術後の急性腎障害予防としてのアミノ酸輸液
昨日、VESのFacebookで紹介されていた、こちらの文献

タイトルの通り
どのようにして術後の急性腎障害を防ぐことができるか?
がテーマになっている人医療のお話です。
項目が分かれており
その一つがアミノ酸輸液について。
アミノ酸は腎血流と糸球体濾過量(GFR)を増加させ
腎予備能を引き出すことが昔から知られているそう。
ここでいう腎予備能というのは
腎予備能=最大GFRー基礎GFRで表されるものだそうで
アミノ酸の負荷によってGFRがどれだけ増えるかが
腎臓の予備能力を反映するというコンセプトみたいです。
心臓外科領域の小規模試験では
アミノ酸の輸液により
GFR上昇、尿量増加、AKIのリスク低下が示唆されたようで
大規模RCTにおいても
10%アミノ酸輸液によりAKI発症が減ったと報告されているみたいです。
こういった報告から
アミノ酸輸液が術後のAKI発症を減少させる可能性が考えられるわけですが
この文献の著者たちは慎重な姿勢を示しており
AKIの原因は様々あるなかで、アミノ酸単独でどこまで守れるかはわかっていないことや
腎臓の障害マーカーが評価されていなかったり
長期的な結果がまだ評価されていないので、即導入とまではいかないかな、と。
AKIは確かに減ってはいるものの
腎臓のダメージそのものが軽くなったのか
単純にクレアチニンの上昇をマスクしたのかがまだわかっていない、ので
将来有望な治療方法だけど、標準治療に組み込むにはまだ時期尚早といった感じみたいです。
本当にアミノ酸輸液によって
術後のAKIの予防に少しでもつながるのであれば
ぜひ試してみたい方法ではありますが
実際には
犬猫さんにおけるアミノ酸輸液のデータがほとんどないので
導入は難しい気がしています。
ただ、人医療でのデータが増えて
標準治療の内容に変化がもたらされた時に
それをどう動物医療へと応用するかの議論もまた出てくるのだとは思います。
少しずつではありますが
医療面での新しいデータが出てくると、なんだかワクワクしますよね。
それでは。今日はこのへんで。