モノの価値とヒトの価値
今日の昼
動物病院に内服薬を取りに来るのが難しい飼い主様向けの
薬の配送サービスの説明を受けていました。
確かに一部の需要はあるかもしれないってことで
希望があれば、当院でも当院の患者様に限りご利用いただくことができるようになるので
もし、興味ある方はお声がけください。
話はその本筋からは逸れて
その担当の方と、薬の処方料の話になりました。
薬の値段って動物病院毎に色々と比較されることが多いように思います。
こっちの病院はフィラリア薬が○○円だった、とか
同じ甲状腺の薬をもらったのに、こっちは○○円もしてすごく高かった、とか。
そういう話をよく耳にします。
人間の薬だと、薬価を調べることができるので
薬の値段って誰でもわかるんですよね。
動物用医薬品に至っては、ネットで販売されているものまであったりして
何だかなあと思うわけです。
では、わかりやすい例で言うところの
いわゆるステロイド剤であるプレドニゾロン
これの薬価は調べていただくとわかると思いますが
5mg錠の薬価は一錠あたり9.8円です。
この薬を一錠あたり50円や100円で処方する動物病院は
ぼったくりなんでしょうか。
皆様どう思いますか?
いやいや儲けすぎでしょ、って思う方にとっては
うちの動物病院もぼったくりな病院という扱いになるのかもしれません。
ですが、病院から処方される薬の値段って
ただ単に薬を仕入れることにかかる費用だけで良いのか?って話だと思うんですね。
動物病院が薬剤を製薬会社から仕入れてから
患者様の手に薬が渡るまで
その間には結構な工程があります。
実際に、○○という症状で動物病院を訪れた患者様より話を聞いて
身体検査や必要な検査を実施し
その検査結果を元に、鑑別疾患を列挙し
最善の選択はどういう形だろうか?という思考を巡らせ
対象となる動物の品種・年齢・体重や体質などより
適切な薬剤を選択し、適当な用量と用法を決定します。
その決定に従い、場合によっては薬剤を調剤し、処方され
最終的に患者様の手に渡ります。
お気づきかもしれませんが
この間の工程の中で、検査を除いたほとんどの工程には
人件費以外のお金はかからないわけなんですね。
細かく言えば
診察台を消毒する消毒薬の費用や薬を文法する分包紙代とか
その他も色々とかかるかもしれませんが、そんなの微々たるものかと思います。
さっきのプレドニゾロンを1錠100円で処方した場合の
100円−9.8円=90.2円は
ヒトが生み出す価値だと思うんですね。
そこには獣医師の身体検査の技術であったり
経験に基づいた薬剤の選択や用量の調整であったり
はたまた、その薬を飲んで動物の調子が悪くなった時の責任料でもあったり
そういうものの価値だと思うんです。
そういう目に見えて推し量ることのできないものにこそ価値があると思うのですが
なかなか今の日本だとモノ自体の価値にしか目を向けられず
誰がどのようにそれを作り上げた、とか
そういうことにはあまり目を向けられません。
難しい世の中ですよね。
不必要な薬を出さない病院よりも
無駄な薬を出し続ける病院の方が儲かるような仕組みになってしまっているのは
そういった物事への価値観のせいなのかもしれないですね。
当院の
抗菌薬を必要な時にしか処方しない、だとか
薬を処方しないために検査をするんだ、とか
徹底的に痛みを少なくするための麻酔管理とかは
多数派の賛同を得難いものに価値を求めている行為なのかもしれないですよね。
まあ、でも、そういうのを求めている人に提供できたらそれで良しとすべきなんですかね。
ムズイっす。はい。
うちの病院って高いんですかね。安いんですかね。
実際のところ皆様どう思われているんでしょうか。
最近よくわからなくなってきてまして
もしどなたかご意見いただけそうであれば教えて下さい。
それでは、今日はこれくらいで失礼します。
物の価格は原価のみならず人件費、販管費に加え利益もオンされるので同じ物でも販売者により異なる価格が付く事は普通にあり得えますし、需給関係の影響もあるでしょう。購入者の所得によっても価格から受ける印象は違うと思います。またボランティア価格を設定すると動物愛護(保護)団体から価格面で良心的な病院と見られる様に思います。病院経営上、どこにキャッシュポイントを置くかという点に関わると考えます。