犬さんのぶどう中毒とクリームタータ
先日配信がスタートしました獣医内科学アカデミーから
ちょこちょこと情報を小出しにして書いていこうかと思います。
ということで、今日は犬さんのぶどう・レーズン中毒についてです。
このぶどう中毒。
基本的にわんちゃんに特有の中毒とされておりますが
中毒成分は謎のままでした。
で、2021年の報告の中で、これが原因じゃないか?みたいなのが出てきました。
以前からも疑いはかけられていたのですが
今回の報告で、『酒石酸』が犯人じゃないか?という疑いが強まっています。
酒石酸って何?という方は
こちらのwikipediaさんへどうぞ。
ぶどうとかワインに含まれる有機化合物だそうです。
で、おかし作りが趣味の方はご存知かもしれないんですが
メレンゲの泡の保ちを良くするための食品添加物として
クリームタータという商品があるそうです。(僕は知らなかったんですが)
そのクリームタータの成分名が酒石酸水素カリウムだそうで
このクリームタータを摂取した犬さんで
重度の急性腎障害や嘔吐などの症状を示し
病理解剖の結果、腎臓の組織所見がぶどう中毒と類似していたそうなんですね。
なので、ぶどう中毒の原因もこの酒石酸じゃないかとなったみたいです。
ぶどう・レーズン中毒というと
どうしても急性腎障害!って感じで腎臓にダメージがと考えがちなのでありますが
2020年の報告では、最も多かった症状は神経症状だったそうです。
前脳・小脳・前庭症状とバラエティに富む神経症状が腎障害や高血圧とは関連なく
起こったそうなので、やっぱり神経症状が多いみたいです。
腎障害の発生率は2017年の報告では6.7%と低めではありますが
これは輸液療法などの初手が良かったからかもしれないと考察されておりました。
あとは、嘔吐も頻発するみたいです(81〜100%)。
報告上の中毒用量は
ぶどうが20〜150g/kg
レーズンが2.8〜37g/kg
クリームタータが0.5g/kg となっています。
濃縮されればされるほど少量で中毒を引き起こすので
クリームタータは結構怖いですね。
おかし作りやパン作りに使用することのあるご家庭は注意が必要かもしれません。
ちなみにぶどう・レーズン中毒により
急性腎障害を引き起こした犬さんの予後についてですが
報告によって多少の差はありますが
生存率が53〜87.5%
症例によって、命は無事だったものの慢性腎臓病へ移行することもあったみたいです。
やはり犬さんのぶどう中毒は恐ろしいですね。
中毒というものは当たり前かもしれませんが
症状が急に現れることが多いです。
元気だった子がある日突然命の危険に陥ることも珍しくありません。
ご家族が情報を得ることで防ぐことのできるものも多いです。
誤食グセのある子はとくに注意が必要です。
皆様、お気をつけください。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。