諦めないことが齎すもの
9月にある平日に急に立ち上がることができなくなったわんちゃんがおりました。
病院に来た時には完全にショック状態だったので
すぐに預かって血管確保しながらエコーでチェックしました。
結果、心臓に腫瘍が存在して
それが破裂したことで心タンポナーデという状態に陥っていたことがわかりました。
なので、すぐに胸に針を刺して、溜まっている血液を抜きました。
抜いた後がこんな感じでした。
丸で囲んだところが腫瘍なので
結構大きい腫瘍であることがわかると思います。
心臓の右心房という場所に発生していることから
血管肉腫という種類の悪性腫瘍の可能性が高いと考えられます。
血管肉腫はわんちゃんの脾臓にできることはご存知の方も多いかもしれませんが
心臓腫瘍の中でもそれなりの発生率を占めるので
犬さんの突然死の中にはこういう症例も含まれているんじゃないかなと思います。
脾臓の血管肉腫同様
心臓にできる血管肉腫の予後も良くはありません。
脾臓の場合、外科手術のみだと生存期間中央値が19-86日
術後の化学療法を組み合わせても141-179日です。
外科手術だけだと1〜3ヶ月、化学療法を組み合わせても5〜6ヶ月という
予後の良くない悪性腫瘍です。
心臓にできる血管肉腫の予後も脾臓と変わりないとされております。
今回のわんちゃんも
最初に心膜穿刺をして液体を抜いてから最初の一ヶ月ぐらいは
再度破裂することもなく、元気に過ごせましたが
一ヶ月を過ぎた頃に再度破裂し
そこからは三日に一回ぐらいの頻度で倒れてしまうような状態になりました。
当院での診察が難しいときは
静岡市夜間さんで対応していただいたり、他の病院さんで対応していただいたり
とにかく連日のように大変な感じだったと思います。
で、ご家族様と相談の末、抗がん剤を試してみることになりました。
固形ガンに対する化学療法なので、劇的な効果は望めないけど
出血の頻度は減らせるかもしれないということで始めてみた感じです。
それが3週間前の出来事で
抗がん剤を投与したその日は元気に帰宅してくれたのですが
翌日にまた破裂して別の病院さんを駆け込まないといけない事態になったと聞いた時は
『あんまり効果ないのかな?』となったのですが
11月8日を最後に、あれだけの頻度で出血していた腫瘍が出血しなくなりました。
本人も今元気そうで食欲もバッチリあるそうです。
で、今週2回目の抗がん剤投与を予定している、そんな感じです。
これからも厳しい戦いが待っているのだとは思いますが
諦めずに治療にチャレンジすることが
一時的な平穏をもたらしてくれることもあるんだということを教えてくれました。
諦めない動物医療をこれからも続けたいと思います。
それでは今日はこの辺で失礼致します。
病院で、2度見かけて、とても笑顔が可愛い子だなって思ってました。こんな大変な事を乗り越えたんですね。元気に過ごせて食欲もあって良かったです!! 私達家族も諦めない医療が平穏な時間を貰いました。
応援してます!!
>ヒルクライム様
いつもありがとうございます。
身体の中にそんなに悪いもの抱えているとは思えないくらい愛嬌たっぷりの可愛い子なんです。
いつも尻尾を振ってくれています。
できるだけ元気な時間を一日でも長くできるよう頑張りたいと思います!
みなとまちアニマルクリニックが かかりつけ病院になり御世話になるようになってから日々感じているのは チーム感、ファミリー感です。 心が難しい病気と闘う日々 それがより一層強くなりました。ウチの子達も、みなとまちアニマルクリニックファミリーの犬さん、猫さん全ての可愛い大切な家族である子達の命や幸せを願い守っていきたいと思います。 先生方、スタッフの皆さんの御力を頂きながら飼い主である私達とで、大切な家族を守り支えたいです。 こころから応援しています。
>スコティッシュ心様
いつもありがとうございます。
そうやって言っていただけると、スタッフ一同励みになりますし
頑張って治療をしてくれている犬猫さんやご家族の力にもなると思います。
皆様でお互いがお互いを応援し励まし合うことができるような
そんな動物病院にできるよう頑張りたいと思います。