全身麻酔のご相談(心臓が悪いと言われた猫さん) case1
症例情報
12歳4ヶ月 避妊メス ノルウェージャン・フォレストキャット
当院受診前の経過
心臓肥大で以前より他院にて内服を服用中。
(ACE阻害薬とピモベンダンの合剤であるフォルテコールプラス錠と
血栓予防としてクロピドグレル錠剤)
2、3日前から口の中が痛そうで、今朝から食べることが難しくなった。
かかりつけ医には心臓が悪いので、全身麻酔は難しいと言われているため
ご相談のために、みなとまちアニマルクリニックを受診。
当院における診断
身体検査より、歯周病による疼痛により食欲不振になっている可能性が高いと判断。
治療には全身麻酔下での抜歯手術が必要。
心臓超音波検査より
左心室内の過剰調節帯による左室流出路の軽度の狭窄は認めるものの
血液循環に大きな問題はなく、左心房の大きさ、圧なども問題ないと判断した。
↑当院初診時の心臓の超音波検査画像の一部。
左心室内に過剰調節帯と思われる構造物があるものの
心臓内腔の拡大などもなく、心機能も問題ないものと判断した。
当院での治療・処方内容
心臓超音波検査上、全身麻酔は問題なく実施できるものとし
後日、全身麻酔下での抜歯の手術を行うこととした。
手術当日まで血栓予防目的のクロピドグレルの投薬の中止を指示。
手術当日、術前の血液検査、胸部レントゲン検査の結果も問題なく
再度の心臓超音波検査においても全身麻酔のリスクとなるような
明らかな異常を認めなかったため、手術を実施した。
その後の経過
手術後は、その日の夜からドライフードを食べられるようになり
術後1週間後の再診の時点において
口腔内の炎症は消失しており、食欲も回復し、体重も増加した。
その後は、デンタルケアのみ継続していただくこととした。
結語
心臓病・腎臓病・高齢などを理由に
全身麻酔を断れてしまうケースは非常に多いです。
その中には、確かにかなりリスクの高い症例も少数含まれますが
多くの場合、今回のように問題なく全身麻酔下での手術を実施できております。
『持病があるから』『高齢だから』という理由だけで全身麻酔を諦めないでください。
犬猫さんの全身麻酔に関して、お悩みの方・不安のある方など
一度ご相談に来ていただければと思います。