みなとまちアニマルクリニック(清水区動物医療センター)は、心臓病・腎臓病・麻酔に力を入れている動物病院です。

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血液検査の読み方

先日のブログで少し触れていた

血液検査の解釈の仕方についてでも今日は書いてみようかと思います。

もしお時間があればお付き合いください。

春のフィラリア検査の時期に一人のわんちゃんが動物病院を訪れたとします。

その時にフィラリア検査と一緒に全身の血液検査も実施しました。

健康診断みたいな感じですね。

実施されている方も多いかと思います。

その結果、腎臓の機能の指標の一つであるCre(クレアチニン)の数値が

1.2mg/dl(参考基準値が0.4〜1.4mg/dlとします)でした。

この子のこの数値は正常でしょうか?異常でしょうか?

皆様はどうお考えになられますか?

答えは

『これだけじゃわからない』ですね。おそらく。

いや、クイズみたいに出しておいてわからないはないんじゃない?ってなりますよね。すみません。

でも、ここにある情報だけだとおそらくこの数値が正常か異常かはわからないというのが正解だと思います。

逆にこれだけで、『基準値内だから大丈夫です。安心ですね。』は間違いだと思います。

血液検査のデータというのは一時点で判断できるものとそうでないものがあります。

また、色々な影響により増減する項目もあります。

今回例に挙げたクレアチニンなんかは、そういった色々な情報を加味して評価しないといけない検査項目です。

例えば、さっき挙げたクレアチニン1.2mg/dl。

この数値を示したわんちゃんが、12歳で体重が1.8kgのチワワさんだったとします。

そういう情報があったとすれば、僕は腎機能低下の可能性を考慮して

期間を空けての再検査やSDMAのチェック、尿検査の実施を強く勧めると思います。

もちろん何もないかもしれませんが、ここで手遅れになってしまっては健康診断の意味がないからです。

じゃあ、同じ数値だったとして

5歳のラブラドールさんだったらどうでしょう?

他の数値も合わせて考えないといけないかもしれませんが

おそらく問題ないと判断すると思います。

また来年健康診断目的での血液検査をしましょうね、で終わる確率が高いケースかと思われます。

同じクレアチニン1.2mg/dlなのに、何で対応が違うんでしょう?

クレアチニンという物質は元々が筋肉を動かす時に必要なエネルギーを使った後に出てくる代謝産物です。

簡単に言うと、筋肉量が多い子の方が数値は高くなります。

マッチョな子の1.2と痩せている子の1.2の解釈は大きく異なります。

また、時間の経過というものも検査を解釈する上では非常に大事な要素でありまして

一昨年、去年、今年とすべてが1.2→1.2→1.2と推移している子と

0.6→0.9→1.2と推移している子では解釈の仕方が異なります。

後者の症例に関しては、腎臓の機能が年々落ちている可能性を考慮にれなくてはなりません。

もちろん年々体重が増えてきているパターンとかも考えつつです。

あとは、ステロイドを普段から服用している子であったり

もともとクッシング症候群を持病に抱えていたりして

筋肉が萎縮してしまうような状況にある子のクレアチニンの評価も難しくなります。

クッシング症候群の子の腎臓の機能評価はクレアチニンではやらない方がよいとおっしゃる内分泌の先生もおられます。

こういった基礎疾患やその子の置かれる状況も考慮に入れなければなりません。

こういった検査の解釈の方法というのは

何もクレアチニンに限ったことではありませんし

もちろん血液検査に限るものでもありません。

レントゲン検査、超音波検査、尿検査、血圧測定など

あらゆる検査に言えることかと思います。

検査結果が基準値内かどうかだけを判断するのであれば、機械がやってくれることも多いです。

でも、それだけだとあんまり上手くいかないのが医療なんだと思いますし

その子の身体の状態や生活環境・ご家族の情報なんかも考慮に入れて

検査を解釈できるのはやっぱり人間なんじゃないかなと思います。

そういう解釈の仕方の違いが獣医師の腕の見せ所みたいな部分もありますしね。

10人の獣医師がいて、同じ結果を見たとしても10人とも同じような説明になることはきっとないと思います。

ご家族にはわかりにくい部分ですが、そういうところが病院間での差なのでしょう。

これから春に向けて

血液検査を含めた健康診断が頻繁に行われるシーズンになるかと思います。

動物病院で健康診断をお考えの方は

そういった視点で検査結果を見てみても面白いかもしれません。

今日はこのへんで失礼いたします。

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