rAIM群では
- 上がるはずの“毒っぽいもの”が上がりにくい/下がるものがある
- CKDで下がっていたアミノ酸などが戻る傾向
という図(Fig.5A,B)。
ここは、「何がどれだけ臨床的意味を持つか」は別として
**“全体像として尿毒症メタボが改善方向”**という主張を支える材料。
7.2 LC-MS/MS(炎症関連蛋白)
- ここは重要な注意点:**個体ごとの測定ではなく“血清ミックス”**で比較している(Fig.5Cの説明)。
- SAAなど炎症蛋白が、rAIM群で低い、という絵を出すが、ミックスなので統計強度は限定的。
7.3 Lipidomics:スフィンゴミエリン
- CKD進行でスフィンゴミエリンが下がり、rAIMで回復(Fig.6)。
- 著者は「抗炎症・抗線維化に働き得る脂質環境の回復」というストーリーに繋げている。
- ここも、サンプル数が少ない(図注ではn=4やn=3の記載がある)ため、機序仮説として読むのが適切。
8. 安全性:アナフィラキシーは?抗体は?
- 除外基準としてIgE高値を外している上で、投与中に明らかなアナフィラキシーやアレルギー徴候は認めなかった。
- mouse rAIMでは抗マウスAIM抗体が形成され、とくに2頭で高値。
- ただし、その抗体がrAIMの機能(AGE-BSAへの結合)を中和するかをin vitroでみたところ、顕著な中和はなさそうと述べている。
- なお抗体ELISAは標準物質がなく未バリデーションという限界も自分で書いている。
9. 著者が自分で認めている限界(=ここがツッコミどころ)
論文のDiscussionは、わりと正直に弱点を書いています。要点は以下:
- 標準治療が統一されていない
- 腎臓食、抗蛋白尿、貧血管理などがバラバラ。
- 登録が4.5年にまたがる+交互割付+製剤が時期で分かれる
- 時系列の診療変化、オーナー意識、栄養管理の普及などが混入し得る。
- 血圧測定がない、尿検査/UPCが系統的に取れていない
- CKD予後因子の重要どころが欠ける。
- RD(腎臓食)の偏り
- 対照15中4がRD、治療11中7がRDという偏りがある、と明記。
- IS測定(HPLC)のバリデーションが十分ではない、と記載
- ただし「ISは小分子で種差がなく、HPLCなので妥当」と主張。
10. “天才学者モード”での批判的解釈(この論文の価値はどこか)
10.1 強いところ(この論文が刺さる理由)
- 生存アウトカムで差が大きい(20% vs 80%超)
→ 小規模でも統計が動くのは、効果が大きいか、バイアスが大きいかのどちらか。 - ISで“危ないstage 3”を切り出すという設計が巧い
→ IRIS stage 3のヘテロさ(臨床家が一番困るところ)に対して、実務的な層別化を提示している。 - 生存だけでなく、Cre/SDMA/ISの増悪抑制が一致しているのは整合性がある。
10.2 弱いところ(ここを鵜呑みにすると危ない)
- ランダム化・盲検化ではない
- 腎臓食など共介入の偏りが、延命に寄与した可能性は残る
- 追跡採血のタイミングが群でズレる(feline rAIM)
- “蛋白・脂質”の一部はミックスサンプルで、機序としては弱い
10.3 それでも「次の一手」を作る研究としては良い
- この段階の論文の価値は、「確定的治療」としてよりも、
- ISで切ると予後が綺麗に分かれそう
- その高IS群でAIM補充が効くかもしれない
という“臨床試験の設計図”を出した点。
11. 臨床への翻訳
11.1 まず“IS測定”の位置付け
- この論文では、IRIS stage 3相当の猫を
- IS < 5:360日生存が100%(n=9の観察コホート)
- IS ≥ 5:無治療だと中央値167日、360日生存20%
に分けられています。
→ 「stage 3だけど、いつ崩れるか」をISで見にいくという発想は、臨床的にはかなり実用的です(日本でのIS外注可否・費用・再現性は別問題として)。
11.2 rAIMは“現状そのまま導入”できる話か?
