SGLT2阻害薬の慢性腎臓病への使用
書いていた通り
昨日の午前中は日本腎臓学会の先生方のご講演でした。
忘れないうちに書き留めとこうかなと思います。
今から書くのは
慢性腎臓病に対するSGLT2阻害薬の腎保護効果についての機序であったり
データだったりを三名の先生の話を聞いた
僕の感想なので、その点だけご注意ください。
犬猫さんのCKDに今すぐSGLT2阻害薬を使いましょう!とかではないので
そこだけ解釈にご注意を。
あくまで僕の感想と解釈です。
『SGLT2阻害薬はCKD 治療におけるパラダイムシフトをもたらした』
とお一人の先生の抄録には書かれてありました。
そもそもは糖尿病患者さんに対する糖尿病治療薬であったわけですが
のちに、心血管イベントの抑制効果があることがわかったり
腎臓関連のイベントの抑制効果、腎保護効果があることが明らかになりました。
もともとは糖尿病の治療薬だったため
人間には多い糖尿病性腎症の治療の際に腎保護効果を認めたわけですが
糖尿病がない非糖尿病の患者さんであったり
タンパク尿を認めないCKD患者さんにもその適応が広がり
今ではCKDだけではなく
急性腎障害や腎結石なんかにも有効性が示唆されているそうです。
この腎保護効果を説明するには一つの機序だけでは説明しきれないみたいで
今回の講演では
糸球体過剰濾過改善効果、オートファジーの改善、ケトン体上昇をテーマに
それぞれが腎保護効果を示すメカニズムを解説してもらいましたが
ここでそこを細かく書いたところで
僕自身も全部を完璧に理解できているわけではないですし
たぶん需要もないと思うので割愛します。すみません。
人間の方は
eGFRの低下傾向を認めた患者さんには
タンパク尿などがなくても投与を検討するみたいな話で
今までになかった慢性腎臓病の治療薬、というような印象をもったわけなんですけど
じゃあ、これをいざ犬猫さんに応用できるかどうか、ってところが気になりますよね。
SGLT2阻害薬を慢性腎臓病の患者さんに使用する際
通常、投与直後にinitial dipと呼ばれる
見かけ上の腎機能低下を認めます。
そもそも過剰に拡張していた輸入細動脈が収縮する(過拡張を是正する)ことで
糸球体への血流量が落ちるため、eGFRが落ちたように見えるといった感じです。
これは動物でも起こると思われるので
おそらく投与直後にクレアチニン始め、腎数値が上がる可能性があるのかなと思います。
あとは、ナトリウム利尿がかかるので脱水には注意したいところですね。
特に、動物の場合、慢性腎臓病の患者さんは基本的に尿量が増えているはずなので
そこに利尿をかけるとなると、今まで以上に脱水には注意しながら投与をしないといけません。
また、実際の投与量とか投与方法とかのデータはまだわからない部分がほとんどなので
実際に臨床応用していくのは
今後の報告待ちという感じでしょうか。
でも、講演の合間に調べてみたら
こういう論文も出てるんですよね↓
Sodium-glucose co-transporter 2 inhibitors: Prospects for canine myxomatous mitral valve disease and finding the “right drug” and the “right dose” for dogs
Mutsuki Umezawa 1, Yoko Fujii 1, Kensuke Orito 2, Ryo Yoshimoto 3
J Vet Med Sci. 2025 Jun 1;87(6):647-666. doi: 10.1292/jvms.25-0040. Epub 2025 Apr 16.
しかも日本から発表されているみたいで
こういうデータがもっと増えていけば
犬猫さんの慢性腎臓病の進行抑制目的でSGLT2阻害薬が処方される未来は
そう遠くないのかもしれません。
個人的には
一番最初に使用する子は
テルミサルタンとかでコントロールが難しい蛋白漏出性腎症の子、とかなのかなあ
って考えてます。
人間の慢性腎臓病の治療に大きな変革を与えたように
動物医療における慢性腎臓病治療に対しても大きな変化をもたらすのかもしれません。
そろそろ休憩時間が終わります。
今から症例発表の時間です。
面白そうな話があれば、またここで共有したいと思います。
それでは。