慢性腎臓病の猫さんにエルーラはどうなのか?
猫さん用のカプロモレリン製剤であるエルーラですが
食欲増進作用、体重増加作用、筋肉増加作用などを期待して
慢性腎臓病の猫さんに適応となっておりますが
実際のところどうなのか?という論文のご紹介です。

ランダム化されていたり、プラセボを設定していたりする前向きの研究なので
それなりにちゃんとしたデータに思えるもの。
n数は176頭なので、少し少ないかもですが
それなりには参考になるデータかと。
例の如く、チャッピーにまとめてもらいます。
(AIに依存してきた自分に最近はやや恐怖を覚えていますが、しょうがないですね。)
📘詳細要約:Capromorelin(エルーラ)による猫の不随意体重減少の管理
1. 研究概要
- デザイン:多施設・ランダム化・マスク化・プラセボ対照臨床試験
- 対象:慢性腎臓病(CKD)を持ち、過去3年間に 5%以上の不随意体重減少がある猫
- 症例数:176頭(Capromorelin 118頭 / プラセボ 58頭)
- 期間:55日間連日投与
- 投与量:Capromorelin 2mg/kg(0.1ml/kg)経口、1日1回
この試験は FDA-CVMとIACUC承認済みで
VICH GL9に基づく臨床試験として実施された信頼性の高い研究。
2. 主要評価項目:体重増加効果
📈55日間の体重変化(主要解析:Effectiveness Population)
- Capromorelin群:+5.18%
- プラセボ群:-1.65%
- 群間差(治療効果):+6.81%(P<0.0001)
➡ 平均+0.25kgの差に相当(Cap +0.18kg、Pla -0.07kg)
体重が治療開始前以上だった割合(成功判定)
- Capromorelin:83.1%
- プラセボ:41.5%(P=0.001)
→ 約2倍の成功率。
体重増加の速度
- 15日時点ですでに +3.2%の増加(有意)
- 27日で +4.7%
- 55日で +6.8%
→ エルーラは投与早期から効果が現れ、55日間継続して増加。
3. 安全性(副作用)
総合的な副作用頻度
- Cap:81.4%
- Placebo:70.7%
→ 高齢CKD主体のため、基礎疾患由来の副作用多数。治療群で有意差があったのは 唾液過多のみ。
⚠ 唾液過多(Hypersalivation)
- Capromorelin:21.2%
- プラセボ:0%
- 特徴:
- 投与後数分以内に短時間で発生
- 苦味と薬理作用(唾液腺のGhrelin受容体)が関与
- 体重増加には悪影響なし(平均+6.1%増加)
➡ 唯一明確に薬剤性といえる副作用。
その他の主な副作用(治療群>プラセボだが有意差なし)
- 嘔吐(32% vs 24%)
- 食欲不振(21% vs 14%)
- 貧血(21% vs 10%)→CKD背景と一致
- 低活力(14% vs 10%)
- CKDのステージ進行(6.8% vs 3.5%)
➡ 背景の健康状態がCap群の方が悪かったことが影響している可能性が高い。
臨床病理学的影響
- 統計的に高い値
- 血中Ca(Cap群>Pla群)
- しかし臨床的な高Ca症候群の増加は確認されず
- 血中Ca(Cap群>Pla群)
- 低下
- Hb(投与15日と55日)
- CKD背景因子が主因と推定
- Hb(投与15日と55日)
➡ 臨床的に重大な薬剤性毒性は示されていない。
4. 研究対象猫の特徴(一般化可能性の判断に重要)
CKDステージ
- IRIS Stage 1:10%
- Stage 2:67%
- Stage 3:22%
- Stage 4:1%
➡ ステージ2〜3が主な対象。
平均年齢:15.1歳 → 高齢CKDの標準的な構成
その他の併存疾患(多い順)
- 歯科疾患:43%
- 筋肉量減少:45%
- 心雑音:30%
- 嘔吐・消化器病:24%
- 甲状腺機能亢進症:15%
- 高血圧:11%
➡ 多くの猫が複数の併存疾患を抱えていた。
臨床現場での適応範囲とほぼ同じ構成。
5. 考察:臨床での利用ポイント
① CKD猫の体重減少は予後不良の重要因子
- CKD猫は体重が診断3年前から低下し始めることがある(Freeman 2016)
- 体重・除脂肪量低下は生存期間短縮と関連
➡ 体重維持・増加そのものが治療目標。
② Capromorelinは食欲刺激だけでなく“同化作用”も持つ
- GH/IGF-1経路サポート
- 直接的に筋細胞に作用し筋量維持に寄与
- ヒトや犬でLBM維持効果が報告
→ 猫でも同様の可能性が高い
③ 副作用の大部分はCKDの自然経過で説明可能
- 唯一明確なのは唾液過多
- 嘔吐・貧血・活力低下はCKD/高齢猫では頻発
- Cap群は基礎疾患が多く、重症度のバイアスがある
④ 用量一定で体重が増加しても減量調整の必要なし
→ 「体重が増えると投与量が増える」という問題は本試験では考慮されていない。
6. 臨床的結論(まとめ)
✔ 体重が減っているCKD猫に対して、Capromorelinは有効である。
- 55日で平均5.2%増加
- 8割以上が体重維持または増加
✔ 唯一顕著な副作用は唾液過多。
- 2割の猫で発生、短時間で自然に消失
- 効果への悪影響はなし
✔ CKDの併存疾患を持つ高齢猫においても安全性は許容範囲。
✔ 食事量の増加+同化作用により、除脂肪量維持が期待される。
7. 臨床での活用のポイント
- Stage 2〜3 CKDで痩せが進む猫の“標準治療の追加剤”として有力
- 歯科疾患・胃腸症状・高齢猫など多数併存でも使用可能
- 唾液過多に備えて飼い主へ事前説明が重要
- 投与後15分〜30分で食事を提供すると摂食促進に有利
- 高Caや貧血がある場合はモニター推奨
発売当初から言われておりました通り
投薬後の一時的な流涎ha
約20%の症例で起こるみたいなので、ここは仕方ないのかもしれません。
およそ二ヶ月間の観察期間ではありますが
重篤な副作用もなさそうですし
体重の増加も認められています。
上記にもあるように
慢性腎臓病の猫さんにおいて
体重を維持する、場合によっては増加させるということは
非常に重要なポイントの一つになりますので
そこを補助してくれるという意味では良いお薬だと思われます。
個人的には
同じ食欲増進作用を目的として使用されるミルタザピン製剤である
ミラタズ軟膏が
特に状態の悪い子や、投薬が難しい子には非常に重宝するように感じますが
エルーラはどちらかというと
食欲はまだあるけど、最近少し落ちてきたかな・・・
ぐらいのタイミングで投与開始し
そこから継続することで、食欲の維持や体重増加につながる薬剤なのかなという印象です。
すごく良いお薬だとは思いますので
これらを上手く組み合わせることによって
慢性腎臓病の猫さんたちのQOLをより高く維持したいなと思います。
それでは、今日はこのへんで。