- 本論文のrAIMは研究用に製造・精製し、静注で複数回投与しています。
- 市販化・規制・安全性試験・コスト等が未確定な段階なので、現時点では一般臨床の標準治療として推奨できる種類のエビデンスではない(探索的、非ピボタル、小規模、非RCT)。
- ただし、「もしAIM系治療が臨床導入されるなら、誰に効くか?」の答えとして、**“IS高値のstage 3(=3b)”**を候補として提示しているのがこの論文の一番の“臨床的価値”です。
12. この論文を1行でまとめるなら
「IRIS stage 3の猫CKDをISで“危険群”に層別化し、その群にrAIM静注を反復すると、生存と尿毒症進行が大きく改善する可能性がある」
どうでしたでしょうか。
症例数が少なかったり
AIMタンパク以外の治療がバラバラだったり
CKDになった原因による分類などがされていなかったり
悪化した猫さんの原因の解析がなされていなかったり
評価の仕方自体は難しいのかなとは思いますが
慢性腎臓病のステージ3の猫さんを対象としていることや
インドキシル硫酸の数値の多寡でステージ3をさらに細分化していることなど
参考になる部分も結構あるように感じます。
インドキシル硫酸の測定に関しては
僕自身、患者様の多大なるご協力のもと
お一人の猫さんで経時的に測定させていただいておりますが
現在の日本では一次診療の動物病院でルーチンで測定するのは
なかなか難しいような気がしています。
このような報告が出てくれることで、動物のコマーシャルラボでも測定が可能になれば
もう少し犬猫さんでのデータも増えてくるかもしれませんね。
話が少し逸れましたが
この論文での
360日生存率が
AIM投与群と非投与群で
80% vs 20%という結果は
少々出来過ぎな気もしますが
本当に効果がありそうな感じであれば、上市後はすぐに導入してみたい薬剤になると思います。
薬剤の特性上、それなりに費用は高くなりそうな気はしますが
2週間に1回の静脈注射なら自宅での投与が必要ないですし
ある程度、許容できる治療選択になるのかもしれません。
勝手な個人的な考えとしては
慢性腎臓病の猫さんが急性増悪を起こす際に
AIMタンパクが体内に存在することで
腎機能の回復スピードが早まる可能性があるんじゃないかなと思っています。
いつ急性増悪が起こるかわからない状況の中で
2週間に一回AIMタンパクを投与し続けることによって
常にある程度のAIMタンパクが体内に存在し続けることとなり
結果的に急性増悪時の腎臓の回復を促すんじゃないか、とか
そういう風に捉えています。
考え方が間違っている部分もあるかもしれませんが
今回の報告でも、期待できる薬剤に思えるので
臨床の現場で使用できる日が待ち遠しいお薬ですね。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。
これは、昨年に治験が始まったAIM医学研究所の臨床研究ですよね!!!
うちにも腎臓病の猫がおりまして、治験に応募したかったのですが、対象外だったので断念しました。当初の予定では来春には実用化されるのではとあって、その日を心待ちにしてきました。希望がもてる経過報告を待っていたので、うれしいです。
ところで、AIM vet’s 腎臓サポートという、動物病院で買えるフードがありますが、あれは気やすめ程度には効果が期待できるものなのでしょうか。
お薬の実用化を待ちながら、今の段階で取り入れられるものは試してみたいと考えておりまして、先生のご意見がうかがえたらと思いました。
>メダカの学校様
コメントありがとうございます。
猫さんのご家族にとってはすごく嬉しいニュースですよね。
宮崎先生のXでも、今年の4月には薬剤の承認申請をする意向が書かれてありました。
そこからどのくらいの期間かかるかはわかりませんが、来年にはAIMタンパクを臨床現場で使用できるようになるかもしれませんね。
AIM vetsさんのフードについてですが、リン制限やタンパク質制限をするいわゆる腎臓病療法食の位置づけかと思いますので
FGF23の上昇を認める場合やタンパク尿を認める場合など、適応になる猫さんには使用しても良いのかなと思います。
商品内容を読ませていただく限り、AIMタンパクを摂取できるわけではないと思うので、いわゆる腎臓病療法食の一つと捉えていただいて良いのかなと考えています。
AIMタンパクを摂取できるわけではなかったんですね。
藁をも掴むような気持ちでいますと、良さそうに見えるものにすぐに飛びつきそうになる自分がいるので気をつけなければなぁとあらためて思いました。
お考えを聞かせいただき、どうもありがとうございました。