動物用利尿薬が新発売されるそうです
本日情報が公開されたそうですが
7月に、動物用ループ利尿薬が新発売されるそうです。

ループ利尿薬の中で動物に使用されることが多いのが
フロセミドというお薬とトラセミドというお薬です。
心臓病以外にも使用する場面はありますが
使用場面として多いのは循環器疾患、特に犬さん・猫さんのうっ血性心不全になります。
犬さんなら僧帽弁閉鎖不全症、猫さんなら心筋症から
それぞれ肺水腫になったり、胸水が貯留したりするわけですが
利尿をかけることで、尿として水分を体から出してあげることで
血液の量自体を減らしてあげて、心臓がパンパンになるのを防ぐみたいなイメージの薬です。
昔はフロセミドが多く使用されていた印象で
今でももしかしたら半分以上の動物病院さんはフロセミドがメインかもしれません。
緊急時に使用できる注射薬のループ利尿薬はフロセミドしかないので
当院でもフロセミドを注射で使用する場面は結構多いです。
それとは別に、飲み薬として処方する場合
今では多くの犬さん・猫さんにトラセミドの方を使用しています。
フロセミドを処方している子は、本当に微調整が必要な時ぐらいしか今は使用しなくなりました。
なぜかと言うと
トラセミドの方が作用時間が長かったり、生体内利用率が高かったりで
確実に利尿効果を発揮してくれるんですね。
なので、基本的には心臓疾患の利尿剤については
トラセミドを主軸に置くようになりました。
ただ、個人的にはすごく注意して使用しないといけない薬剤だと考えています。
利尿効果が高いということは
使用方法を間違えれば、身体は脱水になっていってしまうということです。
ここらへんは物凄く細かな微調整が必要な薬かなと思います。
なので、今回発売が予定されている薬剤は
用量がすごく小さなものですし、分割しやすそうな感じなので
そこは良さそうな気がします。
今現在使用しているものは人間用の薬剤なので
小さい剤形でも4mgという用量になります。
それを1/8とか1/16とかに切って調整しているわけなので
最初から0.75mgというのはとてもありがたいですね。
いや、そんな話しされても知らんしってなりますよね。
確かにそうです。あんまり患者様には関係のないことかもしれません。
ただ、この薬剤が発売された際に
今までトラセミドの使用経験がない先生が安易に動物用だからといって
能書通りに使用を開始した際に
利尿がかかりすぎて
腎数値が上がりすぎて体調を崩す子が続出するんじゃないかと、ちょっと不安に思っています。
何を隠そう、自分自身が初めてトラセミドを使用したのが8年前とかになりますが
その時の拘束型心筋症の猫さんは
胸水は溜まらなくなりましたが、腎数値が大幅に上昇してしまいました。
個人的には苦い経験です。
今でこそ、ある程度の経験数があるため
どのくらいの量と頻度で飲むとどのくらいの効果が見込めるかがわかるようにはなりましたが
初めて使用するのはやや怖い薬剤かと思います。
なぜこういう話しをブログにわざわざ書いたかというと
今現在、循環器疾患の治療中の方で
7月以降にこの薬が内服の中に登場した際には少し注意していただく方が良いと思ったからです。
適切に利尿がかかっている状態ならすごく良いお薬だとは思いますが
脱水にはくれぐれもご注意ください。
およそフロセミドの10倍から20倍の利尿効果とされておりますので
参考にしていただければと思います。
というわけで、本日は新しいお薬の紹介でした。
当院は、循環器疾患の診断・治療にも力を入れて取り組んでおります。
特に、わんちゃんの僧帽弁閉鎖不全症や猫さんの心筋症の内科治療には自信があります。
ご気軽に相談ください。
それでは、今日はこれくらいで失礼いたします。